消費税の中間納付とは? 対象や納付回数・時期・計算・仕訳方法を解説!
一定の要件を満たす事業者には、消費税の中間納付が義務付けられています。しかし、前年度の税額によって納付回数や期限は異なるため、その仕組みを理解しなければなりません。
この記事では、企業の財務担当の社員に向けて、消費税の中間納付の概要や計算方法、具体的な仕訳例を紹介します。ぜひ最後までご覧ください。
消費税の中間納付とは?
消費税の中間納付とは、前年の消費税額が一定のラインを上回った企業を対象に、消費税の納付を一定金額前払いで行う制度です。
通常、消費税は1年間(12ヵ月)の期間を1つの納税単位として、年度末にまとめて納付を行います。
中間納付の目的
消費税の中間納付の目的は、分割して納付させることで企業の納税の負担感を緩和することです。
また、国側の視点では、企業が消費税を払いやすくなると延滞などの事案が少なくなり、かつ、財政収入の平準化等ができるメリットもあります。
対象となる法人・個人事業主
中間納付の対象になる法人は、前事業年度(前課税期間)の消費税の年税額が48万円を超える場合です。個人事業主の場合も同様です。
ただし、課税期間の特例制度を適用している事業者は、中間申告書を提出する必要はありません。
- ここにおける消費税は地方消費税額を含みません。
- 国税通則法第11条の規定による申告期限の延長により、その中間申告書の提出期限と当該中間申告書にかかる課税期間の確定申告書の提出期限とが、同じ日になる場合は、中間申告書を提出しなくて大丈夫です。
(出典:国税庁 No.6609 中間申告の方法)
消費税の中間納付の回数と期限
消費税の中間納付の回数と期限は、次の表のようになっています。
直前の課税期間の確定消費税額 |
48万円以下 |
48万円超から 400万円以下 |
400万円超から 4,800万円以下 |
4,800万円超 |
中間申告の回数 |
原則不要だが、任意の中間申告制度あり(注2) |
年1回 |
年3回 |
年11回 |
中間申告提出・納付期限 |
各中間申告の対象となる課税期間の末日の翌日から2か月以内 |
|||
中間納付税額(注3) |
直前の課税期間 の確定消費税額(注1)の6/12(注4) |
直前の課税期間 の確定消費税額(注1)の3/12(注4) |
直前の課税期間 の確定消費税額(注1)の1/12(注4) |
|
1年の合計申告回数 |
確定申告1回 確定申告1回 |
確定申告1回 中間申告1回 |
確定申告1回 中間申告3回 |
確定申告1回 中間申告11回 |
- (注1)確定消費税額は、中間申告対象期間の末日までに確定した消費税の年税額で、地方消費税は含みません。
- (注2)直前の課税期間の確定消費税額(地方消費税額を含まない年税額)が48万円以下の事業者が対象
- (注3)中間納付税額と合わせて、地方消費税の中間納付税額を納付
- (注4)直前の課税期間が12か月に満たない場合、計算方法が異なります。
(出典:国税庁 No.6609 中間申告の方法)
(注意2の出典:国税庁 No.6611 任意の中間申告制度)
消費税の中間納付額の計算方法は2種類
消費税の中間申告における納付額には、2種類の計算方法があります。「予定申告方式」と「仮決算方式」をそれぞれ解説します。
1.予定申告方式
予定申告方式は中間納税額を前期(前年度)の消費税額をもとに計算し、次期(次年度)の消費税額を予測します。予定申告方式を使うと、企業は中間納税の手続きを簡素化できるメリットがあるでしょう。
また、税務署から届く納付書に予定申告方式で算出された納税額が、記載されていますので、予定申告方式は自分で計算しなくて大丈夫です。
2.仮決算方式
仮決算方式は、中間納税額を現在の税額に基づいた状態で計算します。過去の消費税額を参考にしないため、企業の業務状況が大幅に変動している場合でも、適切な中間納税額を算出できるでしょう。
新規事業や業務拡大に伴う消費税額の変動にも適切に対応できるメリットがあります。また、仕入れ額や設備投資が増加した場合、仮決定方式のほうが予定申告方式よりも、中間納税額を減額できる場合があるでしょう。
消費税の中間納付によくある仕訳例
消費税の中間納税によくある仕訳例を紹介します。
税抜経理方式
税抜経理方式を採用している場合、中間納税したときの勘定科目は「仮払消費税」か「仮払金」が使われるでしょう。
ただし、通常の課税仕入の仕訳を行う際、既に「仮払消費税」は使われていますので、決算整理の仕訳をシンプルにしたければ「仮払消費税」を用いるとよいでしょう。
中間納税を100万円で行ったときの仕訳例は次の通りです。
- :(仮払消費税)100万円 / (現金預金)100万円
また、税抜方式を採用している場合は、決算では仮払消費税と仮受消費税を相殺し、未払消費税を計上します。
決算において未払消費税等が100万円であったときの仕訳を具体例にしました。決算整理前の仮払消費税は100万円、仮受消費税は200万円が前提条件です。
- (仮受消費税)200万円/(仮払消費税)100万円
(未払消費税等)100万円
上記の例は仮払消費税と仮受消費税の相殺後の金額が、未払消費税等と一致するものとしました。
しかし、実務上は詳細に計算した結果の納付すべき消費税額を、未払消費税等とします。仮払消費税と仮受消費税の相殺額との差額は、雑収入や雑損失として処理します。
税込経理方式
税込経理方式を採用している場合、中間納税したときの勘定科目は「租税公課」が使われることが多いです。税抜処理のときと同様に「仮払金」勘定を使用できますが、決算で消費税額が確定した際には精算されます。
租税公課勘定を用いた場合、中間納税を100万円で行ったときの仕訳例を解説します。
- :(租税公課)100万円 / (現金預金)100万円
また、消費税の年間税額が200万円、中間納税を100万円行っていたため、未払消費税等が100万円の場合の仕訳は次の通りです。
- (租税公課)100万円/(未払消費税等)100万円
消費税の中間納付に関する注意点
消費税の中間納付に関する注意点をまとめました。
申告書の提出を忘れない
消費税の中間申告書の提出期限までに提出しなければ、その提出期限に直前課税期間の実績による中間申告書があったとみなされます。
この場合、通常の実績方式に基づく申告が必要になるため、仮決算方式による中間申告をしたい場合には留意が必要です。
消費税の納付は期限内におこなう
消費税の納税を納期限内に行わなかった場合は延滞税が発生します。期限を過ぎてからの日数に比例して延滞税は増額しますので、注意しなければなりません。納税は必ず期限内に行うようにしましょう。
簡易課税制度を採用している場合
簡易課税制度を採用している事業者のうち、仮決算方式で中間申告する場合は、中間申告も簡易課税制度を適用する必要があります。
簡易課税制度を選択しているのにもかかわらず、中間申告で仮決算方式を使わないと、計算方法が一致しないために、誤った納税額を算出する可能性があるためです。
消費税の中間納付についてのまとめ
消費税の中間納付は、税額によって納付回数や期限が大きく異なります。特に仮決算方式を利用したいときは申告が必要など注意点も多いため、早めに準備しましょう。
企業の財務担当はぜひこの記事を参考に、消費税の中間納税の知識を深めてください。
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