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累進課税とは? 対象となる税金や税率表・メリット・デメリットを解説

監修者: 公認会計士  前田 昂平

累進課税とは? 対象となる税金や税率表・メリット・デメリットを解説

課税対象額が増えるほど税金の割合が高くなる累進課税が、日本の一部の税制度で採用されています。この記事では、企業に勤める従業員に向けて、課税対象の仕組みや税率、メリットやデメリットなどをわかりやすく解説しました。

また、この記事の公判部分では、累進課税における節税対策を詳しくまとめましたので、ぜひ最後までご覧ください。


累進課税とは

累進課税とは、課税対象額が増えるほど税金の割合が高くなる仕組みです。1887年に所得税法が制定され、その所得税法により1947年に累進課税を採用し制度化しました。

累進課税制の種類や採用された理由を詳しく見ていきましょう。

(出典:e-Gov 所得税法第89条

(出典:国税庁 税の学習コーナー

累進課税の種類

累進課税には単純累進課税と超過累進課税があります。単純累進課税は上昇した税率が課税所得全体に乗じられ、超過累進課税は所得が一定額を超過した場合のみ、超過分に対し税率が上昇する仕組みです。

日本が採用している超過累進課税は、所得ごとに7段階に分けられています。単純累進課税を導入しない理由は、単純累進課税には高所得者により大きな税率がかかり、富裕層や企業が反発し、導入が難しいとされているためです。

累進課税が採用される理由

累進課税が採用される理由は、納税者の税負担を公平にするためです。納税が一律の割合や定額になった場合、低所得者に大きな負担がかかります。また、納税額の公平さ以外にも、累進課税の導入には次のような理由やメリットがあるでしょう。

  • 持続的な社会保障制度の構築
  • 高所得者層から多くの税を徴収することによる経済全体の安定化
  • 低所得者層への貢献

【速算表】累進課税の対象となる税金と税率

累進課税の対象になる税金とそれぞれの税率を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

所得税

所得税とは、個人の1年間の所得に対して課税されます。所得税の税率は5%から45%の7段階に分けられます。

課税される所得金額

税率

控除額

1,000円~195万円未満

5%

0円

195万円~330万円未満

10%

9万7,500円

330万円~695万円未満

20%

42万7,500円

695万円~900万円未満

23%

63万6,000円

900万円~1,800万円未満

33%

153万6,000円

1,800万円~4,000万円未満

40%

279万6,000円

4,000万円以上

45%

479万6,000円

※「課税される所得金額」=「その年の1月~12月までの所得金額の合計」-「所得控除」※課税される所得金額では1,000円未満の端数を切り捨て

(出典:No.2260 所得税の税率

相続税

相続税とは、亡くなった人から相続した財産にかかる税金です。相続税の対象となる財産の評価額に応じて、10〜55%の8段階の相続税率が設定されています。

法定相続分に応ずる取得金額

税率

控除額

1,000万円以下

10%

0円

1,000万円超3,000万円以下

15%

50万円

3,000万円超5,000万円以下

20%

200万円

5,000万円超1億円以下

30%

700万円

1億円超2億円以下

40%

1,700万円

2億円超3億円以下

45%

2,700万円

3億円超え6億円以下

50%

4,200万円

6億円超え

55%

7,200万円

(出典:No.4155 相続税の税率

贈与税

贈与税とは、1月1日から12月31日までの1年間で受け取った贈与に課される税金です。年間110万円以下の贈与や、親が子に使う生活費や教育費などには贈与税が生じません。

贈与税の税率は2つあり、課税価格や控除額がそれぞれ異なります。

  • 一般贈与財産用贈与税:夫婦間や兄弟間、親子間(子が20歳未満)への贈与
  • 特例贈与財産用贈与税:直系尊属(祖父母や父母)から20歳以上の子や孫への贈与

まずは一般贈与財産用贈与税の税率を次の表にまとめました。

基礎控除後の課税価格

税率

控除額

200万円以下

10%

0円

300万円以下

15%

10万円

400万円以下

20%

25万円

600万円以下

30%

65万円

1,000万円以下

40%

125万円

1,500万円以下

45%

175万円

3,000万円以下

50%

250万円

3,000万円超

55%

400万円

次に、特例贈与財産用贈与税の税率をまとめた表を紹介します。

基礎控除後の課税価格

税率

控除額

200万円以下

10%

0円

400万円以下

15%

10万円

600万円以下

20%

30万円

1,000万円以下

30%

90万円

1,500万円以下

40%

190万円

3,000万円以下

45%

265万円

4,500万円以下

50%

415万円

4,500万円超

55%

640万円

(出典:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)


