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固定比率とは? 計算式と数値目安・高いときの改善策をわかりやすく解説

固定比率とは? 計算式と数値目安・高いときの改善策をわかりやすく解説

企業の経営状況や財政状況を把握する指標は様々ですが、その中の一つに長期的な支払位能力を表す固定比率があります。固定比率は純資産に対する固定資産の割合で、固定資産が自己資本でどの程度まかなわれているか見る指標です。

この記事では、固定比率の計算方法や数値の改善方法などを解説します。長期的な財政状況を把握したいという企業は、ぜひ参考にしてください。


この記事の監修者
  公認会計士 

固定比率とは

固定比率とは、純資産(自己資本)に対する固定資産の割合で、固定資産が自己資本でまかなわれているかを見る指標です。固定比率は低いほど、安全性が高いと考えられています。

固定資産とは1年超の長期間に渡り使用する資産や決算日から1年以内に費用化・回収予定がない資産で、具体的には土地や建物などの有形固定資産、商標権などの無形固定資産などがあります。

計算方法

固定比率は、次の式で計算できます。

「固定資産 ÷ 自己資本 × 100(%)」

自己資本は貸借対照表に記載されている、株主資本と評価・換算差額などを合計した金額です。

数値の目安

固定比率は、100%を切っていると自己資本でまかなえるので、一般的には安全性があるとされています。100%を超えている場合は危険性があると判断されることもあり、数値が高くなるほどその傾向も強くなります。

とはいえ、数字だけでは判断できない要素もあり、120%までは安全性に問題がないという見方もあるでしょう。固定比率が高い場合はその他の指標を確認してから、安全性についての判断をするのが一般的です。

業界ごとの平均値

固定資産の目安に100%という数字が用いられますが、業界によっては固定比率が高い場合もあります。次の表は業界ごとの平均値をまとめたものです。

業種

固定比率

情報通信業

63.80%

建設業

76.72%

卸売業

87.24%

サービス業(他に分類されないもの)

87.91%

学術研究、専門・技術サービス業

92.42%

製造業

97.48%

小売業

118.09%

運輸業・郵便業

156.15%

不動産業・物品賃貸業

184.49%

生活関連サービス業・娯楽業

187.43%

宿泊業・飲食サービス業

346.59%

参照:中小企業庁 「平成30年中小企業実態基本調査(平成29年度決算実績)」

ホテルや飲食店などは設備投資に多額な費用がかかるため、固定比率の平均も高いです。とはいえ、適切な設備投資を行えている場合は固定比率が下がっていきます。


固定比率から分析できること

ここでは、固定比率から分析できる2つのことを紹介します。

企業の長期的な安全性

固定資産は基本的に短期間でなく長期間で回収するものなので、返済を求められない自己資本でまかなえるのがよいと考えられています。固定比率が100%を下回っていると、すべての固定資産に対して自己資本で投資できているため、会社の安全性が長期的に高いと判断できます。

ただし業種や会社の状況によって固定比率は変わるため、数字だけで安全性が判断できるわけではありません。

自己資本に対する固定資産の割合

固定比率をみると自己資本に対する固定資産がわかります。

例えば、自己資本2,000万円の会社の固定資産が1,800万円の場合、固定比率は90%です。自己資本ですべての固定資産をまかなえていることが、ひと目でわかります。

対して、自己資本が2,000万円で固定資産が6,000万円の場合は、固定比率は300%です。


固定比率が高いときの改善策

固定比率が高い場合、どのように改善すればよいのでしょうか。ここでは、2つの改善策を紹介します。

自己資本を増やす

固定比率は、固定資産に投下された資金が自己資本によって、どの程度まかなわれているかを示す指標です。そのため、自己資本そのものを増やすことで固定比率を改善できます。

自己資本を増やすには、既存の株主や外部の投資家から追加の出資を受けるなどの方法があります。

固定資産を減らす

固定資産そのものを減らすことで、固定比率の改善ができます。

例えば、現在使用している固定資産をより安い金額で調達する、固定資産を使用して実施する業務を外部に委託して、当該固定資産を使用しない状態を作るなどの方法も可能です。


固定比率とあわせて確認したい指標

固定比率は会社の経営状況などを判別するのに役立つ数字ですが、一概に経営の良し悪しを判断できるわけではありません。

ここでは、固定比率とあわせて確認したい2つの指標を解説します。

固定長期適合率

固定長期適合率とは、会社の長期的な安全性を示す指標で、固定資産を自己資本と固定負債でまかなえるかを分析します。

長期的に使用する固定資産が、自己資本と固定負債に対してどれほどの割合かを確認することで、財政の安全性を把握します。

計算式は次の通りです。

「固定資産 ÷ (自己資本 + 固定負債) × 100(%)」

固定長期適合率は100%以下であれば危険視する必要はありません。

しかし、100%を超える場合は、財政状況が非常に危険であると考えられます。固定長期適合率は安全性の指標として、固定比率より判断が甘いため、必ず100%以下にならないといけないと言っても過言ではありません。

流動比率

流動比率とは会社の短期的な安全性が把握できる指標で、1年以内に返済する流動負債に対して、1年以内に現金化の予定がある流動資産の割合を計算します。

計算式は次の通りです。

「流動資産 ÷ 流動負債 × 100(%)」

流動比率は固定比率と対照的に、短期的に返済する必要があるお金をまかなえているかを判別するための指標です。数字が高いほど安全であると考えられていて、100%を下回ると危険性が高まります。


固定比率についてのまとめ

固定比率を求めることで、企業の長期的な財政状況を把握することができます。業種や状況によって、一概に数字で判断できるわけではありませんが、長期的な財政状況の参考になるでしょう。

固定比率の数値の改善方法も紹介しているので、自社の財政管理の見直しをしている企業は、ぜひ参考にしてみてください。


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監修者プロフィール

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前田 昂平

公認会計士

2013年公認会計士試験合格後、新日本有限責任監査法人に入所し、法定監査やIPO支援業務に従事。

2018年より会計事務所で文化芸術を事業として行う法人・個人への税務顧問業務を行う傍ら、非営利法人専門の監査法人で公益法人・一般法人の会計監査、コンサルティング業務に従事。

2022年9月に独立開業し現在に至る。

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