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ベンチャーキャピタル(VC)とは? 資金調達の際に知りたいメリット・デメリットを解説

監修者: 税理士・米国税理士・認定心理士  竹中 啓倫

ベンチャーキャピタル(VC)とは? 資金調達の際に知りたいメリット・デメリットを解説

ベンチャーキャピタルは、銀行から満足のいく融資を受けづらいベンチャー企業にとって、有力な選択肢の1つに入るものです。

この記事では、資金調達先を探している起業家に向けて、ベンチャーキャピタルの基礎知識やメリット、デメリット、注意点などを解説しました。ぜひ参考にしてください。



ベンチャーキャピタル(VC)とは

ベンチャーキャピタルとは、未上場のベンチャー企業に出資して株式を取得し、その企業が将来的に株式を公開した際に株式を売却し、大きな値上がり益(キャピタルゲイン)の獲得を目指す投資会社や投資ファンドのことです

ベンチャーキャピタルの収益源はキャピタルゲインのみならず、運営母体や投資家の出資額に対する管理手数料なども含まれます。

また、出資と同時に経営コンサルティングなどに入り、出資先の企業の価値を向上させる目的もあります。

創業間もないベンチャー企業は、銀行から融資を十分に得られないため、ベンチャーキャピタルからの出資はとても重要です。

出資に対する返済の義務はありませんが、出資に見合うリターンを提供することが望まれるでしょう。

ベンチャーキャピタルはハイリスク・ハイリターンという状況でベンチャー企業に投資しており、出資先の企業がすべて上場できるとは限らず、出資資金を回収できないケースもあります。


ベンチャーキャピタルの種類

ベンチャーキャピタルの種類を紹介します。主に7つのジャンルで成り立っています。

金融機関系

金融関係のベンチャーキャピタルとは、銀行や証券会社、保険会社などの金融機関のことです

日本のベンチャーキャピタルの大半は金融機関系に該当し、事業連携や経営支援などの分野に精通しています。

金融関係のベンチャーキャピタルを詳しく見ていきましょう。

  • 三菱UFJキャピタル:三菱UFJフィナンシャルグループから1974年に設立
  • 三井住友海上キャピタル:三井住友海上火災保険から1990年に設立
  • SMBCベンチャーキャピタル:三井住友銀行グループから2005年に設立
  • SBIインベストメント:SBIグループから1996年に設立
  • みずほキャピタル:みずほフィナンシャルグループから1983年に設立

独立系

独立系のベンチャーキャピタルとは、親会社を持たずに資本が独立している状態です。事業会社の系列を持たないため、出資に対する値上がり益を狙うケースが多い傾向があります

独立系のベンチャーキャピタルの具体的な企業名をまとめました。

  • 日本ベンチャーキャピタル:1996年に設立
  • 日本アジア投資:1981年に設立
  • グローバル・ブレイン:1998年に設立
  • グロービス・キャピタル・パートナーズ:2006年に設立
  • ジャフコグループ:1973年に設立

政府系

政府系のベンチャーキャピタルとは、国や地方公共団体、公的機関などが主体で設立されています

国内産業の活性化や日本企業のグローバル化などのために、優秀な技術力を持った未上場の企業に対して出資するケースが多いです。

  • 東京中小企業投資育成:1963年に設立事務所設置
  • DBJキャピタル:日本政策投資銀行グループから2010年に設立
  • 産業革新機構:INCJから2009年に設立
  • 産業革新投資機構:JICから2009年に設立
  • クールジャパン機構:海外需要開拓支援機構から2013年に設立

大学系

大学系のベンチャーキャピタルは、大学や研究機関と関わりのある未上場企業に対して出資しています

最先端の研究などを社会で実装できるように挑戦しているベンチャー企業などを主に支援しています。

大学系ベンチャーキャピタルの具体例をまとめました。

  • 東京大学エッジキャピタルパートナーズ:UTECから2004年に設立
  • 東京大学協創プラットフォーム開発:東大IPC、2016年に設立
  • 慶應イノベーション・イニシアティブ:KIIから2015年に設立
  • 大阪大学ベンチャーキャピタル:2014年に設立
  • 京都大学イノベーションキャピタル:2014年に設立

海外系

海外系のベンチャーキャピタルは主に日本国外に拠点があり、国内のベンチャーキャピタルよりも大規模な投資ファンドを有しています

世界中の企業に出資する海外系のベンチャーキャピタルは多くの実績や経験があるため、積極的に出資する傾向があります。

海外系のベンチャーキャピタルをまとめました。

  • Google Ventures:2009年発表
  • Sequoia Capital:1972年設立
  • Coral Capital:2019年設立
  • 500 Startups Japan:2010年設立
  • ATOMICO:2006年設立

地域系

地域系のベンチャーキャピタルは、都道府県や市町村などの特定地域で地域密着型の事業を展開する企業を支援しています。地方の金融機関が出資者として参加する場合もあります

