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税務会計とは? 財務会計・管理会計との違いと重要ポイント

税務会計とは? 財務会計・管理会計との違いと重要ポイント

税務会計は、すべての企業が公平に納税するために定められた会計処理で、税法に基づいて行われます。

この記事では他の会計との目的や基準の違い、税務会計の業務内容と、税金の算出方法などを説明します。会計処理を行う上での注意点も紹介しているので、ぜひ最後までお読みください。


この記事の監修者
京浜税理士法人 横浜事務所   

税務会計とは?

税務会計は主に非上場の中小企業が法人税法や所得税法に基づいて行う、会計処理です。すべての企業が、公平に課税されるべき金額を納税することを目的とします。

ここでは税務会計の主な対象科目、会計処理の重要性などを紹介します。

税務会計の定義と目的

税務会計とは法人税法や所得税法に基づいて、企業が課税されるべき税額を算出することを目的とした会計処理です。

主に、非上場の中小企業や個人事業主が行います。税務会計を経て算出した法人税などの税額は、国や地方自治体に報告しなければなりません。

税務会計の主な対象税目

税務会計の対象となる税目は、法人税、所得税、消費税です。それぞれの税目の具体的な内容について以下で説明します。

税目

内容

法人税

法人活動で得た所得にかかる税金

所得税

個人の所得にかかる税金

消費税

法人や個人が商品やサービスの販売等の事業活動を行うことによりかかる税金

法人税は、企業が得た利益に対して課される税金で、所得税は個人に対して課される税金です。個人事業主などは、法人税の代わりに事業活動で得た利益に対し、所得税が課せられます。消費税は、事業活動で発生した取引に基づいて、課税されます。

税務会計の重要性

税務会計は、すべての企業・個人事業主が公平に税金を納めるために重要なものです。

法人所得や事業所得を得ている場合には納税の義務がありますが、税金を支払わず滞納したり、誤った金額で納税していたりすると、財産を差し押さえられ事業が立ちいかなくなってしまう可能性があります。会計処理は法人税法や所得税法をもとに行い、正しく確定申告をしなければなりません。

また、ステークホルダーからの信頼を得るためにも欠かせません。ステークホルダーとは、行政機関や金融機関、株主などの企業の利害関係者のことで、企業の活動によって直接的または間接的に影響を受ける組織・人のことを言います。

法令を遵守して正確に会計処理を行い、企業の財務状況の透明性を高めることで、ステークホルダーからの融資などもスムーズに受けられるようになります。


税務会計と他の会計との違い

税務会計と似たものに、「財務会計」や「管理会計」「企業会計」といったものがあります。これらと税務会計は、実施の目的や基準、開示先などの違いがあります。

ここでは、それぞれの違いについて詳しく見ていきましょう。

財務会計との違い

財務会計とは、すべての企業に義務付けられている会計処理です。株主や投資家など企業の利害関係者へ、財務状況を報告するために行います。財務会計と税務会計は、目的や適用される基準などに違いがあります。それぞれの違いは以下の表の通りです。

 

財務会計

税務会計

目的

投資家などの利害関係者への情報提供

納税すべき金額の算出

基準

企業会計基準

法人税法・所得税法

開示先

投資家や債権者など企業の利害関係者

税務署、地方自治体

税務会計は財務会計の一部ですが、会計処理を行う目的が異なることから、それぞれで計上された収益や費用が必ず一致するとは限らないことも知っておきましょう。

管理会計との違い

管理会計とは、社内向けの会計報告のことで、経営者が財務状況を把握して経営判断をするためのものです。管理会計と税務会計も、以下のような違いがあります。

 

管理会計

税務会計

目的

経営者の意思決定

納税すべき金額の算出

基準

なし(社内の基準を適用)

法人税法・所得税法

開示先

経営者・管理者

税務署・地方自治体

管理会計は外部へ開示されることはありませんが、企業をマネジメントするうえで重要な判断材料となり、企業成長に欠かせません。

企業会計との関係性

企業会計は、企業活動に伴うお金の流れを記録・集計・報告するものです。つまり企業会計は財務会計や税務会計、管理会計など、企業が行う会計処理の総称のことです。税務会計は企業会計の一部という関係性があります。


税務会計の業務内容

税務会計業務では、次のようなことに取り組む必要があります。

  • 帳簿付け
  • 税金の計算
  • 税務申告書の作成

それぞれの内容について詳しく解説します。

帳簿付け

帳簿付けでは、仕訳帳と総勘定元帳などを使用します。領収書や請求書、仕入伝票などを確認しながら日々の取引内容を勘定科目ごとに整理して、記入します。

この作業は取引が発生するごとに行うため、ほぼ毎日行う作業です。日付・取引先・取引の内容などを明確に記載しましょう。

税金の計算

税金計算には益金と損金の計算、課税所得の計算など様々な計算をします。これは、財務会計と税務会計で生じた差異を調節し、正確な税金額を算出するために欠かせない計算です。

詳しい算出方法は次の章で詳しく説明します。

税務申告書の作成

用意しておいた必要書類を見ながら、税務報告書を作成します。主な必要書類は以下の通りです。

  • 貸借対照表・損益計算書・勘定科目内訳明細書
  • 法人事業概況説明書

税務申告書作成に使用するのは貸借対照表と損益計算書です。勘定科目内訳明細書、法人事業概況説明書は税務申告書に添付して税務署に提出します。貸借対照表や損益計算書の内容、法人の事業の状況について詳しく説明するための書類です。

