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ヘッジ会計とは? 要件やメリット、処理方法の原則と例外を解説

ヘッジ会計とは? 要件やメリット、処理方法の原則と例外を解説

企業が事業活動を行う際に、為替や金利、投資資産の価値が変動することはリスクになります。

将来的に大きな損失を被ることを避けるためには、リスクヘッジが重要で、それに伴う会計処理が「ヘッジ会計」です。

この記事では、ヘッジ会計の定義や必要性、適用要件、処理方法をわかりやすく解説します。適用には要件があるため、本記事で理解を深めましょう。


この記事の監修者
もりやま会計事務所  公認会計士・税理士 

ヘッジ会計とは

ヘッジ会計とは、ヘッジ取引の効果を会計に反映させるために行われる、特殊な会計処理のことです。

企業は事業活動を行う際に、為替や金利、投資資産の価値が変動するリスクにさらされます。

それらの取引と反対の動きをする取引などをすることで、相場変動等のリスクを相殺することを「ヘッジ取引」といい、ヘッジ会計は、ヘッジ取引の効果を会計に反映させる特殊な会計処理です。

たとえば、海外に商品を輸出している企業の場合、売上の予測を立てた時点と、実際に取引を行った時点で為替に変動があると、仮に販売数量が予測と同じだったとしてもキャッシュフローに影響が出ます。

そこで、為替予約(先物為替予約)を行い、銀行と外貨の決済を行うレートなどの条件を、あらかじめ決めておくということが可能です。

ヘッジ取引では、先物取引やスワップ取引、オプション取引といった「デリバティブ取引」が用いられますが、デリバティブ取引は、将来的な価格の変動を見越して先に契約をするという特徴があります。

ヘッジ会計を適用しない場合、ヘッジ取引の対象資産(ヘッジ対象)となる為替や金利に関する損益の計上時期と、ヘッジ取引(ヘッジ手段)の損益の計上時期にズレが生じます。

ヘッジ会計は、ヘッジ対象とヘッジ手段の損益を同じ会計期間で計上することで、ヘッジ取引の効果を会計に反映させることが目的です。


ヘッジ会計の必要性

ヘッジ会計が適用されない場合、ヘッジ対象に係る損益がまだ認識されていなくても、ヘッジ手段に係る損益が認識されてしまうため、「ヘッジ取引を行っていること(ヘッジの効果)」が決算書に反映されなくなってしまいます。

しかし、ヘッジ会計を適用することで、ヘッジ対象とヘッジ手段のそれぞれに係る損益を同時に認識できるため、「ヘッジ取引を行っていること(=ヘッジの効果)」を決算書で表現することが可能です。


ヘッジ会計の適用要件は2つ

ヘッジ会計が適用される要件は、「事前テスト」と「事後テスト」に大きく分かれます。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

事前テスト

事前テストとは、ヘッジ手段をとるデリバティブ取引を行う前に満たさなければならない要件のことです。

次のいずれかの要件にあてはまらない場合は、ヘッジ会計を適用できません。

  • 当該取引が企業のリスク管理方針に適合している旨が文書で確認できること
  • 企業のリスク管理方針に関して明確な内部規定及び内部統制組織が存在し、リスク管理方針に沿った形での処理が期待されること

引用:金融商品に関する会計基準 目 次 項

ヘッジ手段は、原則として決算日に時価評価を実施し、当期の損益に反映されます。

そのため「この取引はヘッジ会計で処理する」といった曖昧な方針は認められず、ヘッジ会計を適用する目的や期待される効果を、あらかじめ文書で示しておく必要があります。

事後テスト

事後テストとは、ヘッジ取引以降もヘッジ対象とヘッジ手段の損益が、高い相関関係で相殺されていることを確かめるものです。

具体的には、ヘッジ対象の相場変動やキャッシュフロー変動が、ヘッジ手段によって高い水準で相殺されていることを確認し、ヘッジ手段の有効性を評価します。

原則として、ヘッジ開始時から有効性の判定時点までの期間に、ヘッジ対象の相場変動額等の累計と、ヘッジ手段の相場変動額等における累計の比率が80~125%の範囲内にあれば、両者に高い相関関係があると認められます。

