売価還元法とは? メリット・デメリットと評価方法をわかりやすく解説

売価還元法とは棚卸資産の評価方法の1つです。売価還元法は比較的容易に棚卸資産を評価できるなどのメリットがある一方、知っておきたいデメリットも存在します。
実際に取り入れる前に、詳しい評価方法や特徴について理解しておくことが大切です。この記事では、売価還元法とはなにか、用いるメリットやデメリットのほか計算手順を解説します。
売価還元法とは
売価還元法とは、棚卸資産における評価方法の1つです。
棚卸資産の評価方法では、品目別に評価する手法が多く、多数の品目を扱う業種では莫大な工数がかかります。しかし売価還元法では、値入率や回転率などを用いて棚卸資産をグループ化し、それぞれの原価を求める方法です。
他の評価方法と比べると比較的容易で、価格変動が起きても在庫の評価額と実際の価格との差が抑えられることから、小売業などで利用されています。
売価還元法を用いるメリット
売価還元法を用いるメリットは、棚卸資産をグループ分けするため、資産をまとめて評価できることです。
また、原価率を用いて計算するため棚卸資産を受け入れるたびに計算する必要がありません。
品目ごとの細かな管理や計算がないため、比較的容易に棚卸資産を評価できます。
売価還元法を用いるデメリット
売価還元法を用いるデメリットは、棚卸資産のグループ分けの難易度が高いことです。
値入率や回転率の類似性などを用いてグループ分けを行いますが、明確な基準などがなく判断が難しいです。
業種や状況によっても差が生まれるため、グループ分けがうまくいかないケースも多く、棚卸資産の評価が適切でない可能性もあります。
【計算】売価還元法による評価方法
ここでは、売価還元法による評価方法を4つのステップで詳しく紹介します。
1.グループ分けをする
売価還元法により棚卸資産を評価するためには、棚卸資産を値入率の違いによりグループ分けをする必要があります。
値入率とは棚卸資産の販売価額に占める利益額の割合です。たとえば販売価額が100円で利益が20円の場合、値入率は20%となります。
値入率が同じであれば原価率も同じです。売価還元法では、棚卸資産の販売価額に原価率を乗じることにより、決算日時点の棚卸資産の評価額を算定します。
したがって、原価率がばらばらの棚卸資産に対して一括で原価率を乗じた場合、棚卸資産の評価額が実態と乖離してしまい正しい評価額を把握できません。
あらかじめ棚卸資産を値入率の違いによりグループ分けしておき、値入率の近い棚卸資産に対しては同一の原価率を乗ずると、決算日時点の棚卸資産の評価額を適切に算定できます。
2.原価率を算出する
売価還元法は、決算日時点の棚卸資産の販売価額に原価率を乗じることで、在庫の評価額を算定します。
売価還元法が利用される小売業では、棚卸資産の種類が非常に多く、それぞれの商品の原価率も様々です。このような状況では、商品ごとの原価率を適切に把握し、グループ化を誤らないことが大切です。
なお、売価還元法には「売価還元原価法」と「売価還元低価法」の2種類があり、後者の方法は棚卸資産の収益性の低下を反映できる評価方法となっています。
どちらの方法を用いるかについては、会社の方針により異なりますが、毎期継続して同じ方法で評価を行う必要があります。
3.評価額を求める
原価率の算定が完了したら、それを決算日時点の棚卸資産の販売価額に乗じると棚卸資産の評価額を算定できます。
売価還元法は、決算日時点で保有する棚卸資産の「販売価額」と「原価率」が分かれば適用できるため、一つひとつの在庫について、購入価額や受入数量を都度把握する必要がなく、事務処理の手間を軽減できます。
このような特徴があるため、一般的には、様々な種類の在庫を大量に保有することが多い小売業(スーパーや百貨店等)において利用されています。
4.税務上は事前の届出が必要
法人税の計算において売価還元法を適用する場合は、税務署に対して事前の届出が必要です。法人税法上の棚卸資産の評価方法は、届出をしない場合は法定の評価方法である最終仕入原価法が適用されます。
会社の方針として売価還元法を適用したい場合には、「棚卸資産の評価方法の届出書」を税務署に提出することを忘れないようにしましょう。
売価還元法についてのまとめ
売価還元法の特徴は棚卸資産をグループ分けして、算出した原価率によって評価を行うことです。評価の方法は複数あるため、業種などによって適切な方法を選択する必要があります。
ぜひこの記事を参考に、他の評価方法との違いも含めて業種にあった特徴を理解しておきましょう。
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