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財務諸表と決算書の違いとは? 基本的な違いや適切な使い分けなど解説

財務諸表と決算書の違いとは? 基本的な違いや適切な使い分けなど解説

財務諸表と決算書はどちらも会計に関する書類です。しかし、これらが決算や経理に関係していると知っていても、経営者の中にはこれらの細かい違いを理解できていない方も多いのではないでしょうか。

本記事では、財務諸表と決算書の基本的な違いや適切な使い分けについて紹介します。経理や会計についてもっと理解を深めたいと思っている方はぜひ最後までお読みください。


この記事の監修者
  税理士・米国税理士・認定心理士 

財務諸表と決算書の基本的な違い

財務諸表と決算書は経営財務の健全性を示すために効果的なツールです。では、両者にはどのような違いがあるのでしょうか。以下の図をご覧ください。

一般的に、決算書は財務諸表と計算書類を合わせた書類の総称として使われます。決算書は決算に関する広義な情報をより要約したものです。

図のように、財務諸表と決算書には、法的根拠や作成義務のある企業、構成書類の範囲などにおいて違いがあります。

これらを理解することで、今まで以上に書類の活用がしやすくなるでしょう。

ここからは、それぞれの違いについて詳しく見ていきます。

定義と法的根拠の違い

財務諸表と決算書の基本的な違いは、その定義と法的根拠です。財務諸表は金融商品取引法に基づいて作成されますが、決算書は、財務諸表に加え会社法に基づいて作成される書類も含みます。

この法的根拠の違いにより、財務諸表はより詳細な情報開示が求められます。具体的には、企業の財政状態や経営成績についての説明です。一方、決算書は基本的な財務状況の報告に重点が置かれています。

つまり、財務諸表はより広範な利害関係者に向けた詳細な情報開示を行うものであり、決算書は会社の基本的な財務状況を報告するための書類と言えるでしょう。

作成義務のある企業の違い

財務諸表と決算書では、作成義務のある企業の範囲が異なります。決算書の中でも、財務諸表は主に上場企業などの金融商品取引法の適用を受ける企業のみが作成する義務を負います。しかし、決算書は全ての株式会社が作成しなければなりません。

中小企業の場合は、通常会社法に基づく決算書のみを作成します。一方、上場企業は金融商品取引法に基づく財務諸表を作成し、それと同時に、会社法に基づく決算書も作成する必要があるのです。

このように、企業の規模や上場状況によって、作成すべき書類が異なることを理解しておきましょう。


構成要素で比較する財務諸表と決算書

財務諸表と決算書を構成する書類にも違いがあります。これらの違いを理解することで、それぞれの書類にどのような情報が必要なのかより深く理解することができるでしょう。

それでは、財務諸表と決算書の構成要素について、共通点と相違点を詳しく解説します。適切に使い分けをするためにも、ぜひご覧ください。

共通要素

財務諸表と決算書には、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書などの共通要素があります。

貸借対照表は、企業の資産、負債、純資産の状況を示す書類です。この書類を見ることで、企業がどれだけの資産を持ち、どれだけの負債があるかを細かく把握することができます。損益計算書は、企業の収益と費用、その結果としての利益を示しており、株主資本等変動計算書は企業の純資産の変動状況を記した文書です。

これらにより、企業の基本的な財政状態と経営成績を把握することができます。経営者や企業の利害関係者の意思決定に関わる重要な指標です。

財務諸表・計算書類特有の書類

決算書を構成する財務諸表・計算書類には、それぞれ特有の書類があります。財務諸表はキャッシュ・フロー計算書、計算書類は個別注記表です。

キャッシュ・フロー計算書は、企業の現金の流れを示す書類です。この計算書では、営業活動、投資活動、財務活動の3つの区分で現金の増減が表示されています。

一方、計算書類に含まれる個別注記表は、企業の会計方針や重要な会計上の見積もり、その他の注記事項が詳細に記載されています。これらの特有の要素により、財務諸表と計算書類はそれぞれ異なる角度から企業分析することを可能にしているのです。


開示目的と利用者から見る財務諸表と決算書の違い

財務諸表と決算書は、その開示目的や主な利用者において異なる特徴があります。これらの違いを理解することで、それぞれの書類の役割やニーズに応じた適切な活用方法が見えてくるでしょう。

ここでは、両者の公開目的や役割について紹介します。経営者や経理の方はぜひ業務に役立ててください。

財務諸表は投資家向け情報開示の特徴をもつ

財務諸表の目的は、主に一般投資家向けに幅広い財務情報を開示することです。金融商品取引法に基づいて作成されるため、投資判断に必要な詳細かつ包括的な情報を提供することが求められます。

具体的には、企業の財政状態、経営成績、キャッシュ・フローの状況などの様々なデータが含まれています。これらの情報により、投資家は企業の価値を適切に評価し、投資リスクを判断することができるようになるのです。

財務諸表を通じて、投資家との信頼関係を構築できれば、資本市場における評価を高められるでしょう。

決算書は株主・債権者向け情報提供の特徴をもつ

決算書は、主に株主や債権者向けに基本的な財務情報を提供することを目的としています。会社法に基づいて作成されるため、株主総会での承認や債権者への報告に必要な基本的な財務状況を示すことに重点が置かれているのです。

決算書には、貸借対照表や損益計算書など、企業の財政状態と経営成績が含まれます。これらは、株主が経営者の受託責任を評価したり、債権者が企業の返済能力を判断したりする際の有益な情報です。

適切に決算書を作成し、株主や債権者に効果的な情報提供を行うことで、資金調達の円滑化を進めることができます。


監査要件と情報開示方法の違い

財務諸表と決算書、その監査要件と情報開示方法においても違いがあり、各書類の信頼性や情報へのアクセス性に直接影響を与えています。

適切な監査と効果的な情報開示は、企業の透明性を高め、利害関係者との信頼関係を構築する上で重要です。以下では、財務諸表と決算書の監査要件と情報開示方法の違いについて解説します。