それぞれの書類で税務申告に使用する項目は以下の通りです。

貸借対照表

【負債の部】

  • 納税充当金

 

【純資産の部】

  • 資本金
  • 繰越利益剰余金

損益計算書

  • 売上高
  • 売上原価
  • 販売費及び一般管理費
  • 営業外収益
  • 営業外費用
  • 特別利益
  • 特別損失
  • 法人税等

これらを税務申告の別表に転記しながら作成します。税務報告書の詳しい作成方法は、国税庁のホームページから確認できます。

令和5年版 法人税のあらましと申告の手引(出典:国税庁)


税務会計の算出方法

ここでは、税務会計を行う際の方法を順に解説します。

財務諸表と税務諸表のズレを修正

税務会計の算出ではまず、財務諸表と税務諸表のズレを修正するところから始めます。この計算は、財務諸表の作成義務があるまたは、作成している企業が対象です。

この計算には、ズレを修復するために益金・損金という項目を使用します。自社で発生した収益は益金に、費用は損金に計上し直し、財務諸表上の利益を法人税の課税所得に換算していきます。それぞれ以下の取引があった際に、益金、損金として計上しましょう。

益金

  • 資産の販売による収益
  • 資産の有償または無償譲渡
  • 役務の無償譲渡
  • 無償の資産の譲受け

損金

 

  • 法人事業税
  • 地価税
  • 酒税
  • 利子税
  • 事業所税
  • 固定資産税
  • 不動産取得税
  • 自動車税
  • ゴルフ場利用税
  • 軽油引取税

なお、法人税や法人住民税は、税法上損金として計上できません。誤って処理しないよう、注意してください。

課税所得の計算

課税所得とは、所得税を算出するための金額です。この所得税額をもとに確定申告を行います。課税所得の計算方法は以下の通りです。

  • 1年間の合計所得-仕入にかかった費用や経費= 所得金額
  • 所得金額-社会保険や生命保険などの所得控除=課税所得
  • 課税所得×税率=所得税

税効果会計の適用

税効果会計は、会計上の利益と課税所得の差異を調整し、適切な期間分配を行うための会計処理です。この手法の基本的な考え方は、会計上の資産・負債の額と税務上の資産・負債の額の差異を一時差異として計上し、それに対して将来の税金軽減効果や追加納税の可能性を見積もり、繰延税金資産または繰延税金負債として計上することです。

具体的な計算は以下の通りに行います。

  1. 収益・費用と益金・損金のそれぞれの差異を算出する
  2. 1で算出した金額から繰延税金資産または繰延税金純負債を算出する
  3. 2で算出した繰延税金資産または繰延税金負債の差額を、損益計算書に計上する

法定実効税率の算出方法は以下の通りです。

法定実効税率=(法人税率×(1+地方法人税率+法人住民税率)+法人事業税率+特別法人事業税率)÷(1+法人事業税率+特別法人事業税率)

繰延税金資産については、将来の回収可能性を慎重に検討し、税率変更が行われた場合は、その変更内容を速やかに反映させましょう。


税務会計の注意点

税務会計をする際、注意すべきことがあります。

ここでは、3つの注意点について詳しく解説します。

税制改正へ対応する

税制改正は、毎年行われます。そして改正内容が、自社にどのような影響を与えるかを理解する必要があります。

この改正を正確に把握するために、国税庁や税理士会のウェブサイト、専門誌などから最新の税制情報を定期的に収集しましょう。

適切な経費処理を行う

適切な経費処理は、企業の税務会計において重要な課題です。業務に関連する経費を漏れなく計上し、固定資産や繰延資産の計上基準も正しく理解して処理することが大切です。

正確性と効率性を向上させる

税務会計では、内容の正確さが問われます。しかし手作業による税務会計は多大な時間と手間がかかることから、人為的ミスも起こりやすいものです。

正確かつ効率よく税務会計を行いたいなら、会計システムの導入も検討しましょう。効率的な帳簿管理が可能になるうえ、税制改正にも迅速に対応できます。

ただし会計システムを導入した後も、定期的に担当者が確認することも大切です。また、企業の重要な情報を取り扱うため、セキュリティ対策を徹底し、自社の規模や業種に適した会計ソフトを選択しましょう。


税務会計の重要性を理解して実務に活かそう

税務会計は、法人税法や所得税法に基づいて税額を算出します。これは、すべての企業が公平に税金を納めるために重要です。

税務会計は複雑で、1つミスがあるとその修正に膨大な時間が必要です。会計システムを導入するなど、工夫をして対処してください。正確で信頼できる税務会計を行いましょう。


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監修者プロフィール

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宮澤 明宏

京浜税理士法人 横浜事務所

横浜市青葉区を拠点として、中小規模法人や個人事業主のお客様を中心に、税務顧問サービス及び経営コンサルティングサービスを提供。

月次決算制度の導入、資金繰りの明確化を切り口に、創業3年以内の黒字化を目指し経営を安定化させるための経営管理の手法について、伴走型支援で行っている。

創業時からしっかりとした経営管理を行い、スピード感を持って会社を成長させていきたい経営者に向けて業務を行う。

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