会計システム移行の完全ガイド|移行タイミングと手順を解説
会計システムを移行する時期は年度末の決算後や、自社の閑散期が適しています。移行の際は、実際に使用する社員と運用のプレテストを行ったり、移行後の社内フォローを実施したりしましょう。
会計システムの移行を段階的に進めることで、業務効率を落とすことなく、スムーズに導入が可能です。
なお、会計システムについては、以下の記事で分かりやすく説明しています。
会計システムの移行時期とメリット
会計システムの移行は、企業の成長や変化に伴い、行う必要があります。ここでは、会計システムを移行するきっかけと、メリットを説明します。
組織の変化が移行のきっかけとなる
会計システムの移行は多くの場合、組織の成長や変化がきっかけです。例えば、事業拡大による取引先の増加、新規事業の開始などが挙げられます。
取引が増加することによりデータ処理能力の限界に達したり、新たな事業や取引形態に対応できなくなったりします。そのため、組織変化が起きた際は、会計システムを移行するのに適したタイミングといえるでしょう。
移行によるメリット
新しい会計システムを導入することで、業務を効率化し、的確な経営判断ができるようになります。具体的には、データ入力を自動化することで、ヒューマンエラーを削減したり、リアルタイムで財務状況を把握できたりします。
さらに、電子帳簿保存法やインボイス制度などの法改正にも対応が可能です。これまでは法改正の度に企業ごとに対応しなければなりませんでしたが、クラウドシステムへ移行することで、法改正にも自動で対応できます。
会計システム移行の最適なタイミング
会計システムを移行する際は、年度末の決算後や、比較的業務が落ち着いているタイミングが適しています。ここでは、会計システム移行に最適なタイミングを紹介します。
会計年度が変わる時期
会計システムの移行は、年度末決算後から新年度開始前が最適な時期です。この時期を選ぶことで、前年度のデータを確定させた上で新システムに移行でき、新年度からスムーズに運用を開始できます。
また、決算期の繁忙期を避けることで、スタッフへの負担を軽減できるメリットもあります。
例えば、3月決算の企業であれば、4月から6月頃にかけての期間が移行に適しています。この時期は、前年度の決算作業が一段落し、新年度の業務がまだ本格化していないため、システム移行に集中できる環境が整っているためです。
ただし、移行作業自体には一定の期間が必要なため、システム移行のための人員配置が必要です。
繁忙期を避けた時期
繁忙期以外で、比較的余裕のある時期も良いでしょう。例えば、小売業であれば閑散期である1月〜5月、製造業であれば1月下旬から2月上旬頃を選ぶといったイメージです。
反対に長期的な視点から見て、大規模な組織改編の前や、新規事業立ち上げの準備段階、法改正があった際などは、移行に適したタイミングです。
会計システム移行の具体的な方法と手順
会計システムの移行には、現行システムの問題点の洗い出しから導入前のシステム運用まで、さまざまなステップがあります。
会計システムの移行をスムーズにするための手順を詳しく説明しますので、システム移行の際の参考にしてください。
1.移行するシステムの選定
まずは現行システムの課題を明確化し、新システムに求める機能を把握しましょう。
例えば、企業規模が拡大し、上場する際には連結決算機能の有無、クラウド化による関係法規への対応、販売管理システムなどとの連携など、具体的に決定しましょう。
2.新システムへのデータ移行の計画立案・実行
続いて、導入を決めた新システムにデータを移行する準備を進めます。データの移行は、会計システム移行の中でも特に重要な作業です。
データ移行の手順は以下の通りです。
- 旧システムで不要なデータを削除し、データ形式を統一する
- サンプルデータで移行テストを行う
- 問題点を洗い出し、適宜修正する
- 本格的に新システムにデータを移行する
本番の移行を実行する際は、直近3年分のデータから順次移行するとスムーズでしょう。
3.新旧システムの並行運用
移行リスク軽減のためには、一定期間の新旧システム並行運用と段階的な移行が効果的です。通常、最初の1〜3ヶ月間を並行運用期間として両システムで同じ取引を処理し、機能に過不足がないか確認します。
この期間中、社員トレーニングも並行して行いましょう。新システムの操作に慣れることで、本格運用への移行がスムーズになります。
並行運用期間を設けることで、スタッフの不安を軽減し、新システムに問題があった場合は早期に発見・修正ができます。
会計システム移行時の重要な注意点
会計システム移行時は、ユーザーの受け入れテストの実施や、業務を中断させないための対策が必要です。