財務諸表と決算書の監査要件の比較

財務諸表と決算書では、その監査の厳しさに違いがあります。財務諸表は、原則として公認会計士による厳格な監査が必要です。これは、金融商品取引法に基づく要求であり、投資家保護の観点から高い信頼性が求められています。

一方、決算書は会社法に基づいて作成されるため、その監査要件は企業の規模や形態によって異なります。大会社や公開会社などは会計監査人による監査が必要ですが、中小企業の場合は監査役監査で足りる場合があるのです。

この監査要件の違いにより、財務諸表はより高い信頼性と客観性が確保されています。

開示方法と情報アクセスの違い

財務諸表と決算書は、開示される範囲情報へのアクセス方法にも違いがあります。財務諸表は、EDINETなどの電子開示システムを通じて広く一般に公開されます。これにより、誰でも簡単にアクセスすることができるのです。

一方、決算書は主に株主総会での承認後に備置きされ、株主や債権者などの特定の関係者が閲覧できるようになります。ただし、中小企業の場合、決算書の一般公開は義務付けられていません。

財務諸表のように広く公開される情報は、市場の透明性を高めます。一方、決算書のように限定的な開示は、特定の利害関係者との緊密なコミュニケーションを可能にするでしょう。


中小企業における財務諸表と決算書の違い

中小企業における財務諸表と決算書の取り扱いは、大企業とは異なる面があります。

中小企業の経営者や経理担当者は、これらの違いを正しく理解し、自社の財務状況の適切な把握・報告が必要です。

以下では、中小企業における財務諸表と決算書の違いについて詳しく解説しますので、ぜひ書類作成に役立ててください。

中小企業の財務報告実務における相違点

中小企業の財務報告実務では、主に決算書のみが作成され、財務諸表の作成は一般的ではありません。これは、中小企業が会社法に基づく報告義務のみを負うことが多いためです。

このため、中小企業の財務情報は主に決算書を通じて把握され、財務諸表と比較すると、情報の詳細度は限定的になる場合があります。

このような状況下で、中小企業の経営者や経理担当者は、限られた情報の中で自社の財務状況を正確に把握し、適切な経営判断を行うスキルが求められるでしょう。

経営分析と外部関係者への活用の違い

中小企業では、決算書が主な経営分析ツールおよび金融機関等への提出書類となります。

決算書のみで財務分析を行うため、キャッシュ・フローの詳細な把握など、一部の分析が制限される可能性があります。そのため中小企業の経営者は、売上高や利益率の推移、資産の効率的な活用状況、負債の返済能力などを決算書の数値から読み取り、経営判断に活かす必要があるでしょう。

また、金融機関への融資申請や取引先との信用取引においても、これらの決算書を効果的に活用することが重要です。


財務諸表と決算書の違いを踏まえた効果的な活用法

財務諸表と決算書の違いを正しく理解することによって、より効果的な経営判断や情報開示ができるようになります。

ここでは、企業規模に応じた適切な使い分けと、両者の補完的活用のメリットについて詳しく解説します。これらの知識を活かすことで、より戦略的な財務管理が可能となるでしょう。

企業規模に応じた適切な使い分け

企業は自社の規模や状況に応じて、財務諸表と決算書を適切に使い分ける必要があります。中小企業は主に決算書を中心に財務管理を行い、成長に伴い財務諸表の作成も視野に入れるなど、段階的なアプローチが効果的です。

例えば、小規模な企業では、会社法に基づく決算書の作成から始め、経営管理や金融機関とのコミュニケーションに活用します。企業規模が拡大するにつれて、より詳細な財務情報の開示の準備を行いましょう。

上場を目指す企業や大規模な企業グループでは、金融商品取引法に基づく財務諸表の作成が必要です。そのため、公認会計士による監査などのより高度な財務管理体制の構築が求められます。

両者の補完的活用のメリット

財務諸表と決算書を補完的に活用することで、より包括的で正確な財務分析が可能になります。

例えば、決算書の基本情報と財務諸表のキャッシュ・フロー情報を組み合わせることで、より深く経営分析ができるようになるのです。決算書から得られる収益性や安全性の指標に、キャッシュ・フロー計算書から得られる資金繰りの情報を加えることで、企業の短期的な支払能力や長期的な成長可能性をより正確に評価できます。

さらに、状況に応じた柔軟な対応が可能となるでしょう。投資家向けには財務諸表を中心とした詳細な情報開示を行い、取引先や金融機関向けには決算書を中心としたコミュニケーションを行うなど、両者の役割を活かすことが大切です。


財務諸表と決算書の違いを理解して経営に活かそう

財務諸表と決算書には、定義や法的根拠、開示目的などにおいて違いがあります。
経営者は両者の特徴を活かした財務戦略を立案し、企業規模や状況に応じて使い分けることが重要です。これにより、投資家・株主とのコミュニケーション改善や、より深い経営分析が可能となります。

持続可能な企業経営の実現に向けて、この知識を積極的に活用しましょう。適切な書類作成や経営判断を行うために、本記事の内容をぜひ覚えていてください。


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監修者プロフィール

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竹中 啓倫

税理士・米国税理士・認定心理士

上場会社の経理部門で個別決算を中心とした決算業務に従事する傍ら、竹中啓倫税理士事務所を主宰する。
税理士事務所では、所得税・法人税を中心に申告業務を行っている一方で、外国税務に関するセミナー講師を行っている。
心理カウンセラーとして、不安を抱える人々に対して寄り添って、心の不安に答えている。
税理士会の会務では、名古屋税理士協同組合理事を務める。

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