電子請求書システムとは? 機能・メリット・選び方を紹介
近年、法改正やDX推進の流れを背景に、企業にとって電子請求書システムの導入は経理業務改善の重要な課題となりました。
2023年のインボイス制度開始や2024年の電子帳簿保存法改正により、多くの企業が請求書のデジタル化を迫られる状況にあります。
本記事では、電子請求書システムの基礎知識から選定方法、導入時の注意点まで、経営者や経理担当者が知るべき情報を網羅的に解説します。
電子請求書システムの導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
電子請求書システムとは
電子請求書システムは、従来の紙の請求書をデータ化し、作成から送付、保管までの一連の業務をオンラインで完結させるクラウドシステムです。
これまで手作業で行っていた請求書の作成、印刷、郵送、保管といった作業を自動化することで、経理担当者の業務効率化を実現します。
さらに、請求書データをクラウド上で一元管理することで、ペーパーレス化にも貢献できるのが大きな特徴です。
電子請求書システムは、経理業務のDXを推進するための重要なツールとして、今後さらに普及が進むことが予想されています。
電子請求書システムが注目される背景
電子請求書システムが注目を集める背景には、法改正への対応やDX推進などの時代の変化が影響しています。
- インボイス制度への対応
- 電子帳簿保存法への対応
- DXとテレワークの推進
以下では、これらの要因について詳しく説明します。
インボイス制度への対応
2023年10月からインボイス制度が開始され、適格請求書の作成・管理が全ての課税事業者に必須となりました。
適格請求書には、登録番号や税率ごとの消費税額の記載が必要であり、手作業での対応は非常に困難です。しかし、電子請求書システムを活用すれば、これらの必要事項を自動で反映できます。
これにより、法令に準拠した請求書の作成が容易になります。インボイス制度への対応が求められる中、電子請求書システムの導入は有効な解決策です。
電子帳簿保存法への対応
2024年1月からの電子帳簿保存法により、電子データの真実性と可視性の確保が法的要件として義務付けられました。
具体的には、電子取引で受け取った請求書は電子保存が必須となり、改ざん防止やデータ検索機能の実装が求められます。
電子請求書システムは、これらの法的要件に標準で対応しているため、コンプライアンスリスクが軽減します。法令遵守の観点からも、電子請求書システムの導入は避けて通れない課題なのです。
DXとテレワークの推進
テレワーク時代の到来により、経理業務もデジタル化が求められました。クラウドシステムによる請求書のオンライン管理は、テレワーク時代において標準的な方法となっています。
従来の紙ベースの請求書管理では、在宅勤務時の業務継続が困難でした。しかし、電子請求書システムを導入することで、場所を問わない柔軟な働き方と業務効率化の両立が可能になります。
電子請求書システムの主な機能
電子請求書システムには、請求業務の効率化に役立つ機能が搭載されています。
ここでは、「基本機能」と「拡張機能」に分けて解説します。
基本機能
電子請求書システムの基本機能では、請求書のテンプレート作成、自動発行、一括送付までの作業を自動化できます。
取引先情報や請求金額を入力するだけで、必要な記載事項を備えた請求書を自動生成できます。また、電子メールでの一括送信や取引先ごとの送付方法(メール、FAX、郵送など)の設定も可能です。
これらの機能により、経理の業務効率が大幅に向上します。手作業に頼らずシステム化することで、ミスの防止にも効果的です。
拡張機能
拡張機能は、基本機能に比べて、より高度な業務の効率化に寄与します。具体的には、入金消込や督促通知の自動化、会計システムとの連携までの一元管理が可能です。
例えば、銀行口座との連携により入金情報を自動取得し、請求データとの自動消込を行うことで、入金管理業務の省力化につながります。
さらに、未入金の取引先への督促メールの自動送信や会計システムへの仕訳データの連携も実現します。
請求業務に関わる様々な作業を一元管理することで、経理部門の生産性を飛躍的に向上できるでしょう。
電子請求書システム導入の3つのメリット
電子請求書システムを導入することで、どのようなメリットが得られるのでしょうか。ここでは、3つのメリットについて解説します。
- 業務効率化
- コンプライアンス対応
- 経営管理の向上
それぞれ見ていきましょう。
1. 業務効率化
電子請求書システムの最大のメリットは、請求業務の大幅な効率化です。
従来の手作業と比べると、システムを導入することにより、請求書の作成から送付、保管までの一連の工数を大幅に削減できます。
また、印刷や封入、郵送作業が不要になるだけでなく、請求データの入力作業も自動化されるため、作業時間を大幅に短縮します。
請求書を一気通貫で電子化することで、属人化していた業務を標準化することも可能です。これにより、誰でも同じ品質の仕事ができる体制を整えられます。
2. コンプライアンス対応
近年では、インボイス制度や電子帳簿保存法など、コンプライアンスへの対応が重要視されています。
電子請求書システムを利用すると、これらの変化にも自動的に対応してくれます。システムベンダーが法改正に合わせてアップデートを行うため、常に最新の法令要件に準拠した運用が可能です。
