このページはJavaScriptを使用しています。JavaScriptを有効にして、対応ブラウザでご覧下さい。

残存価額とは? 税制改正以前・以後での求め方をわかりやすく解説

監修者: 公認会計士 / SAP-FI認定コンサルタント / 基本情報技術者  赤羽 応介

残存価額とは? 税制改正以前・以後での求め方をわかりやすく解説

残存価額は、「法定上の耐用年数を過ぎた固定資産の価値」を表す会計用語です。

平成19年度の税制改正によって、名称が「残存簿価」となり、計算方法も変わりました。

この記事では、残存価額の意味や制度が廃止された背景、税制改正前後での求め方をわかりやすく解説します。

ルールを把握して、正しく経費処理できるようになりましょう。


残存価額とは

まずは、残存価額の意味を確認しましょう。

経理業務では、減価償却についても正しく理解しておくことが重要です。

減価償却における意味

残存価額とは、「法定耐用年数」が過ぎたあとに残る資産が持つ価値のことです。

建物や機械・設備、業務用のパソコンなどは、時間が経つにつれて摩耗や劣化などによって価値が減少していきます。このような特徴を持つ固定資産は、「減価償却」と呼ばれる方法で経費処理します。

減価償却で重要になるのが、「法定耐用年数」という考え方です。

減価償却の対象となる資産の場合、購入にかかった費用は、購入した期にすべて計上するのではなく、法定耐用年数と呼ばれる資産の性質に応じた使用可能期間内に、少しずつ計上していきます。

法定耐用年数は、実際に使用が可能な期間とは異なり、減価償却資産を経費処理するうえで用いる会計上の期間です。

そのため、法定耐用年数を過ぎても、建物や機械などの資産は実物として、まだ存在することになります。

建物は、リフォームによって再び使えるようになる可能性があり、機械などもメンテナンスが可能であることから、実際の価値がゼロになったわけではありません。

このような事情を加味し、帳簿上でも資産の価値が残るようにするために「残存価額」まで減価償却を行うこととされています。

税制改正による廃止と残存簿価

建物や機械などの有形固定資産の場合、平成19年度の税制改正以前は、購入価格の10%が残存価格と定められていました。

しかし、税制改正によって残存価額は廃止されています。

代わりに用いられるようになったのが、「残存簿価」という概念です。

税制改正後は、法定耐用年数を過ぎた有形減価償却資産には、実質的な価値がなくなったとみなし、残存簿価として1円だけ記録するというルールに変更されました。

1円を残すことには、資産が実在することを示す備忘としての役割があるのです。

残存価額の廃止の背景には、ほかの先進国との会計ルールの違いがあります。

多くの先進国では、耐用年数の期間内に100%の減価償却が認められていますが、日本では90%までしか減価償却が認められず、税務上のデメリットとなることから、設備投資の足かせになるのです。

このことが、企業の国際競争力を低下させる一因になっているという意見があり、減価償却制度の見直しにつながりました。


【計算方法】残存価額・残存簿価の求め方

ここでは、残存価額・残存簿価の求め方を解説します。

なお、すべての例において、取引の前提は次の通りとします。

<取引の前提>
取得原価:1,000万円
耐用年数:10年
減価償却方法:定額法
償却率:0.100


旧定額法の場合①:耐用年数まで(1年目~10年目)

残存価額10%を加味するため、取得原価1,000万円の90%に償却率を乗じます。

借方

貸方

減価償却費 900,000円

減価償却累計額 900,000円

※1,000万 × 0.9 × 0.100 = 900,000

旧定額法の場合②:耐用年数以降(11年目)

耐用年数経過後は、取得原価 × 95%まで償却を行います。

借方

貸方

減価償却費 50,000円

減価償却累計額 50,000円

※1,000,000円 - 900,000円(900,000円 × 10年間)= 1,000,000円(未償却分)

1,000,000円 - 950,000円(10,000,000 × 95%)= 50,000円

旧定額法の場合③:耐用年数以降(12年目~16年目)

それ以降は、備忘価額1円まで5年間にわたり均等償却を行います。

借方

貸方

減価償却費 10,000円

減価償却累計額 10,000円

※50,000 ÷ 5年間 = 10,000 ただし最終年度は備忘価額1円を残すため、9,999円

新定額法の場合①:耐用年数まで(1年目~9年目

取得原価に償却率を乗じます。

借方

貸方

減価償却費 1,000,000円

減価償却累計額 1,000,000円

※1,000万 × 0.100 = 1,000,000

新定額法の場合②:耐用年数最終年度(10年目)

備忘として残存簿価を残すため、1円まで残額を償却します。

借方

貸方

減価償却費 999,999円

減価償却累計額 999,999円

※1,000,000(1,000万 × 0.100)- 1 = 999,999円


残存価額についてのまとめ

残存価額という項目は、平成19年の税制改正で廃止されています。

減価償却の計算方法は複雑ですが、新しく用いられることになった「残存簿価」も含めて、仕組みやルールを一つひとつ理解していきましょう。

それにより、正しい経費処理ができるようになります。

この記事で紹介した内容を、ぜひ日々の業務にお役立てください。


この記事に関連する最新記事

おすすめ書式テンプレート

書式テンプレートをもっと見る

監修者プロフィール

author_item{name}

赤羽 応介

公認会計士 / SAP-FI認定コンサルタント / 基本情報技術者

公認会計士として10年以上にわたり、監査業務やコンサルティング業務(IFRS導入支援、BPR支援、J-SOX対応支援、システム導入支援等)といった実務に従事。

その他、専門誌への寄稿やセミナー講師等を経験し、ブログ「公認会計士によるわかりやすい解説シリーズ」にて会計、税金、ITに関する情報を発信している。

この監修者の他の記事(全て見る

bizoceanジャーナルトップページ