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役員貸付金とは? デメリット・解消する方法を解説

役員貸付金とは? デメリット・解消する方法を解説

「役員貸付金」とは、企業がその企業の役員に貸している金銭のことです。役員報酬の代わりや、経営者の生活費を補充するために利用されることがあります。

しかし、メリットはほとんどなく、むしろ会社と役員の双方に負担を掛けるリスクもあるため、作らない方がよいとされています。

もし自社に役員貸付金がある場合は、今回解説するデメリットや解消方法を知って、早急に対処してください。


役員貸付金とは

役員貸付金は、法人が役員個人に対して貸し付けているお金のことです。役員報酬の代わりにしたり、経営者の生活費に充てたりするために使われることがあります。

たとえば、法人のクレジットカードをプライベートな支出に使用した場合、その支出の資金は法人から役員に対する貸付金として記録されます。

役員貸付金は、経営者の資金と企業の資金が混同されている中小企業で発生することが多いです。

しかし、役員自身が設立した会社からの貸付金であっても、役員個人のお金としては扱われず、一般的な融資と同様に返済していく必要があります。


役員貸付金にメリットはある?

基本的に役員貸付金を作ることにメリットはなく、できるだけ作らないほうがよいものとされています。

唯一のメリットといえば、役員報酬を引き下げて役員貸付金として処理することで、会社に利益を生める点が挙げられます。

しかし、それも一時的に役員個人にお金が入るだけで、企業に利益が生まれるわけではありません。むしろ、双方に負担が生じる可能性が高くなります。

さらに役員貸付金を頻繁に利用すると、企業の信頼性や財務の健全性が低下するケースもあります。

適切な事業計画や説明がないままに貸付が行われると、透明性が損なわれ、株主や取引先からの不信感を招いてしまうのです。


役員貸付金によるデメリット

役員貸付金は、金融機関などからの信頼や印象に悪影響をもたらすだけでなく、法人税の負担も増大するなど、会社にとって多くのデメリットをはらんでいます。

役員貸付金による主なデメリットは以下の3つです。

  • 金融機関からの悪印象
  • 利息の発生
  • 役員賞与扱いになるリスク

それぞれ解説します。

金融機関からの悪印象

役員貸付金は、金融機関から悪印象を持たれがちです。通常、金融機関は融資時にその資金の使途を確認し、返済の見通しを評価します。

しかし、役員貸付金が存在する場合、資金が私的に使用される可能性が疑われ、金融機関に「返済見込みのないお金」と判断を下されてしまうのです。

さらに、役員が企業の資金を私的な目的に流用する可能性があると見なされると、その人物や法人に対する信頼が低下します。

「資金の使い方が粗雑である」と判断され、金融機関が取引に対して慎重になるケースも少なくないのです。

利息の発生

役員貸付金が発生した場合、役員は会社に対して利息を支払う必要があります。

税法上、無利息や低金利であっても、通常の金利相当額として会社の収益計上が必要です。会社は役員への貸し付けにより発生した金利を収入として処理しなければなりません。

会社が実際に利息を受け取ると収益として計上しなければならず、その分の法人税も発生します。

仮に利息を受け取っていない場合でも、税法上の取り決めで差額は役員給与になるため、会社の負担が発生します。

つまり、利息の有無を問わず、会社には一定の負担が生じるのです。

役員賞与扱いになるリスク

長期間返済が滞り、未清算のまま残る役員貸付金は、役員賞与として扱われる可能性があります。

もし、税務調査が実施された場合、適切に処理されなかった役員貸付金が明らかになり、追加で課税されるリスクもあるのです。

そのため、適切な役員貸付金の管理と返済スケジュールの厳守を徹底しましょう。


役員貸付金を解消する方法

もし現時点で役員貸付金が発生している場合は、次のいずれかの方法で早く解消しておくことをおすすめします。

  • 役員報酬から天引きする
  • 役員が所有する資産から返済する
  • 経営者が個人的に借入する
  • 債権を放棄する

役員報酬から天引きする

手っ取り早い方法としては、毎月支給される役員報酬から天引きすることが挙げられます。天引きにすることで、必ず一定額を徴収できる点は魅力的です。

役員報酬を増額してから天引きすれば、実際の手取りを減らさずに回収が可能です。

ただし、役員報酬を増額する場合、タイミングを間違えると、法人税や役員個人の負担が増えてしまいます。

役員が所有する資産から返済する

自動車や不動産といった、役員がプライベートで所有する資産を売却し、その売却益を役員貸付金の返済に充てる方法もあります。

役員所有の資産から貸付金を返済する場合、即座に現金を用意でき、貸付金も解消できる点がメリットです。

しかし、資産の売却と返済には法的手続きが伴います。さらに役員には売却益が発生するため、売却益に対する税金も支払わなければなりません。

何より、予想より安い金額でしか売却できなかった場合、また別の資産を売却したり、ほかの返済方法を検討したりする必要も出てくるでしょう。

経営者が個人的に借入をする

経営者自らが保有する資産や信用を担保に、金融機関から融資を受け、それを返済に充てる方法もあります。

しかし、経営者個人が金融機関から借入をするとなると、経営者個人の返済能力に依存することになります。

また、もし経営者自身に返済能力がなくなってしまった場合は、その家族が支払わなければならなくなることもあるでしょう。

この方法はリスクが高く、安定性に欠けるという点は覚えておきましょう。

債権を放棄する

企業が役員貸付金の債権を放棄することもできます。

ただし債権放棄は、役員個人が貸付金を返済する義務がなくなる一方で、役員・企業ともに課税額が増加してしまう可能性があることを知っておきましょう。

債権放棄された額が役員賞与として処理されるので、役員個人としては所得になるうえに、企業としては役員賞与が経費として計上できなくなります。


役員貸付金の発生を防ぐために

役員貸付金は会社にとって損失こそもたらすものの、メリットはありません。発生してから解消法を考えるのではなく、そもそも発生を防ぐ心がけが必要です。

まずは経営者が個人と会社の資金を厳格に分けて認識し、会社の資金を計画的に利用することが不可欠です。

また、正確な帳簿管理をすることも忘れないでください。行き当たりばったりの経営では会社の利益が伸びず、役員貸付金が必要になる場面も出てきてしまいます。

特に個人事業主が法人化した場合は、なかなか自分の資金と会社の資金を分けて考えることは難しいかもしれません。

「会社の資金を借りると、返済が必要」だと考え、なるべく発生させないようにしてください。


まとめ

役員貸付金には、金融機関の信頼や印象に悪影響を与える、税負担が増大するなど、多数のデメリットがあります。

不要な役員貸付金を発生させないためにも、まずは会社の資金と経営者の資金を明確に分類しましょう。

そのうえで、資金計画に基づいた出費や正確な帳簿管理をすることが重要です。

もし発生した場合は、適切な手段と手続きを踏んだうえで、素早く解消できるように対応しましょう。

なるべく残さない・作らないことが最善の方法であると、よく知っておくことをおすすめします。


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