配当金とは? 振り込みのタイミングや受取方法などをわかりやすく解説
2014年に導入されたNISA(少額投資非課税制度)の登場により、昨今、株式投資で資産運用をしている人が増えています。株式投資で得られる利益には、売却益・配当金・株主優待がありますが、今回は配当金について解説します。
配当金を受け取る側の人、配当金を渡す側の人(つまり経営者)、自社株の配当金について、どのようなことに注意をしたらいいのか、そのポイントをつかんでおきましょう。
そもそも配当金とはどのようなものをいうのか、配当金が振り込まれるタイミング、その仕訳などを初心者にもわかりやすく説明します。
配当金とは
配当金とは、企業が得た利益の一部を株主に還元するお金のことです。企業の経営戦略によって、配当金の有無・増減が決定します。
利益が出ていても設備投資を優先し、配当金が支払われない場合や、利益がなくても、株主に安定して保有してもらうために支払う場合などがあります。
通常、配当金と言えば普通配当ですが、大きな利益が出た時だけ支払う特別配当、記念の時に配当する記念配当もあります。
企業は株主に対し、持ち株数に応じた配当金を支払います。
たとえば、1株当たり50円配当する場合、1000株保有している株主は50,000円の配当金を受け取れます。原則、税金20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%)がかかります。
なお、NISAなどの非課税口座で受け取る場合、税金はかかりません。
配当金はいつ振り込まれる?
では、配当金がいつ振り込まれるのか、気を付けなければいけないポイントなどを解説します。
配当金が振り込まれるタイミングは?
配当金がある企業では、主に年1〜2回支払われます。企業によって回数・時期が異なり、年1回本決算の時だけ、中間決算と合わせて年2回、または四半期ごとに出す企業もあります。
3月末に本決算の企業ならば、権利確定日(決算日と同一日が多い)の2〜3カ月後に実施される株主総会後の5~6月頃。中間決算は9月末である場合が多く、中間配当は11~12月頃になります。具体的な支払日は、企業の決算短信「配当金支払開始予定日」などで確認できます。
剰余金の配当
剰余金の配当とは、決算により確定した企業の繰越利益剰余金などを株主に分配することを指し、原則企業が1年間で得た「当期純利益」から「配当」(中間配当含む)を支払い、残りが「内部留保」となります。
剰余金の配当の原資は当期純利益といった「利益余剰金」から支払われますが、資本金や資本準備金の減少によって生じた剰余金である、「その他資本剰余金」を原資とすることも可能です。
「剰余金の配当」は、企業が株主にいくら支払うかを決め、原則株主総会で株主の承認を得る必要があります。株主は、「権利確定日」(会社の決算日と同一であることが多い)時点で株主名簿に記載されていなければ、配当金を受け取れません。
中間配当
「中間配当」とは、決算期に配当される「期末配当」とは別に、1事業年度の途中に支払われる配当のことです。本来、配当を行うには株主総会の決議が必要ですが、中間配当は定款に定めることにより、取締役会の決議で行うことができます。
ただし、前期までの利益剰余金を原資とすることが定められていて、当期末に欠損が生じるおそれのない場合に限られています。受け取ることができる株主は、「権利確定日」時点で株主名簿に記載されている必要があります。
配当金を受け取った場合の仕訳
企業がほかの企業から配当金を受け取った時の仕訳について、説明します。
配当金を出す会社が上場株式等 か非上場株式等かによって税率が異なり、上場株式等であれば源泉所得税15.315%、 非上場株式等は源泉所得税20.42%が徴収され、残りの額が入金となります。※
ここでは、上場企業の株式から配当金を受け取った場合の仕訳を説明します。
仕訳には「普通預金の入金額」と「源泉徴収された金額」、そして「源泉徴収される前の配当金額」が必要で、配当金計算書を基に入力します。たとえば配当金10万円、源泉徴収された所得税などが1万5,315円、普通預金が8万4,685円だった場合の仕訳は、下記のとおりとなります。
借方 |
貸方 |
||
---|---|---|---|
勘定科目 |
金額 |
勘定科目 |
金額 |
普通預金 |
84,685 |
100,000 |
|
租税公課 |
15,315 |
※参考: 京都府|府税Q&A:府民税配当割・株式等譲渡所得割
配当金の受取方法
配当金の受取方法には、以下の4つがあります。方法により、課税のものと非課税のものがありますので、自分に合った方法を選びましょう。
配入金当金自動受取サービス(株式数比例分配方式)
配当金を証券会社の口座で受け取る方式です。株券の電子化に伴い、株主が所有する上場株式等の残高は原則として、証券保管振替機構(ほふり)に記録され、複数の証券会社で株式を保有している場合は、残高に応じて各証券会社の口座に自動的に入金となります。
メリットは証券口座に自動で入金になるので、もらい忘れがなく、再投資がラクなことです。NISA口座の配当金を非課税で受け取るには、この方式を選択する必要があります。
登録配当金受領口座方式
保有しているすべての株式配当金を、指定の銀行口座に集約して受け取る方式です。証券口座を二つ、三つ持っている場合でも、一つの銀行にお金をまとめることができるので、配当金を生活費や娯楽費として使いたい時に便利です。
一方、再投資の資金にあてる場合には、銀行口座から証券会社の口座に移す手間がかかります。注意点は、源泉徴収後の配当金が入金されるため、NISA口座の配当金をこの方式で受け取ると非課税の恩恵が受けられないことです。
配当金領収書(郵送)受領方式