累進課税制度のメリット・デメリット

累進課税制度のメリットとデメリットを紹介します。

累進課税制度のメリット

累進課税制度の主なメリットは3つです。詳しく解説します。

財政収入の安定性

経済が好調だと累進課税による税収が増えるため、政府の財政収入の安定性が高まります。経済成長とともに、高所得者の全体的な所得も増加しやすくなるためです。

このような循環が長くなるほど、持続的な社会保障制度や公共投資、低所得者層への支援などが可能になり、社会全体に潤いが生まれるでしょう。

社会的に公平な税負担

累進課税は所得に応じて税率が上昇する仕組みのため、所得の高い人たちが社会負担の大部分を金銭的にカバーし、所得の少ない人たちは最小限の支払いで済みます。所得(担税力)に応じた納税額が決定されるため、公平な税負担が実現されやすいでしょう。

所得の再分配

累進課税は最終的に所得の再分配が可能になるメリットもあるでしょう。高所得者から徴収した多くの税金を、社会保障制度や公共サービスに充てられるためです。所得の再分配により、低所得者の金銭的負担が減り、所得格差の縮小につながります。

累進課税制度のデメリット

累進課税制度の主なデメリットは3つです。

投資や労働意欲の減少

累進課税は所得が増えるほど税率が増えるため、労働意欲を減少させるデメリットがあります。税率が同じだとしても、高所得者層が支払う税金は非常に大きな金額になります。

累進課税で社会全体の制度を整えながらも、労働意欲を起こさせるような仕組み作りが今後の課題でしょう。

経済成長の鈍化

累進課税が投資や労働意欲を抑制すると、経済成長が鈍化する可能性があるでしょう。例えば、高所得者が自らの所得に対する税負担の増大を懸念し、事業投資や金融投資を控えたり、起業家精神が低下したりします。

高所得者層の税負担額が大きい

累進課税制度は所得に対して税率をかけていますが、高所得者層は一般的に大きな金額を納税しています。また、税負担を少しでも軽くしたい高所得者層は、次のような対策を講じるでしょう。

  • 海外に資産を移すタックスヘイブン
  • 複雑な財務構造を活用して法人税を最小限に抑える

これらの節税対策はグレーゾーンなものが多く、多くの高所得者層が用いれば国の税収が減少しかねません。


累進課税制度における節税対策の考え方

累進課税における節税対策の考え方は、課税対象の所得や財産を減少させることです。例えば所得税の場合、所得控除を利用すれば課税所得を減らせるでしょう。所得控除は次の15種類です。

  • 基礎控除
  • 雑損控除
  • 医療費控除
  • 社会保険料控除
  • 小規模企業共済等掛金控除
  • 生命保険料控除
  • 地震保険料控除
  • 寄附金控除
  • 障害者控除
  • 寡婦控除
  • ひとり親控除
  • 勤労学生控除
  • 配偶者控除
  • 配偶者特別控除
  • 扶養控除

(出典:No.1100 所得控除のあらまし

累進課税制度における税金のポイントは、自分でコントロールできる所得控除の活用です。基礎控除はすでに全員へ適用されており、適用範囲外の所得控除が多く存在するためです。

具体的には次のような所得控除を利用できます。

  • 医療費控除
  • ふるさと納税
  • 生命保険料控除

累進課税制度のまとめ

累進課税とは、課税対象額が増えるほど税金の割合が高くなる仕組みです。累進課税には公平な税負担というメリットがありますが、投資や労働意欲の減少などのデメリットもあるでしょう。特に会社に勤める従業員は、この記事で解説した節税対策の考え方を参考にするとよいでしょう。


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監修者プロフィール

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前田 昂平

公認会計士

2013年公認会計士試験合格後、新日本有限責任監査法人に入所し、法定監査やIPO支援業務に従事。

2018年より会計事務所で文化芸術を事業として行う法人・個人への税務顧問業務を行う傍ら、非営利法人専門の監査法人で公益法人・一般法人の会計監査、コンサルティング業務に従事。

2022年9月に独立開業し現在に至る。

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