電子領収書とは? 導入方法やメリットなど徹底解説
電子領収書の導入は、企業の業務効率化とコスト削減に大きな効果をもたらします。また、電子帳簿保存法への対応も求められる現代において、電子領収書の導入は必須となるでしょう。
この記事では、電子領収書の基礎知識から導入方法、メリット、注意点までを詳しく解説します。電子領収書の導入を検討している企業の管理職や経理担当の方は、ぜひお読みください。
電子領収書の基礎知識
電子領収書を導入するときには、電子領収書の基本的な知識を理解することが重要です。ここでは、電子領収書の定義や法的な位置づけ、紙の領収書との違いについて詳しく説明します。
電子領収書の定義
電子領収書とは、電子データで発行される領収書です。電子領収書はPDFファイルなどに変換され、メールなどで送付されます。
電子領収書は保存や管理がしやすく、場所をとらないため物理的な保管スペースは不要です。電子領収書の導入は、業務効率の向上やコスト削減につながり、ペーパーレス化の推進にも寄与します。
たとえば、取引が完了したときにメールで送付されるPDFファイルの領収書や、クラウド上で管理される領収書などが電子領収書です。電子領収書の発行は電子帳簿保存法に基づいて行う必要があり、法的な要件を満たすと電子領収書の有効性が担保されます。
電子帳簿保存法における電子領収書の位置づけ
電子帳簿保存法は、電子的に作成・保存される帳簿や書類の保存方法を定めた法律で、紙の帳簿や書類の保管に伴うコストや労力を削減し、電子データによる効率的な管理の促進を目的としています。電子帳簿保存法において、電子領収書は「電子帳簿」として扱われ、保存にあたっては特定の要件が求められます。
真実性の確保や見読可能性の確保などの要件を満たすことがとても重要です。要件を満たした電子領収書は、紙の領収書と同様に法的に有効な証拠書類として認められます。
2022年の電子帳簿保存法改正のポイント
2022年の電子帳簿保存法の改正は、国によるDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が背景にあります。電子帳簿を利用しやすくして電子的な記録の利用をさらに促進し、企業のデジタル化を支援することが目的です。
電子領収書の保存要件が緩和され、電子的に受領した領収書を紙に印刷せず、そのまま電子データとして保存できるようになりました。逆に、プリントアウトして保存することは認められなくなりました。
紙で交付された領収書をスキャンすることで保存も認められるようになり、その場合、タイムスタンプの付与や、適切な検索機能の確保など、電子データの信頼性を担保するための要件も明確化されています。
電子帳簿保存法の改正は、企業のDX推進を支援し、競争力の強化につながる重要な一歩といえます。
紙の領収書との違い
紙の領収書と電子領収書は、保管する期間や方法において大きな違いがあります。
保管期間について、紙の領収書は法定の保管期間が通常7年と定められています。7年間保管するための物理的なスペースが必要であり、管理コストや労力もかかるでしょう。
一方、電子領収書は、電子帳簿保存法の要件を満たせば、領収書原本の破棄が認められています。タイムスタンプの付与や適切な検索機能の確保が要件になっており、この要件を満たすと電子データで領収書の保存が可能です。
電子領収書はクラウドストレージや専用の電子保存システムで保管するため、災害時のリスク軽減ができ、アクセスの利便性も向上します。
紙の領収書はファイルキャビネットや倉庫に保管するため、物理的な損傷や紛失のリスクが伴う一方、電子領収書ではバックアップやセキュリティ対策が施されるため、データの保全性が高まります。
電子領収書のメリット
電子領収書の導入には、多くのメリットがあります。ここでは、発行側と受領側のそれぞれのメリット、環境への貢献について詳しく解説します。
発行側のメリット
電子領収書を発行する企業側のメリットは、以下のとおりです。
- 印紙税の節税効果
- 領収書作成業務の自動化による業務効率化
- ペーパーレス化による紙や印刷・郵送コストの削減効果
一つずつ具体的に解説します。
印紙税の節税効果
紙の領収書に貼付する印紙税は、電子領収書では不要となるため、節税効果が期待できます。年間の発行枚数に応じて大きな節税額が見込めます。
たとえば、年間に10,000枚の領収書を発行する企業の場合、1枚あたり最低でも200円の印紙税が不要となるため、年間で200万円の節税が可能です。
領収書作成業務の自動化による業務効率化
領収書作成業務の自動化により、業務を効率化できるメリットもあります。電子領収書の発行システムを導入すると手作業による入力ミスが減少し、迅速かつ正確な領収書発行が可能です。
ペーパーレス化による紙や印刷・郵送コストの削減効果
電子領収書を導入すると、ペーパーレス化により、紙や印刷・郵送コストが削減できる点もメリットです。たとえば、印刷や郵送のコストが削減されると、年間数十万円から数百万円のコスト削減も期待できます。
受領側のメリット
電子領収書を受領する側のメリットは、以下のとおりです。
- 電子データによる保管スペースの削減と管理コストの低減
- 電子データの検索性向上による業務効率化
- 経理業務の自動化・省力化による決算の早期化
一つずつ解説します。
電子データによる保管スペースの削減と管理コストの低減
電子領収書のメリットは、電子データで保存できるため物理的な保管スペースが不要となり、管理コストが低減する点です。
従来の紙の領収書は保管場所を確保する必要があるため、長期間の保管が求められる場合は特に場所の確保が必要です。一方、電子領収書はデジタルデータのため、保管スペースや管理コストの課題を解消できます。
電子データの検索性向上による業務効率化
電子領収書は電子データで保存できるため検索性が向上し、業務を効率化できる点もメリットです。
