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特別損失とは? 該当する勘定科目と計上するメリット、注意点を押さえよう

監修者:京浜税理士法人 横浜事務所   宮澤 明宏

特別損失とは? 該当する勘定科目と計上するメリット、注意点を押さえよう

特別損失とは、損益計算書に記載する特別損益のうち、損失の項目です。

金融機関は企業への融資の可否を判断する際、経営状況を厳しくチェックします。このとき、自然災害や犯罪など、一過性の損失があると、経営状況が悪く見られてしまう可能性があります。

そんなとき、特別損失として計上することで、経営状況が悪く見られることを避けることができるでしょう。

この記事では、特別損失の具体例や、計上することで得られるメリット、計上する際の注意点などを紹介していきます。


特別損失とは

特別損失は、その期だけ臨時的に発生し、次期以降には起こる見込みのない損失のことを指します。

例えば、自然災害や犯罪による損失や、固定資産を売却した際の損失などは、次期に同じことが起こる見込みは少ないため、損益計算書に記載する際には特別損失として計上することができます。

損益計算書は、金融機関などが経営状態などを確認し、融資の可否などを検討するうえで重要な書類です。

もし赤字になっていれば、経営状態に問題ありと判断され、融資を受けにくくなるおそれがあります。

しかし、赤字の原因が特別損失であるなら、経営状態には問題がないと分かるため、通常通り融資を受けやすくなります。


特別損失の具体例・勘定科目

特別損失に当てはまる損失には、どのようなものがあるのでしょうか。

ここでは特別損失の具体例を、計上する際の勘定項目と併せて詳記していきます。

固定資産売却損

固定資産売却損とは、固定資産を売却した際に、売却価格が帳簿価格よりも低くなってしまったことで発生する損失です。

固定資産の売却は毎期行うものではありませんから、特別損失として扱います。

固定資産除却損

固定資産切除損は、不要になった固定資産を廃棄処分し、除却することで発生する損失です。固定資産の除却も毎期行なうものではないため、特別損失として扱います。

廃棄を担当した業者から発行される証明書を保管しておく必要があります。

固定資産圧縮損

固定資産圧縮損とは、固定資産を購入の取得に際して補助金や保険金などを利用した場合、補助金の金額を固定資産の取得額から減額(圧縮)し、翌期以降に繰り延べる処理のことです。

これも頻繁に行なうものではないため、特別損失となります。

この処理により、補助金を受け取ったにもかかわらず、すぐに高額の税金を支払わなければならないという事態を避けることができます。

減損損失

減損損失は、保持している固定資産の収益性が下がり、回収できる金額が帳簿上の価値よりも低くなったときに、その差額を表すための勘定項目です。

これも特別損失として計上します。

盗難損失

盗難損失は文字通り、盗難被害による損失です。

経営状況によって起こる損失でもなければ、たびたび起こるものでもないため、こちらも特別損失に該当します。

災害損失

地震や水害などの自然災害による損失です。これも特別損失にあたります。

建物が倒壊した場合などは、帳簿上の価値と同じ金額を損失額とします。

前期損益修正損

前期に計上し忘れた項目がある場合に、損益を修正することで発生する損失です。継続的ではなく、なおかつまとまった金額であれば特別損失として計上します。

投資有価証券売却損

投資目的で保有していた有価証券を、帳簿価格より安く売却し、それによって発生した損失のことです。これも特別損失として扱います。

混同しやすいものに有価証券売却損があり、こちらは一時保有目的で保有していた有価証券にかかわる損失です


特別損失の計上で得られるメリット

特別損失を計上することで得られるメリットは下記の通りです。

  • 節税効果
  • 経常利益の増加

それぞれ詳しく解説します。

節税効果

特別損失を計上するメリットとして、節税効果があります。

企業が保有する固定資産を廃棄した場合には、廃棄時点の帳簿価額が固定資産除却損として特別損失に計上されます。

法人税の計算においては、固定資産除却損を計上することで課税所得が減少するため、結果的に税額が少なくなります。

なお、固定資産除却損が認められるためには、原則として対象となる固定資産を廃棄・処分するという事実が必要です。

そのため、廃棄した事実を証明するために、廃棄を依頼した業者から廃棄証明書を取得したり、自社で廃棄した際の様子を写真に納めておくことがあります。

経常利益の増加

特別損失を計上することでのもう一つのメリットは、経常利益の増加です。

経常利益は、銀行が経営状況を判断する際の指標となるため、経常利益が良いと借入もしやすくなる可能性が高くなります。

経常利益の計算は「営業利益+営業外収益–営業外費用」で求められますが、この「営業外費用」のなかには、特別損失として計上できるものがあります。

そのため、臨時で発生した支出を、営業外費用ではなく特別損失として計上することで、経常利益が増えるという仕組みです。


特別損失を計上する際の注意点

続いて、特別損失を計上する際に注意するべき項目を見ていきましょう。

消費税の扱い方

特別損失を計上した際の消費税については、勘定科目ごとに扱いが異なります。

勘定科目ごとの扱いは以下のとおりです。

  • 固定資産売却損:課税(土地や借地権の売却は非課税)
  • 固定資産除却損:不課税
  • 固定資産圧縮損:不課税
  • 減損損失:不課税
  • 盗難損失:不課税
  • 災害損失:不課税
  • 前期損益修正損:不課税
  • 投資有価証券売却損:不課税

損金算入の可否

特別損失には、法人税の計算において損金として認められるものと、認められないものがあります。

特別損失によって純利益が下がっていても、税金も安くなるとは限らないのです。

具体的な事例は、次のとおりです。

損金として認められるもの

  • 固定資産売却損
  • 固定資産除却損
  • 固定資産圧縮損
  • 投資有価証券売却損
  • 災害損失
  • 盗難損失

損金として認められないもの

  • 減損損失
  • 前期損益修正損

特別損失についてのまとめ

特別損失とは、損益計算書に記載する項目のひとつで、その期にだけ臨時的に発生した損失のことを指します。

具体的には固定資産の売却によるものや、自然災害によるものなどがあります。

次期以降に同じことが起こる見込みが少ないので、たとえ赤字でもその原因が特別損失に由来するものだと分かれば、経営状態には問題ないことを示すことが可能です。

頻繁に発生する項目ではないからこそ、発生したときに適切に対処できるよう、概要を頭に入れておきましょう。


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監修者プロフィール

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宮澤 明宏

京浜税理士法人 横浜事務所

横浜市青葉区を拠点として、中小規模法人や個人事業主のお客様を中心に、税務顧問サービス及び経営コンサルティングサービスを提供。

月次決算制度の導入、資金繰りの明確化を切り口に、創業3年以内の黒字化を目指し経営を安定化させるための経営管理の手法について、伴走型支援で行っている。

創業時からしっかりとした経営管理を行い、スピード感を持って会社を成長させていきたい経営者に向けて業務を行う。

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