電子帳簿保存法の概要 (その2)
電子帳簿保存法では、国税関係帳簿書類を電子データで保存することを特例として認めています。
電子データを保存することはスキャナ保存と表現されますが、スキャナ保存は要件を満たしてはじめて認められます。
法律改正後、書類のスキャナ保存で求められる要件は、大別すると3点あり、「真実性の確保」「可視性の確保」「税務署長の承認」です。
本文では、上記の各要件について詳細を記載しており、書類を電子データとして保存が可能かの判断に活用できます。
国税関係帳簿書類の保存方法
所得税法や法人税法等では、国税関係帳簿書類を原則として書面(紙)の状態で保存することを義務付けています。これを一定の要件の下で、電子データによる保存を特例として認めた法律が電子帳簿保存法です。
電子帳簿保存法の第4条第1項で、自己が最初の記録段階から一貫してコンピュータ処理により作成した「帳簿」について電子保存の特例を規定し、同じく第4条第2項で、自己が一貫してコンピュータ処理により作成した「書類(控え)」について電子保存の特例を規定しています。また、平成17年の改正時に追加された第4条第3項で、外部から受領又は自己が発行して控えとして持っている紙の書類の「スキャナ保存」を特例として規定しています。
さらに、第10条で、「電子取引における取引情報」の電子データによる保存についても規定しています。ここでいう電子取引とは取引情報の授受を電子的方式により行う取引をいい、EDI取引のほかインターネットを利用した取引や電子メールによる取引等が含まれます。電子取引における取引情報の保存は、承認申請が不要であるものの、書面やCOMに出力して保存する場合を除き、義務として規定されています。
国税関係書類のスキャナ保存要件
外部から受領又は自己が発行して控えとして持っている紙の国税関係書類のスキャナ保存で求められる要件は、大きく「真実性の確保」と「可視性の確保」、さらに「税務署長の承認」の3項目になります。対象の書類の重要性により求められる要件が異なりますが、平成28年度改正以降(令和元年度に一部改正)の各要件の概要は以下の通りです。
なお、「重要書類」とは、契約書や領収書、請求書等の資金や物の流れに直結・連動する書類で、重要度が高及び中のものを指します。一方、「一般書類」は、見積書や注文書等の資金や物の流れに直結・連動しない書類で、重要度が低いものを指します。それぞれの具体的な書類名等は、国税庁のホームページ(以下、HP)の電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】の3ページ目に掲載されている『国税関係帳簿書類のスキャナ保存の区分』を参照してください。
(1)真実性の確保
- 入力期間の制限
書類の作成又は受領(以下、受領等)から入力(タイムスタンプ付与)までの期間を、速やか(おおむね7営業日以内)に行うか、又は業務処理サイクル後速やか(最長2ヶ月+おおむね7営業日以内)に行う必要があります。なお、一般書類の場合、その制限がなく適時に入力することが可能で、過去に受領等し保存している書類も対象になります。
また、受領者等がスマートフォン等を使用して入力をする場合は、自らが署名の上、特に速やか(おおむね3営業日以内)にタイムスタンプを付与する必要があります。
さらに、平成元年度の改正で、それまで承認を受ける前に受領等をした重要書類(過去分重要書類)についてはスキャナ保存の対象外でしたが、スキャナ保存の承認を受けており、適用届出書を所轄税務署長に提出した場合は、一定の要件を満たすことで、スキャナ保存することが可能となりました。 - 一定水準以上の解像度、カラー画像による読み取り
解像度は200dpi以上で、カラー画像による読み取りが必要です。なお、一般書類の場合は、グレースケール画像での読み取りも可能です。
なお、スマートフォン等で読み取る場合、JIIMAでは800万画素以上のカメラ機能を有する機種の使用を推奨しています。 - タイムスタンプの付与
一般財団法人日本データ通信協会認定のタイムスタンプを、入力期間内に読み取って、1ファイルごとに付与します。なお、複数ファイルをまとめてタイムスタンプを付与する方法(ERS)も認められていますが、あまり一般的ではありません。
また、保存ファイルの改ざん検知のため、個別ファイルごとのタイムスタンプ検証はもとより、複数ファイルに付与したタイムスタンプの一括検証も行える必要があります。 - 読取情報の保存
読み取った際の、解像度、階調、及び書類の大きさの情報を保存します。なお、受領者等が読み取る場合は、A4判以下の書類については大きさの情報の保存は不要で、解像度情報についても読み取った画像の画素数の情報を代わりに保存することになります。 - ヴァージョン管理
読み取った画像に対して、タイムスタンプ付与後に訂正(差替え)又は削除を行った場合、その処理前のデータも履歴情報として保存して、後から確認できる必要があります。 - 入力者等情報の確認
入力者又はその者を直接監督する者の情報を、確認できるようにしておきます。一般的にはログ情報等でシステム的に管理しますが、確認さえできればどのような形で管理しても問題はありません。 - 適正事務処理要件
国税関係書類の受領等から入力までの入力事務について、以下の事項に関する規程を作成して、その規程にもとづき各事務を処理する必要があります。
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- 相互に関連する入力事務において、それぞれ別の者が行う体制(相互けん制)
- 入力事務の処理内容を確認するための定期的な検査を行う体制及び手続(定期的な検査)
- 入力事務の処理に不備があると認められた場合、その報告、原因究明及び改善のための方策の検討を行う体制(再発防止)
なお、これらの規程については、前掲の国税庁HPの電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】の31~39ページに掲載されている「適正事務処理規程」等を参考にしてください。
(2)可視性の確保
- 帳簿との相互関連性
請求書や領収書等の書類をもとに仕訳入力された関連する買掛金元帳や現金出納帳等の帳簿の仕訳明細情報と、伝票番号や仕訳番号等で相互にその関連性を確認できるようにします。 - 見読可能装置の備付け等
保存した電子データを出力するためのパソコン、ディスプレイ、プリンタ等を設置します。また、JPEGフォーマット等で画像データを圧縮保存する場合、4ポイント文字を認識できるよう、JIIMAのテストチャート(ISO 12653-3)等を使用してあらかじめ圧縮度を調整しておく必要があります。 - 電子計算機処理システムの開発関係書類等の備付け
システム概要書や操作説明書、事務手続書類(運用マニュアル)等を備え付けておきます。もちろん、電子的なマニュアルでも問題ありません。 - 検索機能の確保
取引年月日や取引金額等、その他主要な項目で検索する必要があります。また、日付や金額は範囲指定で、2以上の任意の項目を組み合わせて、それぞれ検索できる必要があります。
(3)税務署長の承認
- 承認申請
スキャナ保存を開始する3ヶ月前までに、所轄の税務署長に承認申請書等を提出し、承認(みなし承認)を受ける必要があります。 - JIIMA認証による申請手続きの簡素化
令和元年度の改正で、電子帳簿保存及びスキャナ保存に関して、申請者の予見可能性を向上させ、またその手続負担を軽減させる観点から、JIIMA認証を受けたソフトウェア等を利用する場合においては、承認申請書の記載事項や添付書類を一部省略することが可能となりました。なお、JIIMA認証を受けたソフトウェア等については、JIIMA認証HP及び国税庁HPに掲載されています。