支払調書と源泉徴収票の違いとは? 起こりやすい誤解も紹介
「支払調書」と「源泉徴収票」は、どちらも事業主が発行する法定調書です。
一定の金額以上の支払があった場合に交付・提出するものですが、似た内容も多く、混同しやすいため処理をする際は注意が必要です。
支払調書と源泉徴収票の概要や、それぞれの書類の違いを解説します。
支払調書と源泉徴収票はどちらも「法定調書」
まずは、支払調書と源泉徴収票の概要を解説します。
なお源泉徴収票と支払調書は、どちらも「法定調書」の一種です。法定調書とは、以下の法律の規定により、税務署への提出が義務付けられている書類のことです。
- 所得税法
- 相続税法
- 租税特別措置法
- 内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律
参考:国税庁「No.7401 法定調書の種類」
支払調書とは
支払調書は、各事業者が外部の法人・個人(支払先)に支払った年間支払額を報告するために作成する税務書類です。
支払調書にはさまざまな種類があり、一例として以下が挙げられます。
- 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
- 不動産の使用料等の支払調書
- 配当等とみなす金額に関する支払調書
原則として事業者は年に1回、報酬などの支払いが確定した年の翌年1月31日までに、支払調書を所轄の税務署に提出しなければなりません。
ただし、支払先への交付は義務ではないため、交付しなくても違法にはならないのです。期日までに提出しなかった場合でも、追徴課税の対象とはなりません。
しかし、提出を怠ったり、虚偽の内容を記載して提出したりした場合は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されることがあります。
加えて、支払調書は全ての支払いに対して作成する必要はありません。それぞれの支払調書に定められている要件を満たす場合のみ、対応してください。
源泉徴収票とは
源泉徴収票は、事業者が従業員または外部の事業者に給与や報酬、退職金などを支払った場合に発行する税務書類です。
1年間に支払った給与の総額や、所得税額などが記載されています。
源泉徴収票は支払調書ほど種類が多くなく、以下の3種類のみとなっています。
- 給与所得の源泉徴収票
- 退職所得の源泉徴収票
- 公的年金等の源泉徴収票
源泉徴収票は、事業者が給与や退職金を支払った全ての方に対して作成しなければなりません。日本人に限らず、外国人従業員に支払った場合も作成の対象となります。
源泉徴収票も支払調書と同じく、原則として年に1回、報酬などの支払いが確定した年の翌年1月31日までに、所轄の税務署への提出が必要です。期日までに提出しなかった場合でも、追徴課税の対象にはなりません。
しかし、提出を怠ったり、虚偽の内容を記載して提出したりした場合は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されることがあります。
ただし税務署への提出は、一定の要件を満たしたもののみで良いとされています。
支払調書と源泉徴収票の違いまとめ
支払調書と源泉徴収票の違いをまとめると、以下のとおりです。
法定調書の種類 |
概要 |
支払先への交付義務 |
税務署への提出義務 |
---|---|---|---|
支払調書 |
外部の事業者に支払った報酬や不動産の使用料などの金額を取りまとめる |
× |
◯ |
源泉徴収票 |
従業員や外部の事業者に支払った給与・報酬や退職金と、所得税額などを記載 |
◯ |
◯ |
大きな違いは、支払先への交付義務があるかどうかです。支払調書は税務署への提出義務がありますが、支払先には必ずしも交付する必要はありません。
一方、源泉徴収票は給与や報酬を支払った全ての相手に交付する必要があります。
支払調書と源泉徴収票に起こりやすい誤解
支払調書と源泉徴収票は、それぞれ作成時の注意点があります。特に誤りやすい点・誤解しやすい点について、解説します。
マイナンバーの記載が必要
支払調書、源泉徴収票のどちらも、税務署に提出する際は支払先のマイナンバーの記載が必要です。
したがって、経理担当者は事前に支払先からマイナンバーを収集しておく必要があります。
支払先からマイナンバーの提供が受けられない場合は、なるべく収集できるよう努めてください。支払調書・源泉徴収票へのマイナンバーの記載は、法律に定められた義務です。
提示を受けられないからといって、安易にマイナンバーを記載しないで提出することは避けましょう。
なお、マイナンバーの提供が受けられず、記載せず提出する場合は、提供を求めた経緯を記録・保存するなどして、義務違反でないことを明確にしておく必要があります。
法定調書合計表への押印は不要になった
支払調書・源泉徴収票を税務署に提出する際に添付する「法定調書合計表」には、押印が不要です。
支払調書・源泉徴収票のどちらも、税務署に提出する際には「法定調書合計表」という書類を作成・添付する必要があります。この書類は、それぞれの書類の内容をまとめたもので、提出する書類の表紙のような役割があります。
もともと、この法定調書合計表には押印が必要でした。しかし、令和3年度の税制改正大綱で、国税に関する法令に基づき税務署長等に提出される申告書等(税務関係書類)は、一部のものを除き押印不要になったのです。
そのため、法定調書合計表への押印も不要となっています。
なお、従業員や外部の事業者に交付する源泉徴収票や支払調書は、もともと押印の必要がない書類です。こちらも、あわせて覚えておくと良いでしょう。
支払調書と源泉徴収票についてのまとめ
支払調書と源泉徴収票の大きな違いは、従業員または外部の事業者といった支払先への交付が必要かどうかです。
特に源泉徴収票は給与や報酬を支払った全ての相手に交付する義務があるため、早めに交付手続きを進めておきましょう。
また、どちらも期日までに税務署への提出義務がありますが、提出すべき書類は要件を満たしたもののみとなっています。要件を事前に確認し、どれを提出すべきなのかを正確に判断しましょう。