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返金時に混乱しないための勘定科目ガイド│状況別に仕訳例をわかりやすく解説

返金時に混乱しないための勘定科目ガイド│状況別に仕訳例をわかりやすく解説

企業の事業活動では、商品の不具合やキャンセル、大量仕入れによる割引など、さまざまな理由で返金が発生することがあります。

返金の理由や会計処理の方法によって、その後の対応が異なるため、経理担当者はその違いを正確に理解することが重要です。

本記事では、返金時に使用すべき勘定科目や正しい仕訳方法について、具体例を交えながら詳しく解説します。

実務で迷うことが多い返金時のポイントもあわせて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。


この記事の監修者
もりやま会計事務所  公認会計士・税理士 

返金が発生する状況とは?

ここでは返金が発生する状況について販売・購買活動などの業務に関する返金とそれ以外の業務外の返金の2種類に分けてご紹介します。

業務に関係する返金

まずは、業務に関する以下の例について説明します。

  • 取引がキャンセルになる
  • 取引金額を誤った
  • 返品に伴う返金

取引がキャンセルになる

料金の支払い後に何らかの原因で、取引がキャンセル・解約になった場合、返金が発生します。

全額返金されることもありますが、キャンセル料が設定されている場合はそれに合わせて返金額が決まります。

勘定科目は、「売上」または「売上戻り」とし、借方に計上しましょう。

取引金額を誤った

受け払いの金額を間違えていた場合も返金が発生します。この場合は「正しい金額ー受け取ったまたは支払った金額」の差額が返金すべき金額です。

多く支払われた分は、銀行振込などで返金します。その際は、必ず取引先に連絡してから返金するようにしましょう。勘定科目は「仮受金」で、貸方に計上します。

返品に伴う返金

商品に不備がある場合や、発注側がサイズや色などの仕様を間違えて返品された場合も返金が発生します。

この場合も、取引をキャンセルされた場合と同じように「売上」または「売上戻り」の勘定科目を使用して、返品の仕訳を行いましょう。

業務以外の返金

業務外の返金の一つに、年末調整の際の税金の還付などがあります。

従業員への税金の還付

従業員への税金の還付は、年末調整の際に企業が従業員に対して源泉所得税を還付する際に発生します。「実際に支払った所得税ー支払うべき所得税」の差額分を返金します。


売上代金を返金した場合の勘定科目と仕訳例

まずは、具体的なケースをあげて売上代金を返金した場合の勘定科目と仕訳例を紹介します。

  • 販売商品の返品・キャンセル
  • 誤った入金による返金

返金の理由によって勘定科目が異なるので注意しましょう。

販売商品の返品・キャンセル

販売した商品の返品・キャンセルによる返金の場合は、当初の売上を取り消すか、売上戻りの勘定科目で計上します。

例)販売した商品の一部に破損があり、商品代金5万円を返金することで取引先と合意した場合

借方

貸方

売上(売上戻り) 50,000円

現金 50,000円

誤った入金による返金

取引先が入金額を誤り、販売金額より多く入金された場合は、「仮受金」の勘定科目を使用して仕訳を行います。

例)5万円の商品を販売したが、取引先から誤って5万5,000円入金されたことがわかり、過入金分を返金した場合

借方

貸方

現金預金 55,000円


仮受金 5,000円

売上 50,000円

仮受金 5,000円

現金預金 5,000円

仮受金は、長期間そのままにしないよう注意しましょう。


返金を受けた場合の勘定科目・仕訳

ここでは、返金を受けた場合の勘定科目と仕訳例を見ていきましょう。

仕入商品の返品・キャンセル

仕入商品を、発注ミスや不良品などの理由で返品・キャンセルする場合は、仕入を取り消す仕訳を行います。売上代金を返金する場合と同様に、対応する勘定科目に対して、マイナス分を計上しましょう。