また、タイムスタンプの付与や改ざん防止機能により、電子データの真実性を担保できるのもポイントです。これにより、法的要件を満たすための煩雑な作業から解放され、安心してシステムを利用できます。
3. 経営管理の向上
電子請求書システムの導入は、意思決定の支援にも役立ちます。
経営者や管理者は、請求書の発行状況や入金状況をリアルタイムでモニタリング可能です。請求書データをデジタルで一元管理することで、債権管理の効率化とキャッシュフロー改善に直結します。
また、請求データを分析することで、取引先ごとの傾向や売上予測などの経営判断に役立つ情報も得られます。
電子請求書システム選びのポイント
魅力的な電子請求書システムですが、実際の選定には注意が必要です。
- 自社の規模に合ったシステムを選定する
- 必要な機能を明確にする
- 運用面の実現可能性を検証する
各注意点について詳しく説明します。ぜひ参考にして、最適なシステム選びに役立ててください。
自社の規模に合ったシステムを選定する
システムを選ぶ際は、月間の請求書発行枚数と取引先数に基づいて最適なプランを判断する必要があります。
電子請求書システムは、小規模企業向けの基本プランから、大企業向けの上位プランまで、段階的な料金体系が用意されているのが一般的です。
また、将来の取引拡大を見据えて、スケーラビリティのあるシステムを選ぶことも重要になります。事業の成長に合わせて、柔軟に機能拡張できるシステムが理想的です。
必要な機能を明確にする
必要な機能を明確にすることで、自社に最適なシステム選びが可能になります。現状の請求業務における課題を洗い出し、その解決に必要不可欠な機能を優先的に選定します。
基本的な請求書発行機能だけでなく、入金消込や督促機能などの追加機能の必要性についても検討しましょう。
また、既存の会計システムやERPとの連携可否も、重要な判断基準の一つです。システム間のデータ連携により、さらなる業務効率化が期待できます。
運用面の実現可能性を検証する
システム提供元が信頼できる企業なのか、確認することも大切です。
具体的には、ベンダーのサポート体制と、ユーザー企業の評価実績を確認しましょう。導入実績の多いベンダーは、業界特有の課題やニーズへの対応力が高いと考えられます。
また、電話やチャットによるサポート対応の充実度も、円滑な運用のための重要な判断材料です。トラブル発生時にスムーズに解決できるサポート体制があるかどうかを確認しておきましょう。
電子請求書システム導入の注意点
電子請求書システムを導入する際には、いくつかの注意点があります。
- 取引先との調整を事前に行う
- 社内の運用ルールを整備する
- 具体的な移行計画を立てる
- 適切なコスト計画を策定する
円滑なシステム移行と定着のために、これらに注意しましょう。各注意点を詳しく解説します。
取引先との調整を事前に行う
事前に電子請求書システムの移行調整を行わないと、取引先に混乱を招き、関係が悪化してしまう可能性があります。
システム導入の3ヶ月前までには、取引先へ移行の通知を送付し、運用方法について合意を得ておきましょう。
電子請求書への切り替えに抵抗がある取引先に対しては、従来の紙での対応も並行して準備するなど、柔軟な対応が求められます。取引先ごとの送付方法やルールを明確にすることが大切です。
社内の運用ルールを整備する
運用ルールを整備することで、導入時のミスの防止やスムーズな運用が期待できます。
経理部門と営業部門の役割分担を明確にし、請求書の発行から入金確認までの業務フローを見直す必要があります。新しいシステムに適した形に業務プロセスを見直し、承認フローを再設計しましょう。
また、担当者への教育研修も欠かせません。周到な準備をしておくことで、問題が発生したときも迅速に対応ができます。
具体的な移行計画を立てる
電子請求書システムへの移行は、段階的に進めることが賢明です。
まずは一部の取引先から試験的に開始し、3ヶ月程度のテスト期間を設けます。初期の運用状況を確認しながら、問題点の洗い出しと改善を繰り返すことが大切です。
全面移行までのスケジュールは、取引先の対応状況を見ながら柔軟に調整していきます。無理のないペースで、着実にシステム移行を進めていきましょう。
適切なコスト計画を策定する
電子請求書システムの導入には、一定のコストがかかります。適切な投資判断を行うために、コスト計画の策定が欠かせません。
システム投資の妥当性は、人件費削減効果と業務効率化による定量的なROIに基づいて判断する必要があります。初期導入費用だけでなく、月額利用料やオプション機能の費用も含めた総コストを算出しましょう。
導入効果の試算には、工数削減効果に加えて、ペーパーレス化による経費削減効果も織り込むことが重要です。費用対効果を精査し、自社にとって最適な投資規模を見極めましょう。
電子請求書システムを導入しよう!
電子請求書システムの導入は、経理業務の効率化と生産性向上に大きく貢献します。近年の法改正への対応やDXの推進にも欠かせないツールです。
ただし、導入プロジェクトを成功させるためには、事前準備が欠かせません。現状分析から運用定着まで、半年から1年の期間を設定し、計画的に進める必要があります。
本記事で紹介した注意点やシステム選びのポイントを参考に、自社に最適な電子請求書システムを導入してください。全社一丸となって、電子請求書システムの導入に取り組みましょう。