デットファイナンスとは?特徴やその他の資金調達との違いを解説
デットファイナンス(Debt Finance)とは、金融機関や投資家から借入を行うことによる資金調達の方法で、「借入金融」とも呼ばれます。
借入先の選択肢が多いなどのメリットがある一方、借入によって自己資本比率が低下するなどのデメリットもあります。
融資の方法も借入先によって異なるため、自社に合った方法で借入を行うのが理想です。
この記事では、デットファイナンスの特徴や他の資金調達との違いを解説します。
デットファイナンスと反対の意味を持つ「エクイティファイナンス」についても、併せて説明します。
デットファイナンスの特徴と種類
デットファイナンスには、どのような特徴があるのでしょうか。
代表的なデットファイナンスの種類と、メリット・デメリットも併せて解説します。
デットファイナンスの特徴
デットファイナンスとは、負債を表す「デッド(Debt)」と、資金調達を表す「ファイナンス(Finance)」を組み合わせた用語で、企業における資金調達の手段のひとつです。
銀行や投資家などからの資金の借入により資金調達を行う方法で、「借入金融」とも呼ばれます。
具体的には、銀行融資やシンジゲートローン(複数の金融機関が協調して貸し出す方法)、社債発行、私募債発行などによって資金調達を行う方法であり、返済が必要になるため、企業会計上では負債の増加を伴う資金調達です。
そのため、貸借対照表上は「負債の部」に計上されることになります。
なお、会社が資金を調達する方法には、デットファイナンスの他に「エクイティファイナンス」があります。エクイティファイナンスについても後述します。
代表的なデットファイナンスの種類
ここでは、代表的なデットファイナンスの種類を解説します。
融資を受けられる対象や金利、審査の通りやすさ、保証人の有無など、借入先によって条件は大きく変わります。
〈公的機関による融資〉
公的機関による融資の代表的な調達先として「日本金融政策公庫」があります。
日本金融政策公庫は、国が100%出資する公的な金融機関です。
創業して間もない個人事業や中小企業であっても融資を受けることができ、民間の金融機関と比べて、返済期間が長めに設定されているのが特徴です(運転資金は7年、設備資金は20年)。
銀行融資とは異なり、無担保・無保証出融資を受けられるなどのメリットもありますが、その反面、銀行融資よりも審査期間が長く、中小企業の場合は繰り上げ返済ができないなどのデメリットもあります。
出典:日本政策金融公庫「新規開業資金の概要」
〈銀行融資〉
銀行融資とは、銀行から資金の融資を受けて資金繰りを行う方法です。
代表的な方法は、「信用保証協会の保証付き融資」「ビジネスローン」「不動産担保付き融資」「プロパー融資などの融資」です。
多額の資金の融資を受けることができ、他の融資と比べて金利が低く設定されているのが銀行融資のメリットです。
デメリットとしては、審査が厳しく、希望通りの額の融資を受けられないことや、場合によっては、融資そのものを断られる可能性がある点があげられます。
〈ビジネスローン〉
ビジネスローンとは、事業資金としての利用に目的を絞った金融商品です。
銀行以外に消費者金融などでも取り扱っていることが多く、比較的利用しやすい借入方法とされています。そのため、個人事業者や規模の小さい企業などの利用も多い金融商品です。
ビジネスローンのメリットは、銀行の融資の審査と比べると通りやすく、無担保・無保証人で受けられることです。一方で、金利が高く、利用限度額が低いなどのデメリットがあります。
〈社債〉
社債とは、民間会社が発行する民間債権のことで、社債を発行した会社が、その社債を購入する人から資金を集める代わりに、利息を支払うことで行う資金調達です。
社債は、性質や募集の方法などによって、「普通社債」「新株予約権付社債」などの種類に分類されます。
金利の負担が他の融資などに比べて低く、資金の使用用途に制限がないなどのメリットがある一方で、償還期間経過後に必ず全額返済しなければならず、事務負担が増えるなどのデメリットがあります。
〈私募債発行〉
私募債発行とは、社債を発行し、その社債を引き受けてくれる会社(主に金融機関)から購入資金として資金調達を行う方法です。
社債を発行してそれを購入してもらう資金調達の方法は、社債の発行と同じですが、社債の引受先が限定的なのが特徴です。
私募債発行のメリットは、自社の信用力向上につなげることができ、財務状況によっては一括返済などの返済方法を調整できることです。
デメリットは、リスケジュールができず、資金調達のコストが融資と比べて高くつく場合があることです。
デットファイナンスと他の資金調達方法との違い
企業が資金を調達するには、デットファイナンス以外にも、さまざまな方法があります。
ここでは、デットファイナンスと他の資金調達方法の違いを比較してみましょう。
エクイティファイナンス