ここではシステム移行時の注意点とその対策方法をご紹介します。自社でシステムを移行する際の参考にしてください。
データ整合性確保のために検証を実施する
会計システムの移行時には、移行前後のデータを突合し、整合性が取れているか注意しましょう。具体的には、総勘定元帳の合計額や貸借対照表の貸方・借方が新旧システムで一致しているか確認が必要です。
もし差異があった場合は、完全に移行処理が行えていないことになります。そのため、どのデータが移行できていないのかを特定し、新旧システムの合計を一致させましょう。
ユーザー受け入れテストを実施する
新システム導入の際は、ユーザー受け入れテストを行いましょう。
ユーザー受け入れテストとは、実際に使用する従業員に機能と操作性を確認してもらい、実際の業務ニーズに合っているかをチェックするものです。具体的には、以下のように進めます。
- 実際の業務に基づいたテストケースを設計
- 各部門の代表者がテストを実行し、操作性、処理速度、出力結果などに問題がないか確認
- テスト後、実施者からフィードバックを収集し、業務ニーズに適しているか確認
- 必要に応じて機能を追加または削除するなど、業務に合ったシステムへ改善する
移行に伴う業務中断のリスク軽減策をとる
会計システムの移行は、日常業務に影響を与える可能性があります。そのため、業務中断のリスクを最小限に抑える対策が必要です。
まず、一度にすべてのデータや機能を移行するのではなく、重要度や複雑さに応じて段階的に移行することで、移行にかかる負担を分散できます。
また、移行期間中の業務処理方法について、ガイドラインを策定し、全社員に周知することも有効です。例えば、移行期間中の仕訳入力ルールや、新旧システム間でのデータ同期方法などを明確にしておくと良いでしょう。
こうした対策をしておくことで業務を中断することなく、スムーズに移行できるでしょう。
会計システム移行後のフォローアップと評価
会計システムの移行が完了した後は、移行後のフォローアップと評価を行いましょう。この作業は新システムの効果を最大限に活用するために必要なプロセスです。
これにより、新システムへの投資が適切だったかどうかを確認でき、今後の改善点を発見できます。効果を測る具体的な指標は、次のようなものが考えられます。
- 財務報告書を作成する時間がどれだけ短縮されたか
- 手作業でデータを入力する時間がどれだけ減ったか
- 会計処理での人的ミスがどれだけ減ったか
期待した結果が得られなかった場合は、「会計システムに業務内容に必要な機能を付けられていない」あるいは「不必要な機能が付いている」などが考えられます。
その場合はシステム内容を見直し、ユーザーテストを改めて実施するなどの対応を検討してみましょう。
会計システム移行に関する最新のトレンドと技術
昨今の会計システムは、オンプレミス型からクラウド型への移行や、AIや機械学習を利用した会計システムを利用するなどの傾向があります。
最新の会計システムのトレンドと技術を把握し、自社に最適な会計システムを選択してください。
クラウドのシステムへの移行トレンド
近年では、多くの企業がオンプレミス型の会計システムからクラウド型のシステムへ移行しています。オンプレミス型とは、自社で自由にカスタマイズできる会計システムで、各企業に合った機能を追加できます。
しかし、システムのバージョンアップは手動で行う必要があり、導入にかかる費用も比較的高額です。
反対にクラウド型は、システム側が機能を管理しているため自由度は低めですが、バージョンアップは自動で行ってくれるため、法改正などへの対応もスムーズです。
また、導入費用も比較的低コストで抑えられます。さらに、インターネット環境さえあればアクセス可能なため、リモートワークにも対応しやすくなっています。
AIと機械学習を活用した次世代会計システムへの移行
AIと機械学習技術の進歩により、会計システムの精度はより高くなっています。例えば、請求書の自動読み取りや仕訳の計上など、さまざまな機能の自動化が実現可能になっています。
ただし、AI・機械学習を活用した会計システムへ移行を検討する際は、自社の業務内容と適しているか、考慮しましょう。
成功する会計システム移行を実現しよう
組織の拡大や再編などをきっかけに、会計システムの移行を検討する企業は多いものです。そのときどきに適した会計システムへ移行することで、社内の業務効率も大いに向上するでしょう。
ただし会計システムを変更する際は、不測の事態も起こりやすいものです。年度末の決算後や繁忙期を避けるなど、業務に影響を与えづらい時期に段階的に移行を行いましょう。
本記事の、会計システム移行時の手順を参考に、スムーズ且つ効率的に移行してください。
【関連記事はこちら】