従来方式とも呼ばれ、配当金をゆうちょ銀行などの金融機関の窓口で受け取る方式です。保有する個別銘柄ごとに「配当金領収証」が郵送で届き、自分で金融機関の窓口に持参し、現金と交換します。
手間がかかるうえ、交換できる期限が決められており、忙しい方にはおすすめしません。自分で現金に交換して、配当金の満足感を得たい場合などに利用すると良いでしょう。
ただし、この方式も源泉徴収となるため、NISAの非課税には適応しません。
個別銘柄指定方式
こちらも従来方式とも呼ばれ、事前に個別銘柄ごとに配当金を受領する口座を指定して、それぞれの金融機関で受領する方式です。振込先は銀行などの口座となり、源泉徴収後の配当金が入金されます。
支払時に「配当金計算書」が郵送で届きます。デメリットは銘柄ごとに振込依頼の手続きをする必要があります。配当金がすべて同じ口座に振り込まれても良いなら、「登録配当金受領口座方式」のほうが一度の手続きで済むため、おすすめです。この方式もNISAの非課税には適応しません。
配当金を出す側のポイント
これまでは、配当金を受け取る側の視点で話を進めてきました。ここでは、配当金を出す企業側の視点で話を進めていきます。まずは、ポイントを見ていきましょう。
配当金を出せる企業の条件
企業は事業の運営によって利益を出し、それを配当金として、出資者である株主に還元することができますが、会社法で「分配可能額」として上限が定められています。これは、債券者(銀行など)の保護のための決まりです。
分配可能額は、配当などの効力発生日(決算日など)における剰余金の額を基礎として、一定の金額を増額・減額することで算出されます。ただし、剰余金があったとしても、純資産額が 300 万円を下回る場合、剰余金の配当は会社法 458 条で禁止されています。
配当金の目安
企業が配当金を出す目安は企業の規模により異なり、株式上場している大手の企業は、多くの株主と良好な関係を維持するために、安定した配当金を出す必要があります。
配当金額を決める際、「配当性向」が一つの目安となります。配当性向とは以下の式で計算され、当期純利益のなかから、どれだけ配当金として支払いに向けたかを示す指標です。
(計算式)配当性向(%)=配当金支払総額÷当期純利益×100
たとえば、日本の優良企業であるトヨタの配当政策は、配当性向30%を基準にしています。これから株主を増やしていきたい企業の場合は、この配当性向を高めていく必要があります。※
※参考:TOYOTA|配当金について
配当金を出す際の注意点
配当金は企業が1年間の活動をとおして得た利益から、さらに法人税を負担した後の利益(当期純利益)が財源となります。株主への利益還元であり、そもそも株主の取り分であって、会社が事業を維持するための費用ではないため、配当金を支払うことは損金(経費)にはなりません。
また、配当金を多く出すことだけが株主への還元ではなく、利益を設備投資に回し、より多くの利益を稼ぐことも株主への貢献になります。安定的に配当することも、株主に長期に保有してもらうために大切なことです。投資家から選ばれる企業になるためには、配当を出す際にはしっかりとした配当政策が必要です。
自社株の配当金の扱いについて
経営者あるいはその家族、または従業員が自社株の配当金を受け取りたい場合はどうすれば良いのでしょうか。ここでは、自社株の配当金の取り扱いについて解説します。
経営者は自社の配当金を受けられる?
未上場企業の株式からの配当金は受取時に、所得税率20.42%のみ源泉徴収されます。「総合課税」の対象であるため、確定申告の時期にほかの所得と合算して、所得税額を計算しなければなりません(少額配当をのぞく)。なお、所得税計算上、配当控除を受けることが可能です。
所得税は累進課税であり、所得が高くなればなるほど税率が高くなり、最高税率は45%。これに復興特別所得税2.1%が加わり、さらに住民税は一律10%であるため、合計で55%以上と高率となってしまいます。
小規模な同族会社は、株主が身内である場合が多く、配当金として受け取るよりも、役員報酬や給料で受け取り、経費に算入する、または内部留保として会社の資本を充実させるほうがいいと言えるでしょう。
上場企業の配当金の税率は一律約20%
上場企業の株式の配当金の税率は所得税15.315%、住民税5%、合計20.315%で、配当金を受け取る際に源泉徴収されます。配当所得は、原則として総合課税の対象ですが、上場株式等の配当など(大口株主などが支払いを受ける上場株式等の配当などを除く)については、確定申告不要または申告分離課税(※2)を選択することが可能です。
申告分離課税は、ほかの所得金額と分離して税額を計算し、確定申告によりその税額を納めます。総合課税と違い、税率は一定です。※1
上場企業では福利厚生の一環として、「従業員持株制度」を導入しているところがあります。従業員が給与天引きで自社株を買い、企業からは奨励金の支給などの便宜を与えて、従業員の財産形成を支援します。
企業の利益が上がると、配当金として受け取れる可能性が増えるため、従業員のモチベーションアップにつながります。また、企業側も安定した株主を確保できるというメリットがあります。
※1参考:国税庁|上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度
※2参考:国税庁|申告分離課税制度
配当金についてのまとめ
今回は、株式投資で得られる利益の一つ、配当金について解説しました。
- 配当金を受け取る側
- 配当金を配る側
- 自社株の配当金について
それぞれ違った注意点がありますから、きちんと理解することが必要です。
とくに、経営者は配当金の全体を知ることが大切です。どちらにとっても損のないように、資産運営をしていきましょう。
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