エクイティファイナンスとは、会社の事業や取り組み、将来性などに対する評価を基に、 株式を発行する対価として出資者から資金提供(出資)を受けることを指します。
エクイティファイナンスには、「公募」「株主割当増資」「第三者割当増資」などの方法があります。また、デットファイナンスと異なり、エクイティファイナンスは返済する必要のない資金です。
そのため、新規事業や研究開発などの取り組みのための資金繰りとして行われるのが特徴です。
出典:経済産業省「エクイティ・ファイナンスに関する基礎知識」
アセットファイナンス
アセットファイナンスとは、自社が保有している資産が将来的に生み出すキャッシュフローによって資金調達を行う方法です。
アセットファイナンスの代表的な資産として不動産があげられますが、機械設備・有価証券・商標権などの知的財産権も含まれます。
近年増加している、売上債権を元手に行う「ファクタリング」という資金調達の方法も、アセットファイナンスのひとつといえます。
補助金・助成金・クラウドファンディングなど
補助金は、国(経済産業省)や自治体の政策目標(目指す姿)に合わせて、事業者の取り組みをサポートするために資金の一部を給付するものです。さまざまな分野で募集されています。
助成金は、主に厚生労働省が管轄しており、労務環境の改善や雇用の促進などを目的とした取り組みを中心に、その費用の一部を助成する制度です。
クラウドファンディングは、インターネットを介して不特定多数の人から少額ずつ資金を調達する仕組みです。
デットファイナンスのメリット・デメリット
ここでは、デットファイナンスのメリット・デメリットを解説します。
豊富な借入先の選択肢があるなど、メリットが多いデットファイナンスですが、その分デメリットも多いため、注意が必要です。
デットファイナンスのメリット
まずは、デットファイナンスのメリットを解説します。
デットファイナンスの主なメリットは、次の2点です。
- 経営権に影響がない
- 借入先の選択肢が豊富
〈経営権に影響がない〉
デットファイナンスは、株式を利用した資金調達であるエクイティファイナンスとは異なるため、会社の経営権に直接的に影響することはありません。
金融機関などから直接、融資を受ける資金調達方法であるため、その点からも、経営権への影響はあまり大きくないといえます。
しかし、経営状態が悪化するなど、重大な危機に直面する恐れがある場合は、融資をしている金融機関が、経営再建を図るためのアドバイスなどを行う場合があります。
〈借入先の選択肢が豊富〉
デットファイナンスは、銀行融資や社債、私募債などのように、借入先の選択肢が豊富にあります。
借入先を選定する際は、借入の目的や返済計画、経営計画などを明確にした上で、どの方法で融資の申し込みを行うか決めていく必要があります。
融資の条件は借入先によって異なるため、会社の経営方針に沿った方法で行うことが望ましいといえます。
デットファイナンスのデメリット
続いて、デットファイナンスのデメリットを見ていきましょう。
デットファイナンスの主なデメリットは、次の2点です。
- 返済期限が設けられている
- 借入で自己資本比率が低下する
〈返済期限が設けられている〉
すべてのデットファイナンスの方法に共通しているのが、返済期限が設けられていることです。経営計画が順調に進み、返済資金に余裕が生まれていれば問題ありません。
しかし、返済期限が迫っているにも関わらず、キャッシュフローが改善されないような状態に陥ると、次の融資を受けるのが非常に難しくなってしまいます。
また、元本部分とは別で利息の支払いもあるため、借り入れる際には、返済期限についても考慮する必要があるといえます。
〈借入で自己資本比率が低下する〉
借入を行うと「他人資本」が増えるため、その分だけ会社の資産全体における自己資本の比率が低下することになります。
会社の資産には、資本金に代表される「自己資本」と、負債の部に計上される借入金などの「他人資本」があり、他人資本は、いつかは返さなければならない他人のお金です。
資産全体のうち、自己資本の割合を示したものを「自己資本比率」といい、自己資本比率の低下は、「会社の資金力の低下」と解釈される恐れがあります。
それにより、銀行などの新規融資を受けにくくなるなどの影響が出る可能性があります。
デットファイナンスについてのまとめ
デットファイナンスについて、特徴や他の資金調達との違いを解説しました。
デットファイナンスの種類には、公的機関による融資や銀行融資、ビジネスローンなど、さまざまな種類があり、負債として計上されるのが特徴です。
新規事業投資など、借入が必要になるタイミングはどのような企業にもあるものですが、借入先によって融資の条件は異なるため、自社の状況や目的に合った方法を選ぶことが大切です。
また、補助金や助成金など、デットファイナンス以外の資金調達の方法も検討してみましょう。
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