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仕掛品とは? 製造業の経理で知っておきたい計上ルールや仕訳例を解説

仕掛品とは? 製造業の経理で知っておきたい計上ルールや仕訳例を解説

仕掛品とは、製造業などでよく見られる「作りかけ」の製品を指し、企業の将来的な資産として重要な役割を果たします。しかし、仕掛品の計上方法や適切な管理方法に悩む経理担当者は多いのではないでしょうか?

この記事では、仕掛品の基本的な理解から、正確な計上ルール、計算方法、そして実務で役立つ具体的な仕訳例まで、専門家の視点を交えて徹底解説します。

仕掛品に関する疑問を解消して経理業務の精度を高めたい方は、ぜひ最後までご覧ください。


この記事の監修者
  公認会計士・税理士・ファイナンシャルプランナー 

仕掛品(しかかりひん)とは?

仕掛品とは、製造過程の途中にある「作りかけ」の製品を指しており、企業会計における勘定科目です。業種によっては、仕掛品が「未成工事支出品」や「半成工事」と呼ばれます。

仕掛品は、製造業において各製品の原価計算が必要となる要素の一つであり、材料費、労務費、製造経費などが関連する原価要素を通じて計算されます。なお、原材料がある程度加工されたものが仕掛品です。


仕掛品と半製品・原材料・製品の違い

企業が製造するものは、原材料と仕掛品、半製品、製品の4つに大きく分けられます。それぞれの違いを詳しく解説します。

原材料とは

原材料は、製品を作るための基本的な素材であり、加工や組み立てが行われる前の状態を指します。原材料は、製品が作られる過程でさまざまな形に加工され、半製品や完成品へと進化していきます。

半製品とは

半製品とは、原材料が一定の工程を経て加工されたものの、最終製品にまだ至っていないものです。

半製品は、製品が完成するまでの過程でさらに加工されることが前提となっており、製造過程の途中段階に位置しますが、そのままの状態でも販売できる点が仕掛品と異なります。

製品とは

製品とは、最終的に販売される形態になったものを指します。製品は原材料や半製品が一連の製造工程を経て完成し、消費者に提供される状態になっています。


仕掛品の計上ルール

仕掛品を計上するときの具体的なルールを解説します。

計上タイミング

仕掛品を正確に計上するためには、定期的に棚卸し、仕掛品の数量や原価を把握する必要があります。

仕掛品になっている資産が多い場合、材料などが無駄になったり、製品の品質が低下したりします。仕掛品の残高を適切に管理することは、生産性の向上につながります。

勘定科目は「棚卸資産」

仕掛品の勘定項目は製品の製造コストを反映するために、原材料費、労務費、間接費などが含まれます。これらの費用は、仕掛品の原価として計上され、最終的には企業の売上になりますので、勘定項目は棚卸資産に該当します。

なお、建設業界では、仕掛品に相当する未完成の工事を「未成工事支出金」という独自の会計処理が行われます。


仕掛品の計算方法の種類

仕掛品を計算する際、4種類の計算方法がありますので、それぞれ詳しく見ていきましょう。

先入先出法

先入先出法(さきいれさきだしほう)は、最も古く取得されたものから払出しされると仮定し、期末棚卸資産の価額を算定する方法です。実際の財貨の流れと記帳の順序が一致しやすいため、在庫評価を正確に測れます。

期末棚卸資産とは、会計期間末日における商品在庫の金額です。

  • 直接材料費 = 当月分の直接材料費 /(完成品数量 – 月初仕掛品数量 + 月末仕掛品数量)× 月末仕掛品数量
  • 加工費 = 当月の加工費 /(完成品数量 – 月初仕掛品完成品換算量 – 月末仕掛品完成品換算量)× 月末仕掛品完成品換算

平均法

平均法は月初仕掛品の加工と、当月投入分の加工を並行して平均的に進めると仮定し、原価を配分する方法です。月初仕掛品原価と、当月製造費用の合計から平均単価を求め、それを利用して完成品原価と月末仕掛品原価を計算します。

平均法には、総平均法(期中の総平均で単価を計算)と移動平均法(受入時に平均単価を計算)の2種類があります。

  • 直接材料費 =(月初仕掛品原価 + 当月製造費用【共に直接材料費】)/(完成品数量 + 月末仕掛品数量)× 月末仕掛品数量
  • 加工費 =(月初仕掛品原価 + 当月製造費用【共に加工費】)/(完成品数量 + 月末仕掛品完成品換算量)× 月末仕掛品完成品換算量

後入先出法

後入先出法は「新しく仕入れた商品から出庫して売れたことにし、古く仕入れた商品は在庫として残る」という考え方に基づいて、在庫を計上する方法でした。しかし、2010年4月1日以降に開始する事業年度から廃止されています。

貸借対照表に計上される棚卸資産の評価額が、実際の市場価格(時価)と合致しない可能性があるためです。中小企業などでは、法人税法上で認められている「最終仕入原価法」が広く適用されています。

最終仕入原価法は、一番最後の仕入単価で期末の棚卸資産を評価する方法で、棚卸資産を簡単に評価できます。


仕掛品によくある仕訳例

仕掛品の仕訳例を紹介します。いずれもよくあるケースですので、ぜひ参考にしてください。

(製造業)製造するために原材料を出庫した

製品を製造するために材料を投入した場合、製品が完成せずに製造途中のときには、仕掛品勘定に計上します。

例えば、原材料2,000円を出庫して、製品の製造を始めた場合の仕訳方法は次の通りです。

仕掛品

2,000

材料費

2,000

(製造業)製造のために労務費と製造経費を費消した

製品の製造過程で労務費と製造経費が発生したときには、仕掛品勘定に計上します。

例えば、製品を製造するのに、労務費1,500円と製造経費1,500円を使った場合は次のような仕訳方法になります。

仕掛品

3,000

労務費

1,500

製造経費

1,500

(製造業)製品が完成した

製品が完成したときに仕掛品勘定から製品勘定に振替えます。

例えば、製造原価1万円の製品が完成した場合の仕訳方法は次の通りです。

製品

10,000

仕掛品

10,000

(建設業)未成工事支出金が発生した

工事が完了していない場合に、発生した原価を未成工事支出金勘定(仕掛品)に計上します。

例えば、当期に完了していない工事で、次のような費用が発生したケースの仕訳方法をまとめました。

  • 材料費:15万円
  • 労務費:10万円
  • 経費:5万円

未成工事支出金

300,000

材料費

100,000

労務費

150,000

経費

50,000

(建設業)工事が完成した

工事が完了した場合、未成工事支出金勘定(仕掛品)から完成工事原価に振替えます。

工事原価500,000円の工事が完了したケースの仕訳方法は次の通りです。

完成工事原価

500,000

未成工事支出金

500,000


仕掛品についてのまとめ

仕掛品は将来の売上になりますので、棚卸資産で計上しなければなりません。計算や仕訳の仕方は、生産方法やそのときの状況によって変化するため、仕掛品の扱い方は少々複雑です。

この記事で解説した内容をもとに、仕掛品の扱い方を正確に理解して正しく管理しましょう。


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監修者プロフィール

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内山 智絵

公認会計士・税理士・ファイナンシャルプランナー

大学在学中に公認会計士試験に合格。大手監査法人の地方事務所で上場企業の法定監査などに10年ほど従事した後、出産・育児をきっかけに退職。

2021年春に個人で会計事務所を開業し、中小監査法人での監査業務を継続しつつ、起業女性の会計・税務サポートなどを中心に行っている。

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