役員借入金とは? 活用するメリット・デメリットを解説
役員借入金について、どのようなメリットやデメリットがあるか気になる人も多いでしょう。実際に使用して効果的なのか、まずは把握したいところです。
そこで本記事では、役員借入金の概要からメリット・デメリット、役員借入金を減らす方法まで詳しく解説します。
役員借入金を使うべきか悩んでいる人は、ぜひ参考にしてみてください。
役員借入金とは
役員借入金とは、企業が役員個人から借り入れた資金のことです。
この取引は通常「短期借入金」として、企業の勘定科目に計上されます。特に、会社を設立したばかりで資本や運転資金が不足しているケースで、よく利用されます。
役員借入金は、金融機関や第三者からの借入とは異なり、利息を付ける必要がありません。
実際に利息が発生する場合でも、その金額や条件は役員と企業との合意により、任意に設定できます。
役員借入金のメリット
役員借入金は、企業内の個人による他人資本という特性上、様々なメリットがあります。
ここでは、役員借入金のメリットを4つ紹介します。
返済期限がない
役員借入金は個人からの貸付であるため、通常の借入と異なり返済期限が設定されません。
企業は資金繰りが順調なタイミングで返済を行えるため、ほかの借入方法と比較しても柔軟性があります。
一般的な融資手段では、決められた返済期限に従わなければならず、返済できない場合は企業の信用に悪影響を与える可能性が生じます。
また、会社の経営状況に関わらず、返済が必須です。
税制の優遇が受けられる
創業時の資本金を1,000万円未満に抑えた場合、税制上の優遇が受けられます。
このため、事業に資本が必要なケースでも、資本金をあえて1,000万円未満に設定し、その差額を役員借入金で補う方法が考えられるでしょう。
仮に役員借入金が増加しても、資本金に計上されないため、税制面でのメリットを享受できます。
企業は資金を調達しながら資本構造を最適化し、節税を図ることが可能です。
利息がいらない
役員個人からの借入は「利息が任意」とされており、無利息で融資を受けても問題はありません。
特に会社の状況に余裕が無い場合でも、無利息での貸付が許容されるため、会社の利益に寄与します。
企業は必要な資金を借り入れつつ、利息の負担を最小限に抑えた上で、資金の有効活用を期待できるでしょう。
役員に節税効果がある
役員借入金は、返済時に会社の利益に影響を与えることがなく、役員の所得および所得税・社会保険料にも影響を与えません。
一方、増資の場合は増資後に受け取る役員報酬は、所得税や社会保険料が差し引かれるため、実際の受取額が減少します。
役員自身の所得税や社会保険料の負担を考慮すると、役員借入金として会社に融資することは、節税に効果的な手段の一つです。
役員借入金のデメリット
もちろん、役員借入金にはメリットだけではありません。
ここでは、役員借入金のデメリットを4つ紹介するので、きちんと把握しておきましょう。
債務超過のリスクがある
役員借入金が過度に増加すると、債務超過に陥る可能性が考えられます。
企業が連続して赤字を出したり、金融機関からの通常の借入が難しい状況だったりする場合は、特にリスクが顕著になります。
債務超過が発生すると、企業は負債を返済できなくなる恐れもあるでしょう。
役員借入金の利用は柔軟性がある反面、使用の際には慎重な判断や、企業の財務状況を常に注意深く監視することが重要です。
金融機関の評価は悪くなる
役員借入金が増加すると、企業の自己資本比率が低下します。
自己資本比率は、金融機関が企業の信用を評価する際の重要な要素であるため、自己資本比率が低いと、金融機関から財務の安定性に対する懸念を抱かれます。
役員借入金が増えると金融機関からの借入が難しくなり、企業の資金調達に制約が生じるかもしれません。
企業は安定した自己資本比率を保ちながら役員借入金の利用を検討し、金融機関との信頼関係を損なわないようにしましょう。
相続税がかかる
役員から見れば、自らが会社に貸した金銭は「資産」と見なされ、相続対象に該当します。
例えば、会社側が1億円の役員借入金を抱えている場合、役員側は1億円の資産を有していることになり、貸し付けた役員が亡くなると相続税が発生します。
仮に債務超過であっても相続税は発生するため、生前のうちから早めに整理しておくことが重要です。
役員借入金を減らす方法
先述のとおり、役員借入金が増えると、金融機関の評価が悪化したり難点が生じる恐れがあります。
そこで、役員借入金を減らす・解消する方法を4つ紹介します。
役員報酬を減額して借入金を返済する
役員借入金を減らす方法の一つは、役員報酬を減額して借入金を返済することです。
通常、手取り額の一部を借入金の返済資金に充てるのが一般的です。これにより、企業は負債を削減し財務の健全性を保てます。
ただし、報酬の減額には慎重な検討が必要であり、役員の生計や事業の継続性を考慮することも欠かせません。
DESの活用をする
DES(Debt Equity Swap:デット・エクイティ・スワップ)は、企業の「債務」を債権者が現物出資により「株式化」し、その出資によって債務を弁済する手法です。
負債が減り、資本が増えるため、自己資本比率が改善します。
自己資本比率の向上は、会社の財務状況を強化し、信頼性を引き上げる効果があります。
DESを活用することで、企業は資金調達と財務戦略を効果的に調整し、役員借入金の削減と財務改善を同時に達成できるかもしれません。
役員が債務免除をする
役員が借入金を債権放棄すれば、会社に債務免除益が発生し赤字を補填できます。
また、債務免除により企業は負債を減少させ、資本の強化が期待できます。
ただし、債務免除は法的かつ税務上の知識が必要で、役員と企業は慎重に取り組まなければなりません。
役員借入金を暦年贈与で贈与する
役員が後継者へ貸付金を暦年贈与する手法も、借入金を減らす戦略の一つです。
役員は税制上の優遇を受けながら、借入金の一部を贈与として計上できます。
贈与の際には法的および税務上のアドバイスを得ながら、慎重にプランニングしましょう。
まとめ
役員借入金とは、企業が役員個人から融資を受けた際に発生する資金です。
返済期限がなく、役員との合意があれば利息も不要で、節税効果があるなどのメリットがあります。
とはいえ、債務超過のリスクや金融機関の評価が落ちるなどのデメリットもあるため、計画的に行うことが重要です。
本記事の内容を参考にして、円滑な会社経営を実現させましょう。