工具器具備品とは? 具体例や減価償却・仕訳方法を解説
工具器具備品勘定は、工具や家具、事務機器などの資産を記録する科目であり、機械装置などとの違いに戸惑うこともあるでしょう。
そこでこの記事では、工具器具備品の概要や処理方法、仕訳の要点などを詳しく解説します。ぜひ参考にしてみてください。
工具器具備品とは
工具器具備品勘定とは、事業で使用される耐用年数1年以上かつ10万円以上の道具や設備を取り扱う科目です。
1年未満もしくは10万円未満の道具や設備は、消耗品費として処理をします。
工具器具備品の具体例
工具器具備品は、取得価額が10万円以上の道具や設備を指し、事務機器、家具、美術品なども該当します。
工具器具備品の具体例は、以下のとおりです。
- 加工工具、取付工具
- 測定器、送風機
- パソコンやシュレッダー
- 机や椅子、カーテン
- 絵画や書画、骨董品
工具器具備品には、工具や事務機器だけでなく絵画などの美術品も該当します。
ちなみに、個人的に持ち込んでいるノートパソコンなどは会社の資金で購入したわけではないので、仕訳対象外です。
機械装置との違い
機械装置とは事業に使う大型設備を指し、主に製造設備や作業機械などです。
工具器具備品は小規模な資産で汎用性が保たれる場合には工具器具備品とします。機械に組み込まれていて一体化されている場合には、機械装置として扱います。
消耗品との違い
工具器具備品と消耗品の違いは取得金額です。
取得金額が10万円以上であれば工具器具備品となり、10万円未満のものは消耗品として経費計上できます。
工具器具備品の処理・減価償却方法
工具器具備品の処理については、取得価額が10万円以上の工具器具備品に該当する資産を取得した場合は、固定資産に計上した上で減価償却を行う必要があります。
10万円以上かどうかの判定は、消費税の経理処理方式により異なるので注意が必要です。
税抜経理方式の会社は「税抜価額10万円」以上のものが対象となり、税込経理方式の会社は「税込価額10万円」以上のものが対象となります。
固定資産については、仕訳の計上に先だって、固定資産台帳に記帳します。固定資産台帳により減価償却費の金額を明らかにした上で、仕訳を計上するようにしましょう。
また、固定資産はその利用期間に渡り売上の獲得に貢献するものです。したがって、売上と費用を対応させる観点から、減価償却という方法により取得価額を費用化します。
例えば、自動車を取得した場合、取得金額は取得時に支払いますが、その利用は長期に及びます。営業用の自動車の場合、その利用期間に渡り売上の獲得に貢献することになります。
したがって、取得価額を取得年度に一括で費用化すると、売上と費用の計上時期が対応せず、各年度の損益計算が企業の活動実態を適切に表さなくなってしまいます。
そのようなことにならないように、減価償却により固定資産の利用期間に渡り費用化することで、企業の損益計算が適切に行われるようにします。
工具器具備品の仕訳方法
ここでは、工具器具備品の仕訳方法について紹介します。
10万円未満の場合
工具器具備品に該当する資産であっても、取得価額が10万円未満のものについては、消耗品費として処理します。
(例)95,000円の工具を現金で取得した。
借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
消耗品費 |
95,000 |
現金 |
95,000 |
10万円以上の場合
10万円以上の工具を取得した場合は、固定資産に計上した上で、減価償却を行います。
(例)400,000円のパソコンを現金で購入した。決算時に1年分の減価償却費100,000円を計上する。
⓵購入時
借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
工具器具備品 |
400,000 |
現金 |
400,000 |
②決算時
借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
減価償却費 |
100,000 |
工具器具備品 |
100,000 |
一括償却資産を取得した場合
10万円以上20万円未満の固定資産については、原則的な減価償却方法に代えて、一括償却という方法を採ることができます。一括償却は、取得価額の3分の1の金額を、各年度の減価償却費として機械的に計上する方法です。
なお、一括償却では、期中に取得した資産についても1年分の減価償却費を計上することになります。月数按分はしない点に注意が必要です。
(例)150,000円のパソコンを現金で取得した。一括償却資産に区分し決算時に減価償却費50,000円を計上する。
⓵取得時
借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
工具器具備品 |
150,000 |
現金 |
150,000 |
②決算時
借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
減価償却費 |
50,000 |
工具器具備品 |
50,000 |
一括償却資産を売却した場合
一括償却資産は、取得した固定資産について一括して減価償却費を行うものです。通常の固定資産のように、個々の資産について売却損益の把握は必要なく、売却金額全体を雑収入として計上します。
(例)一括償却資産30,000円を50,000円で売却し、現金を受け取った。
借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
現金 |
50,000 |
雑収入 |
50,000 |
(注)売却した一括償却資産の帳簿価額30,000円を考慮する必要はありません。
骨董品などを取得した場合
骨董品についても、通常の工具器具備品と同様に扱います。ただし、美術品のうち取得価額が100万円以上で「時の経過によりその価値が減少することが明らかなもの」に該当しない場合は、減価償却の対象外となるので注意が必要です。
(例)絵画450,000円を購入し、代金は現金で支払った。決算時に1年分の減価償却費30,000円を計上する。
⓵取得時
借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
工具器具備品 |
450,000 |
現金 |
450,000 |
②決算時
借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
減価償却費 |
30,000 |
工具器具備品 |
30,000 |
工具器具備品についてのまとめ
工具器具備品勘定は、工具や家具、事務機器などの資産を計上する科目です。消耗品との違いは取得金額が10万円以上であるかどうかで、少額資産で即時償却が可能な場合は工具器具備品は使われません。
適切な減価償却は税金納付のため重要で、必ず行うべきものです。適切な処理を行うためにも、減価償却方法を選び実施しましょう。