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有利子負債とは? 計算方法や捉え方、改善方法について解説

有利子負債とは? 計算方法や捉え方、改善方法について解説

有利子負債(ゆうりしふさい)は、企業が抱える負債の一種です。

負債が多い企業は、経営が苦しい状況であるとみなされることがありますが、設備投資などによって一時的に負債が増えている場合も考えられます。

有利子負債が増える理由を知り、経営指標として正しく活用できるようになりましょう。

本記事では、有利子負債の基礎知識や「無利子負債」との違い、有利子負債比率などについて、分かりやすく解説します。


この記事の監修者
  公認会計士 / SAP-FI認定コンサルタント / 基本情報技術者 

有利子負債とは

まずは、有利子負債の概要や比率の計算方法といった基礎知識を見ていきましょう。

有利子負債の概要

有利子負債とは、金融機関からの借入金や社債など、利息を付けて返済する必要がある負債のことです。

有利子負債が多いと元本の返済や利息の返済が経営を圧迫するため、企業の財務状況の安全性をはかるうえで重要な指標の一つとなります。

多額の設備投資が必要となる企業では、有利子負債が多くなる傾向にあります。

有利子負債比率の計算方法

有利子負債は、自己資本に対して有利子負債がどの程度の割合であるかを示す「有利子負債比率」を算出して、経営上の指標とします。

有利子負債比率の計算式は、次のとおりです。

有利子負債比率(%)=(有利子負債 ÷ 自己資本)× 100

安全性の観点から、有利子負債比率は小さいほうが望ましいとされており、一般的な目安として100%に収まっている状態が理想です。

自己資本とは、返済の必要がない資金のことです。経営のための資金という意味では、有利子負債も資本と同じような性質を持ちます。

しかし、自己資本と異なり有利子負債は将来的に返済する必要があり、利息が発生することから、割合が低いほうが財務上の安全性が高いと言えます。

有利子負債の具体例は?

有利子負債は、次のような具体例が挙げられます。

  • 銀行などの金融機関からの借入金
  • 社債
  • 転換社債型新株予約権付社債(CB)
  • コマーシャルペーパー(CP)

有利子負債は、貸借対照表の負債の部に計上されます。

無利子負債との違い

負債には、利息を付けて返済する必要がある有利子負債と、利息が発生しない無利子負債があります。

次のような負債は、無利子負債に該当します。

  • 前受金
  • 支払手形
  • 買掛金
  • 未払金
  • 退職給付引当金

なお、有利子負債は、返済期限が1年未満の「流動負債」、返済期限が1年以上の「固定負債」に分けることが可能です。

増資との違い

企業の運転資金や設備投資、新規事業参入などのために資金を調達する主な方法は「融資」と「増資」です。

融資とは、金融機関などから資金を借りることを意味し、有利子負債は融資にあたります。融資による資金調達は、将来的に返済が必要になることから、自己資本と区別する意味で「他人資本」と呼ばれます。

一方の増資は、株式を発行して資金を集めることです。増資で調達した資金は自己資本に該当し、利息は発生しません。

ただし、株主に対するリターンとして配当金の支払を検討する必要があるため、結果的に融資よりも資金調達コストが高くなるケースがあります。


有利子負債についての考え方

ここでは、有利子負債に関する考え方を解説します。

積極的に投資を行うと有利子負債が増える

有利子負債は利息を伴い、返済義務があることから「借金」と考えられます。

一般的に、借金は少ないほうがよいとされていますが、企業の将来的な成長を目指すうえで借入が必要になるケースもあります。

そのため、設備投資や研究開発を行ったことによって有利子負債が増えるのは、必ずしも悪いことではありません。資本が少ないスタートアップ企業も、有利子負債が多くなる場合があります。

有利子負債が多いことは、将来への投資に積極的と考えられるでしょう。

有利子負債比率だけで判断しない

100%を超える有利子負債比率は、有利子負債を自己資本でまかなえない状態であることを意味します。

財務上の安全性に懸念があると判断され、場合によっては、金融機関から追加融資が受けられなくなる可能性が生じます。

ただし、非上場の中小企業においては、上場企業のように株式発行で自己資本を増額することができません。

また、投資フェーズでは利益剰余金の内部留保が難しいこともあり、有利子負債比率が100%を超える状況も珍しくないでしょう。

従って、有利子負債比率だけを見て企業の状況を判断するのではなく、企業がおかれているフェーズ、売上や利益の水準、設備投資の状況などを踏まえて総合的に判断するようにしましょう。


有利子負債が多くなるとどうなる?

融資を活用した資金調達を行うと、事業の拡大や設備投資が可能になります。しかし、有利子負債が増えるとその分、利息の返済も増えてしまいます。

総資本に対する自己資本比率が低くなり、企業の財務状況に対する評価が下がる可能性もあるため、慎重に検討することが重要です。


有利子負債比率の改善方法

続いて、有利子負債比率の改善策を具体的に解説します。

分子である負債を減らす

有利子負債比率を改善する直接的な方法として、負債を減らすことが挙げられます。負債を減らすには借入金の返済が有効ですが、そのためには手元資金を確保しなければなりません。

「本業の売上を伸ばす」「コスト削減を行う」といった施策で利益を確保することが一番の正攻法ですが、ほかにも「売掛債権をファクタリングする」「手形割引を利用する」などの方法が、手元資金を用意するための手段として考えられます。

ただし、これらの手法では手数料がかかる点に留意が必要です。

分母である自己資本を増やす

自己資本を増強することでも、有利子負債比率の改善が可能です。

自己資本を増やす主な方法として、増資を行うか内部留保を増やすことが挙げられます。

増資は主に上場企業が実行する施策ですが、非上場企業の場合でも、ベンチャーキャピタルから出資を受けられる可能性があります。

また、内部留保を増やして有利子負債比率を改善する方法もありますが、すぐに内部留保を増やすことは容易ではなく、有利子負債が多い状況は解消しづらいといえます。

自己資本の増加による有利子負債比率の改善は、実現が難しい場合があり、実現できたとしても中長期的な施策になる点に注意しましょう。


有利子負債のまとめ

有利子負債は借金であり、「経営が苦しい」というイメージを持たれることがありますが、一概にそうとは言えません。

元本の返済や利息の返済は、企業経営にとって大きな負担となりますが、金融機関から融資を受けていること自体が、その会社の財務状況に信頼性がある証明と考えられます。

また、将来の投資へ積極的という指標と見ることもできます。

本記事の内容を参考にしながら、有利子負債に関する正しい知識を身に付けましょう。


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監修者プロフィール

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赤羽 応介

公認会計士 / SAP-FI認定コンサルタント / 基本情報技術者

公認会計士として10年以上にわたり、監査業務やコンサルティング業務(IFRS導入支援、BPR支援、J-SOX対応支援、システム導入支援等)といった実務に従事。

その他、専門誌への寄稿やセミナー講師等を経験し、ブログ「公認会計士によるわかりやすい解説シリーズ」にて会計、税金、ITに関する情報を発信している。

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