地域系のベンチャーキャピタルをいくつかまとめました。

  • 北海道ベンチャーキャピタル:1999年に設立
  • ドーガン・ベータ:2017年に設立
  • 東北イノベーションキャピタル:2003年に設立

独立系インキュベーター/アクセラレーター

独立系インキュベーターとは、起業家やベンチャー企業の事業をサポートする組織です

企業価値の向上が目的で、経営資源などを提供します。インキュベーターの運営は、大学や地方自治体などの公的機関がおこなうケースが多い傾向があります。

アクセラレーターとはインキュベーターと同じ役割も持ちますが、具体的な支援の方法に違いがあります。

アクセラレーターは約3カ月〜6カ月のプログラムで支援し、企業の成長を急速に進めます。アクセラレーターの運営は大企業のケースが多いです。

独立系インキュベーターの具体例を紹介します。

  • ジェイ・シード:2000年に設立
  • Open Network Lab:2010年に設立
  • insprout :2006年に設立

ベンチャーキャピタルから投資を受けるメリット

ベンチャーキャピタルから投資を受けるメリットは主に3つあります。

出資額の返済義務がない

ベンチャーキャピタルから受けた出資は返済義務がないため、創業間もない起業家や資金力に不安のあるベンチャー企業にとって大きなメリットでしょう

ただし、次のようなケースは投資家が手を引く可能性がありますので、注意してください。

  • 出資が他社に譲渡
  • M&Aにより実質的な譲渡

ベンチャー企業が新たな経営者や株主によって運営されると、成長戦略や事業計画が変更される可能性があるためです。

経営スピードがアップ

出資会社からノウハウを提供されるため、経営スピードがアップするでしょう

具体的には、投資先の社内整備や上場しても問題のない管理体制を投資先の企業に求めます。

ベンチャーキャピタルは、支援して上場した投資先の株式を売却し、利益を獲得するなどの上場による出口戦略が主な目的のためです。

追加出資や借り入れが容易

ベンチャーキャピタルからの追加出資や借り入れは容易にできるため、中長期的な資金繰りへのメリットもあるでしょう。

特に1回でもベンチャーキャピタルから出資された企業の価値はとても高く、他のベンチャーキャピタルからの出資も受けやすくなります。


ベンチャーキャピタルから投資を受ける際に注意したいデメリット

ベンチャーキャピタルから投資を受ける際、注意すべきデメリットをまとめました。

持ち株比率が下がる

新株を発行すると起業家や会社全体の持ち株が下がるため、経営で不利な場面に遭遇しやすくなるでしょう。

例えば、株主総会の特別決議事項を通過させるには3分の2以上、普通決議の場合は過半数の議決権割合を維持しなければなりません

持ち株が少なくなる分、意思決定におけるスピード感が遅くなります。

また、ベンチャー企業が上場した場合、起業家が得る売却利益も減少するのもデメリットです。

出資に対するリターンが厳しく設定されている

多くのベンチャーキャピタルは、投資の利回り計算を意味するIRR(内部収益率)は30~60%と厳しく設定しています

これにより、投資されるスタートアップ企業は必要十分に利益を出さなければなりません。

今後の経営発展を願った踊り場(一時停滞)を作ることが許されるケースもありますが、踊り場を含めたIRRです。

ベンチャー企業の経営層は必ず利益を出さないといけないプレッシャーがかかるでしょう。


ベンチャーキャピタルから資金を調達する方法

ベンチャーキャピタルから資金調達する方法をまとめました。ぜひ参考にしてください。

ベンチャーキャピタルと接触

まずはベンチャーキャピタルと接触して認知を獲得しなければなりません。次のような情報媒体は日常的にチェックしましょう。

  • 新聞や雑誌
  • ニュース
  • ベンチャーキャピタルの企業HPやSNS
  • ネット記事

また、会計事務所や税理士事務所などが、ベンチャーキャピタルを紹介してくれるケースもあります。

ベンチャーキャピタルへ必要書類の提出

ベンチャーキャピタルと接触できたら、秘密保持契約書(NDA)を締結して必要な書類をベンチャーキャピタルへ提出します

提出する書類や説明しなければならない事柄を具体的にまとめました。

  • 事業計画書:今後5年間の売上や利益の推移と、上場予定年度の明確化
  • 直近3期分の決算書と株主名簿
  • 提供される商品・サービスの付加価値の説明
  • ターゲット市場の状況と今後の状況の記載書

ベンチャーキャピタルによる調査

出資が現実味を帯びてきた段階で、ベンチャーキャピタルから審査(デューデリジェンス)を受けます。

デュ―デリジェンス時には、経営層はベンチャーキャピタルへ積極的な協力体制を示しましょう。ベンチャーキャピタルからの不信感を拭うためです。

また、問題点や潜在的なリスクはすべて開示するなど、ベンチャーキャピタルからの協力を得られるように行動を起こすと、プラスに働くかもしれません。

監査法人によるショートレビュー

ベンチャーキャピタルが出資の決断時、監査法人によるショートレビューをする場合があります。

監査法人とは、企業の財務諸表が適切かどうかをチェックする会計士の法人組織です。

ショートレビューでは、監査法人から収益の水増しや費用の過小計上などが細かくチェックされます

ベンチャー企業はショートレビュー前に税理士へ相談して、対策案を練りましょう。

投資契約書の交渉

出資する方向に至った場合、投資額や持ち株比率などの細かい条件面を話し合う交渉に入ります。

ただし、出資が決定すると起業家たちの持ち株比率が下がる可能性がありますので、十分に対策を練りましょう

ストックオプションなどを活用するのがおすすめです。出資が正式に決まった段階で投資契約書を交わします。


ベンチャーキャピタル(VC)についてのまとめ

ベンチャーキャピタルの具体例や出資を受ける流れなどを解説しました。ベンチャー企業が中長期的に発展していくうえで、ベンチャーキャピタルから出資を受けるのは選択肢の1つに入るでしょう。

ベンチャー企業の経営者たちはメリットやデメリットを見極めて、十分に検討してください。


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監修者プロフィール

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竹中 啓倫

税理士・米国税理士・認定心理士

上場会社の経理部門で個別決算を中心とした決算業務に従事する傍ら、竹中啓倫税理士事務所を主宰する。
税理士事務所では、所得税・法人税を中心に申告業務を行っている一方で、外国税務に関するセミナー講師を行っている。
心理カウンセラーとして、不安を抱える人々に対して寄り添って、心の不安に答えている。
税理士会の会務では、名古屋税理士協同組合理事を務める。

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