評価は、決算日に加えて6か月に1回程度は行う必要があり、有効性の評価基準を満たしていない状態になった場合は、ヘッジ会計の適用は中止としなければなりません。

なお、為替予約の場合は、銀行と外貨の決済を行うレートなどの条件をあらかじめ決めておくため、キャッシュフローが固定されます。変動のリスクがないことから、取引後のテストについては省略することが可能です。


【原則・例外】ヘッジ会計での処理方法

ヘッジ会計での処理方法には、次の4種類があります。

  • 繰延ヘッジ
  • 時価ヘッジ
  • 金利スワップの特例処理
  • 外貨建金銭債権債務等への振当処理

ここでは、それぞれの処理の方法を詳しく解説します。

繰延ヘッジ

繰延ヘッジは、ヘッジ対象に係る損益が認識されるまでの間、ヘッジ手段に係る損益を、資産や負債として繰り延べるための会計処理です。

ヘッジ会計では、ヘッジ対象とヘッジ手段の損益を同じ会計期間で計上するのが原則です。

しかし、ヘッジ手段に係る損益を、ヘッジ対象に係る損益が認識されるまで、資産や負債として繰り延べることで、両方の損益を同一の会計期間で認識することが可能になります。

ヘッジ手段から発生した損益は、決算期末時点では貸借対照表の「純資産の部」に「繰延ヘッジ損益」として計上します。

時価ヘッジ

時価ヘッジは、ヘッジ手段に係る損益を計上するタイミングに合わせて、ヘッジ対象に係る損益を計上する会計処理です。

時価ヘッジを適用できるのは、ヘッジ対象の時価を貸借対照評価額(期末において貸借対照表に計上されている金融資産または金融負債の価額)とすることが認められているものに限られます。

条件に該当する金融資産は「その他有価証券」のみで、日本では例外的なヘッジ会計と考えられています。

金利スワップの特例処理

金利スワップ特例処理は、ヘッジ手段である金利スワップを時価評価しないという会計処理です。

「金利スワップ」とは、金利を対象とするデリバティブ取引の一種で、同じ種類の通貨を異なる金利で交換することを意味します。

金利スワップの代表的なケースが固定金利と変動金利の交換です。「固定金利で契約したけれど変動金利に変更したい債務者」と、その逆の状況に置かれている債務者同士が金利を交換することで、双方が目的を果たすことになります。

通常、デリバティブ取引は、決算時に時価評価を行う必要がありますが、金利スワップ特例処理の要件を満たす場合は、時価評価を行わない例外的な会計処理が認められています。

時価評価を行わないことで、会計処理が簡易になるのがメリットです。ただし、金利スワップの特例処理には細かい要件が定められています。

外貨建金銭債権債務等への振当処理

振当処理は、為替予約によって決められた為替レートを用いて、キャッシュフローを固定する会計処理です。

外貨建金銭債権債務(外国通貨でやり取りされる債権や債務)を為替予約のレートで換算し、為替差損益を、「直々差額」と「直先差額」に分けます。

直々差額は、予約日を含む会計期間の損益へ計上し、直先差額は、為替予約締結日から決済日にかけて按分します。

振当処理の適用には、ヘッジ会計の要件を満たしていることと、ヘッジ対象のキャッシュフローが固定される金銭債権債務に限定する必要があります。


ヘッジ会計についてのまとめ

ヘッジ会計は、デリバティブ取引によるリスク回避を目的とした「ヘッジ」に伴う特殊な会計処理です。

ヘッジ会計によって、ヘッジ対象とヘッジ手段の損益認識時期を合わせ、ヘッジの効果を会計に反映させるという目的があります。

ただし、事前テスト・事後テストの要件を満たさなければ適用できないため、計画的に実施しましょう。


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監修者プロフィール

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守山 幸史朗

もりやま会計事務所 公認会計士・税理士

2013年に公認会計士試験合格後、事業会社及び監査法人勤務を経て、2022年にもりやま会計事務所を開業する。

現在は主に関西地方の中小企業をメインに税務顧問のサービスを提供している。ITを積極的に取り入れ、顧客のビジネスのIT化・DX推進を得意としている。

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