例)5万円の商品を掛仕入したあとに、その商品をすべて返品した場合

借方

貸方

仕入 50,000円

買掛金 50,000円

買掛金 50,000円

仕入 50,000円

取引金額が変更となり返金を受ける

一部の商品に不具合が見つかったなどの理由で取引金額が変更となり、返金を受けるケースがあります。その場合は、「仕入値引」の勘定科目を用います。

例)商品の不具合により1万円分の値引を受けた場合

借方

貸方

現金預金 10,000円

仕入値引 10,000円

仕入値引の代わりに「仕入」の勘定科目を用いることも可能です。


商品売買以外での返金処理

商品売買以外での返金処理の方法についても、ケース別に解説します。

保険の解約による返金

保険商品を解約すると、それまでに支払った保険料の一部が「解約返戻金」として戻ってくることがあります。

保険料を経費として計上していた場合、解約返戻金は雑収入として処理するのが一般的です。保険料のすべてまたは一部が積立で、「保険積立金」として資産計上されている場合は、その分を取り崩す形で処理します。

例)500万円の解約返戻金があり、保険料を経費として計上していた場合

借方

貸方

現金預金 5,000,000円

雑収入 5,000,000円

例)500万円の解約返戻金があり、200万円の保険料を保険積立金として計上していた場合

借方

貸方

現金預金 5,000,000円

保険積立金 2,000,000円

雑収入 3,000,000円

年末調整で従業員に源泉所得税を返金

年末調整で企業が従業員の源泉所得税を返金する場合は、12月もしくは1月の給与支払時に返金するケースが多くなります。

その場合は「預り金」の勘定科目を用いて、給与の仕訳とあわせて所得税を返金する仕訳を行います。

例)年末調整を行い、従業員に1万円の源泉所得税を返金した場合

借方

貸方

預り金 10,000円

現金預金 10,000円

税金の返金を受ける

例えば法人税の中間納付額が確定額より多かったため、還付を受ける場合などがあります。この場合、後日入金があった際に、決算で計上した未収法人税等の科目を取り崩します。

例)法人税の中間納付額は40万円であったが、確定額は50万円であった。

借方

貸方

当座預金 100,000

未収法人税等 100,000


返金に関する勘定科目・会計処理で覚えておきたいこと

ここでは、実務で迷うことが多い返金時のポイントを紹介します。

売上や仕入にかかる消費税の会計処理

返金をしたり、返金を受けたりした際の消費税の会計処理は、当初の売上時や仕入時と同じ消費税の勘定科目を用います。

ただし、「仮受金」は、入金があった時点では用途が不明であることから、課税対象かどうかも判断できません。

そのため、用途が確認できて、仮受金を正しい勘定科目に振り替えるまで消費税の会計処理は行わないよう注意します。

割戻の会計処理

割戻とは、取引量に応じて代金の一部が返金される商慣行のことで、「仕入割戻」と「売上割戻」があります。

仕入割戻とは、買主側が受ける割戻のことで、まとめて仕入を行うことで商品代金の一部が割り戻された際に用います。一方で、売主側は売上金額の一部を買主に戻すことになるため「売上割戻」の勘定科目を用いましょう。

また、割戻の会計処理には、費用と収益を総額で計上する「総額主義」と、相殺して計上する「純額主義」があります。

損益計算書上は総額主義が原則とされていますが、すべての取引において総額主義を採用すると実務負担が増えることから、純額主義での計上が例外的に認められています。


返金勘定科目についてのまとめ

返金や返品が発生した場合、取引を取り消すための仕訳が必要です。仕訳をする際は売上側としての取引なのか仕入側としての取引なのかを把握しましょう。

返品やキャンセルに伴う返金は損益にも影響を与えるため、間違いのない会計処理が必要です。

返金があった場合にはぜひ本記事を参考にしてみてください。


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監修者プロフィール

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守山 幸史朗

もりやま会計事務所 公認会計士・税理士

2013年に公認会計士試験合格後、事業会社及び監査法人勤務を経て、2022年にもりやま会計事務所を開業する。

現在は主に関西地方の中小企業をメインに税務顧問のサービスを提供している。ITを積極的に取り入れ、顧客のビジネスのIT化・DX推進を得意としている。

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