たとえば、過去の領収書を検索する場合、紙の領収書では探すのに時間がかかります。一方、電子領収書はデータからキーワード検索ができるため、瞬時に該当の領収書を見つけられます。
経理業務の自動化・省力化による決算の早期化
電子領収書には、経理業務の自動化・省力化を進め、決算を早期化できるメリットもあります。
電子領収書のデータを会計ソフトと連携させると自動的に帳簿に反映されるため、手作業の負担が軽減されます。
手作業が減ると決算業務を正確かつスムーズに進められ、早期に決算を終わらせることが可能です。
環境への貢献
電子領収書の導入は、環境問題への貢献にもつながります。紙の製造には多くの木材が必要なため、森林伐採が進みます。
紙の焼却にはCO2が排出され、環境への負荷が大きくなるでしょう。電子領収書を導入するとペーパーレス化できるため、紙の使用量が減少し、紙の製造や焼却に使われるCO2排出量の削減が期待されます。
たとえば、企業全体で年間1万枚の領収書を電子化すると、年間数トンのCO2排出を削減できる可能性があります。電子領収書の導入は企業のCSR活動の一環としても評価されるため、社会的な信用を高める効果も期待できるでしょう。
電子領収書の導入方法
電子領収書を導入するためには、適切な発行システムの選定や法的要件の確認が必要です。
ここでは、電子領収書の導入方法や電子帳簿保存法への対応方法、紙の領収書の電子化の進め方について、詳しく解説します。
電子領収書発行システムを選ぶ
電子領収書の導入には、適切な電子領収書発行システムの選定が重要です。電子領収書発行システムには、クラウド型やオンプレミス型、スマホアプリなど、さまざまなツールがあります。
電子領収書発行システムを選ぶときには、以下のポイントを押さえることが重要です。
- 電子帳簿保存法の要件を満たしているか
- 自社の業務フローに適しているか
- 導入コストと運用コストは予算的に問題ないか
電子帳簿保存法の要件を満たしているかについては、必ず確認すべきポイントです。
また、領収書を発行するタイミングや承認フロー、連携すべき自社のシステムなど、自社の業務フローに適しているかを考慮する必要があります。
システムを選ぶときには、導入コストだけでなく、運用コストやメンテナンスコストも踏まえて選定することも重要です。
電子帳簿保存法の要件を満たす
電子領収書を法的に有効にするためには、電子帳簿保存法の要件を満たす必要があります。
真実性を確保するために、タイムスタンプの付与や訂正・削除履歴の保存が求められます。可視性の確保のためには、検索機能や見読可能装置の備付けが必要です。
こういった電子帳簿保存法の要件を満たすためには、社内体制の整備が不可欠です。
たとえば、電子領収書の管理責任者を配置し、適切な運用を行うためのルールを策定するなど、電子領収書を適切に利用できるよう社内体制を整備しましょう。
紙の領収書の電子化を進める
電子領収書の導入に向けて、紙の領収書の電子化を進める必要があります。スキャナーを使用して高解像度でスキャンすると、簡単に紙の領収書を電子化でき、領収書の信頼性も確保できます。スキャナーの設定で大量の領収書をスキャンすることも可能です。
紙の領収書の電子化には、社内ルールを整備し、電子化した領収書の原本の取り扱いについても明確にする必要があります。たとえば、電子化後の原本の保管期間や、電子データのバックアップ方法などを定めることが求められます。
電子帳簿保存法に対応した紙の領収書のスキャン要件については、こちらで詳しく紹介されています。
電子領収書を運用する際の注意点
電子領収書の運用には、データ管理や業務フローの見直しなどが重要です。ここでは、運用時の注意点について詳しく解説します。
電子領収書のデータ管理方法を確認する
まず、電子領収書のデータ管理方法を確認しましょう。クラウドストレージや自社サーバーなど、適切な保存場所を選び、定期的なバックアップを行ってデータの安全性を確保する必要があります。
データを保存するときには保存形式をPDFやCSVに統一しておくと、将来的なデータ移行や閲覧時に互換性を確保できます。
データの暗号化やアクセス権限の設定を行い、不正なアクセスやデータの改ざん防止への取り組みも重要です。
電子領収書と紙の領収書の並行運用に注意する
電子領収書と紙の領収書を並行して運用する場合、二重管理のリスクがあるため注意しましょう。二重管理を避けるためには社内ルールの整備が必要です。
たとえば、電子領収書の発行を原則とし、例外的に紙の領収書を発行する場合の手続きを明確にすると、混乱を防げます。
紙の領収書の電子化漏れを防ぐための対策も重要です。
たとえば、全ての紙の領収書をスキャンして電子データとして保存するルールを設けると、領収書の電子化を徹底できます。また、並行運用における業務効率化の工夫として、電子領収書と紙の領収書のデータを一元管理するシステムを導入することも有効です。
電子領収書導入後は業務フローを見直す
電子領収書の導入後は、業務フローの見直しを行うことも重要です。導入前後の業務フローを比較し、新たな業務フローを提案すると、さらなる効率化を図ることができます。
たとえば、紙の領収書の発行や保管、管理にかかる時間やコストを分析し、電子領収書の導入によってどの程度削減できたかを評価します。
その上で、領収書の発行から経理システムへの自動連携、監査対応までの一連の業務をデジタル化するなど、電子領収書を活用した新たな業務フローを構築すると、さらに業務の効率化が図れるでしょう。
まとめ
電子領収書の導入は、企業の業務効率化やコスト削減に効果的です。電子領収書には、印紙税の節税効果や領収書作成業務の自動化、保管スペースや管理コストの削減など、多くのメリットがあります。
また、ペーパーレス化によって環境に貢献し、企業の社会的な信用を高める効果も期待できます。電子領収書発行システムの選定や法的要件の確認、業務フローの見直しを通じて、スムーズに電子領収書を導入しましょう。