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資産管理における内部統制の進め方 資産管理における総務部門の役割 その2

著者:株式会社月刊総務 代表取締役社長  戦略総務研究所 所長  豊田 健一

資産管理における内部統制の進め方 資産管理における総務部門の役割 その2

資産取得の管理

「資産の取得」といっても、その内容やシチュエーションにはさまざまなものがあります。

工場や事業所の新規開設といった規模でのまとまった資産取得取引もあり、また、M&Aによる企業買収や資本業務提携などに基づく株式の取得も資産の取得取引の一形態であると位置づけることができます。

営業用車両や什器備品の購入といった臨時的で、ある程度の金額規模の取引もあれば、経常的に発生する複合機のトナーなどの少額の購入取引もあります。

これらすべてを同じように管理することが合理的でないことは明らかです。資産取得の管理の在り方を考えるにあたっては、資産取得の類型、重要性、他部署との役割分担・相互牽制といった点がポイントとなります。

まず、少額・多量の資産の管理について考えてみましょう。

総務部門においてボトルやナットといった生産部品の管理を扱うことは少ないと思われますが、生産現場で当たり前のように実施されている材料管理の手法は、総務部門が担当する消耗品などの管理の方針を定めるにあたって参考となります。

1.ABC分析

どんなに細かい材料であっても、購入や使用の事実を取引として記録しなければならないことは明らかです。ただ、その記録や現物管理をすべて同じように実施すべきかどうかについては、ある程度重要性という判断基準を導入することが現実的です。

すなわち、一定期間の消費数量と消費金額から各材料の管理手法を変えるのです。

「ABC分析」と呼ばれる管理手法は、すべての材料を

  • Aグループ(高価な材料。すなわち、消費数量が全体に占める割合は小さいが、消費金額が全体に占める割合が大きいもの)
  • Bグループ(中程度の価格のもの)
  • Cグループ(低価格な材料。すなわち、消費数量が全体に占める割合は大きいが、消費金額が全体に占める割合は小さいもの)

<に分け、Aグループは厳密に管理し、Cグループはできるだけ管理の手間を省くというものです。

Aグループの材料の在庫量はできるだけ少なくし、必要が生じたときに必要な量だけ発注するようにします。

発注一回当たりの数量が少ない分、引き取り費用などの付随費用がかかってしまうことになりますが、在庫数量が多くなることによる運転資金の流出や管理コストを勘案すると合理的であるといえます。

Aグループの材料は厳重に管理し、現物チェックの頻度を高くします。

一方、Cグループの材料は、たとえば「2ビン・システム」という手法で管理します。

すなわち、材料の保管棚を二つに仕切り、片方の仕切りにある材料をすべて消費した時点でその分の発注をし、もう一方の仕切りにある材料を消費し始めるという手法です。

数量の記録は継続記録法ではなく棚卸計算法によることとし、一品ごとに消費の記録を行わず、一定の会計期間(月次、四半期、年次など)ごとに「期首在庫量充当期間の購入量-実地棚卸により把握した期末在庫量」を計算し、当期間の使用量を把握します。

そして、Bグループの材料は中程度の重要性であるため、「経済的発注量」を定め、これを利用した自動発注システムをとり、管理するとよいでしょう。

2.経済的発注量

中程度の重要性がある材料については、管理の手間という観点ではなく、いかに在庫関連コストを最小化できるかという経済的観点から管理の手法を定めるとよいでしょう。

在庫関連コストは、材料の取得費用と保管費用から構成されます。

ある一定期間に使用する材料について、その期間に使用する量をまとめて一回で発注し購入すれば、取得費用は一回分で済みますが、保管費用が高くなります。反対に、必要があるたびに発注し購入する場合には、保管費用は低く済みますが、取得費用が高くなります。

このように、取得費用と保管費用との間にはトレードオフの関係がありますが、在庫関連コストを最小にする一回当たり発注量ないし発注回数を計算式で求めることができます。

こうして定められた経済的発注量に基づき、機械的に発注するという管理を行うのです。


設備投資の管理

一方、多額、臨時的な設備投資についてはどう管理すべきでしょうか。

企業の設備投資はその効果が長期間に及びます。これは、設備投資の意思決定や管理に不備があった場合に、それが企業経営に大きなマイナスの影響を及ぼす可能性があることを意味します。

したがって、設備投資にあたっての個々の取引の厳密な管理に加え、慎重な意思決定が求められるのです。

設備投資の意思決定は資本予算をどう組むかということによるものであり、これもまた、経理・財務部門が第一義的な管轄部署となります。

しかし、企業がそれまでに経験したさまざまな設備投資の成否に関する情報は、固定資産管理を管轄する総務部門が有している場合が多いでしょう。

そこで、これから行う設備投資の意思決定において、その財務的計画のモデルを理解し、総務部門の観点から意思決定に有用な情報を提供し、また見解を示すことができれば企業経営面から望ましいといえます。

総務部門は、そのような役割を積極的に果たしたいものです。ここでは設備投資の財務的計画モデルを簡単に紹介します。

1.資本予算の問題領域

設備投資に関する資本予算の問題は大きく次の五つに分けられます。

  • 設備投資案の採否をどのような意思決定モデルを使用して決定すべきかという問題
  • 各設備投資案の将来キャッシュフローをどのように予測するかという問題
  • 設備投資を実施するために調達する資本のコストをどのように計算すべきかという問題
  • 複数の設備投資案を採用する場合、資本をどのように配分すべきかという問題
  • リスク要因など定性的な問題

次回に続く


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著者プロフィール

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豊田 健一

株式会社月刊総務 代表取締役社長 戦略総務研究所 所長

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルートで経理、営業、総務、株式会社魚力で総務課長を経験。日本で唯一の総務部門向け専門誌『月刊総務』前編集長。現在は、戦略総務研究所所長、(一社)ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアム(FOSC)の副代表理事として、講演・執筆活動、コンサルティングを行う。

毎日投稿 総務のつぶやき 

毎週投稿 ラジオ形式 総務よもやま話

毎月登場 月刊総務ウェビナー

著作

マンガでやさしくわかる総務の仕事』(日本能率協会マネジメントセンター) 

経営を強くする戦略総務』(日本能率協会マネジメントセンター) 

リモートワークありきの世界で経営の軸を作る 戦略総務 実践ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター)

講演テーマ:総務分野

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