社内ルールの整備と運用体制の確立

令和3年度の電帳法改正により事前承認制度が廃止され、検索要件等も緩和されますが、保存する電子データに関して改ざん等の不正が把握されたときは、重加算税が10%加重されるなど、明確な罰則規定が追加されることになり、これまで以上に国税関係書類の電子保存に関して、適切な運用が求められることになります。
実際にスキャナ保存を実施するに当たっては、電帳法の保存要件に則ったシステムを導入するほかに、事務処理規程や業務フロー図を整備して、その規程や業務フロー通りに運用することが求められます。ここでは、どのような規程を作り、運用体制を確立すれば良いかを解説します。

スキャナ保存導入までのスケジュール
① スキャナ保存の目的を明確化
導入に当たってまず行うことは、スキャナ保存の目的を明確にすることです。例えば、保存場所の削減や業務の効率化であったり、今流行りの働き方改革(リモートワーク)であったり、目的により対象書類や業務プロセスの及ぶ範囲が異なり、全体のシステム設計に大きな影響が出るからです。
② 対象書類の選定とその範囲、及び入力方式の決定
次に、対象書類の選定とその範囲、及び入力方式の決定を行います。対象書類が契約書や請求書、領収書等の重要書類の場合は、基本的にフロー(新規)分が対象となり、ストック(過去)分は届出書を提出することによりスキャナ保存が可能となります。一方、その他の一般書類の場合は、もともとストック分も対象になっています。このストック分は一般的に数量が多いため、これをどう取り扱うかによって効果に大きな違いが出て来ます。また、同じ書類でも、部署ごとや相手先ごとに範囲を指定してスキャナ保存することも可能です。このように投資対効果の観点からも、十分に対象書類とその範囲を検討する必要があります。
また、ストック分に関しては、外部の入力サービス業者を利用することも可能ですので、社内のマンパワーに合わせてアウトソーシングを検討することも有効です。
③ 業務プロセスの最適化検討
対象書類とその入力方式が決まったら、それに沿った業務フローの最適化を検討します。ここでは、書類の発生拠点で分散入力を行うのか、又は集中入力を行うのか等、全体の業務フローに関して効果が最大になるように検討します。この最適化いかんで電子化効果の大小が決定されますので、非常に重要なポイントになります。
④ 入出力機器及びスキャナ保存システムの選定
次に、対象書類に適応したスキャナやプリンタの選定を行います。特に書類1枚を分割せずに読み取り、出力する必要がありますので、対象書類の最大サイズに合わせてスキャナやプリンタの選定を行う必要があります。
また、スキャナ保存システムについては、JIIMA認証を取得している製品を、業務フローや規模に合わせて選定することを推奨します。また、近年ではクラウドサービス等で費用体系がサブスクリプション制のサービスもありますので、併せて検討することをお薦めします。
なお、認証製品一覧は以下のサイトで確認できます。現時点で、52製品が登録されていますので、適切なシステムを選択できると思われます。
https://www.jiima.or.jp/activity/certification/denchouhou/software_list/
⑤ 効果の見積りと社内決裁
業務フローの検討やシステム等の選定が終わったら、効果の見積りを行います。保存場所や業務の効率化等の定量的な効果を金額換算し、システム機器等の初期導入費用とタイムスタンプ費用等のランニング費用とを比較します。さらに定性的な効果等も勘案し、実施に向けた社内稟議を行います。
⑥ 事務処理規程類や業務フロー図の整備
社内決裁が済んだら、備え付ける必要がある事務処理規程類や業務フロー図を準備します。事務処理規程類に関しては、国税庁のHPに掲載されている見本を参考に、既存の規程を手直しするか、新たに作成するかを検討します。
⑦ スキャナ保存の開始
冒頭でも書きましたが、令和3年度の電帳法改正により事前承認制度が廃止され、さらに適正事務処理要件も廃止されますので、令和4年1月1日からは事前承認なしにスキャナ保存が始められ、スキャナ保存後の紙原本もその場で廃棄することが可能になります。
整備する必要がある規程類
① 各事務の処理に関する規程
作業責任者、処理基準及び判断基準等を含めた業務サイクルにおけるワークフローなどの企業の方針を定めた規程で、業務サイクル入力方式(入力期間が受領等後2ヵ月と概ね7営業日以内)を採用する場合に必要な規程になります。
この規程は、業務の通常の過程において入力業務を行うことで、改ざん等を防止するためのものですから、書類の受領等からワークフローに沿ったスキャニング、タイムスタンプの付与の時期等について手順を規定し、その手順に沿った運用の責任者を決めることで、責任の所在を明らかにするものです。
② 事務の手続を明らかにした書類
この書類は、一般書類や過去分重要書類をスキャナ保存する際に必要で、責任者、作業フロー及び入力方法などの手続を明確に表現したものをいいます。責任者、入力フロー、方法などの処理手続、さらにはアウトソーシングの場合の事務の手続を定めることにより、適切な入力を確保するためのものです。
なお、これらの規程の例については、国税庁の電子帳簿保存法Q&Aに掲載されていますので、それを参考にしてください。
スキャナ保存の実務
スキャナ保存で要求される要件は、システム的に満足させるものと、運用で満足させるものがあります。ここでは、運用で満足させる要件について、その注意点を解説します。
① 受領者等と読み取りを行う者が異なる場合
- 決められた入力期間内(受領等から2ヵ月と概ね7営業日以内)で読み取りを行い、訂正・削除履歴の残るクラウド等で保存するか、もしくはタイムスタンプを付与して保存します。
- 書類の受領等からスキャニング、画像内容の確認、クラウド保存又はタイムスタンプ付与までの入力事務を、内部統制を徹底するためにも2人以上で行うことを推奨します。その後、領収書等の紙原本は廃棄することが可能です。
- 入力(画像確認)を行う者、又はその者を直接監督する者の情報を記録(システムのログイン情報等の保存でも可)します。
- 入力業務をアウトソースすることも可能です。
② 受領者等がスマートフォン等で読み取りを行う場合
- 決められた入力期間内(受領等から2ヵ月と概ね7営業日以内)で読み取りを行い、訂正・削除履歴の残るクラウド等で保存するか、もしくはタイムスタンプを付与して保存します。
- 書類の受領者以外の者(経理担当者等)が、経理処理の際に画像内容の確認を行うことを推奨します。その後、領収書等の紙原本は廃棄することが可能です。
- 画像内容の確認を行った経理担当者等又はその者を直接監督する者の情報を記録します。
以上が、運用で気を付ける点ですが、令和3年度の電帳法改正以降は、ほとんど運用面の注意事項が簡素化されますので、ほぼシステム任せで運用することが出来るといえます。従って、スキャナ保存システムの適切な選定が、一層重要になって来ることになり、その意味でもJIIMA認証の有効性が高まっています。
最後に、この度の令和3年度の電帳法改正は、経済社会のデジタル化を踏まえ、経理の電子化による生産性の向上、テレワークの推進、クラウド会計ソフト等の活用による記帳水準の向上に資する目的で、帳簿書類を電子的に保存する際の手続きを抜本的に簡素化されました。今回のコラムを参考に電帳法を上手く利用して、業務の生産性の向上やテレワークの推進に繋げていただければ幸甚です。