第11回:新型コロナウイルス関連 助成金などの課税関係
新型コロナウイルスの影響により、助成金等を国や地方公共団体から支給された方も多いと思います。
その助成金等はそもそも申告が必要なのか、申告が必要な場合その所得の区分は事業所得でいいのか、また、その助成金等の計上時期は令和4年分でよいのかなど、疑問が生じるところであると思います。
今回はそのような疑問に対して、ご説明していきたいと思います。
なお、ここでの助成金等とは、国や地方公共団体から支給される助成金、補助金、給付金などをいいます。
基本的には、もらえる権利が確定した日に計上
所得税の法律では、「収入を、その収入すべき権利が確定した日に計上してください」と要請しています。
したがって、助成金等もこの考え方に沿って、その権利が確定した日に計上することが一つの基準となります。
一般的には、助成金の支給決定通知などが届きますので、そこに記載された支給決定日が権利の確定した日と考えられます。
ただ、実務的には支給決定日が記載されていない場合もあり、このような場合は、その通知書の到着した日、もしくは着金があった日の、いずれか早い日が権利確定日と考えられます。
課税対象とされている助成金等
※1 「経費発生時」とは、助成金等の支給対象となる経費を支出したときに収入計上するものです。
※2 助成金等による補填を前提として、あらかじめ所定の手続きを済ませている場合には、その収入計上時期は、その経費が発生した日(経費発生時)の属する年分となります。
※3 これらの助成金等を固定資産の取得等に充てた場合において、一定の要件を満たすときには、その固定資産の取得等に充てた部分の金額に相当する金額を、総収入金額に算入しない(総収入金額不算入)こととされています。
※4 この特別利子補給制度については、事前に最長3年分の利子相当額の交付を受けるものの、交付を受けた時点では収入として確定せず、支払利子の発生に応じてその発生する支払利子相当額の収入が確定し、無利子化される性質のものと考えられることを踏まえた取り扱いです。
所得区分の考え方
事業所得に区分されるものは、例えば、売上が減少したことに起因して支給される、もしくは利子補給のように、経費の補填を目的として支給されるものが該当します。感染防止協力金や利子補給金などがこれに該当します。
持続化給付金は、事業所得者、給与所得者、雑所得者それぞれに対して支給されているため、その申請の基になった収入の発生原因別に、持続化給付金の所得区分とする必要があります。
Go Toトラベル&イートは一時所得
いわゆる「Go To~」に関しては一時所得に該当します。現在では、2022年10月11日からスタートした「全国旅行支援」などが後継として実施されています。一時所得は、収入から、その収入のために支出した金額を引き、さらに特別控除50万円を引いた金額になります。
「全国旅行支援」のみで一時所得を考えると、旅行の割引相当額など、実際に得をした分から50万円を引いた金額です。
一時所得は、特別控除50万円があるため、「全国旅行支援」の割引額等のみで、実際に課税の対象となる人は少ないかもしれませんが、例えば、ふるさと納税のお礼を受け取ったりしていると、これらの総額で50万円を超える場合、「全国旅行支援」も含めて申告をしなければいけないケースがあると思いますので、ご注意ください。
雇用調整助成金の計上時期
雇用調整助成金は、事前の休業等計画届に基づいて、従業員に休業手当等を支給し、その経費を補填するために交付される助成金です。
このような助成金は、申請してから一定期間経過後に交付決定がされますが、あらかじめ交付を受けるために必要な計画書等を提出しているため、その年に交付決定がされていなくても、休業手当の支給と対応させる必要があります。つまり、申請金額をあらかじめ収入に計上させる必要があるということです。
これが、通常の雇用調整助成金の収益計上時期に対する考え方です。
一方、今回の新型コロナウイルス感染症に伴って、特例措置により申請した場合は、原則通りの交付決定日に収益計上することになります。事前の計画書等の届出が不要となっているためです。
利子補給金の計上時期
新型コロナウイルス感染症の影響に伴い、金融機関による実質無利子、無担保、無保証料による貸付が実施されました。
保証料に関しては、債務者から信用保証協会への支払いはなく、国から支払われるため、計上等はしなくてもよいことになります。
利子補給金に関しては、最長3年分の利子を国が肩代わりしてくれるものです。その補給金は、借入後まもなく3年間分が給付され、通常の返済と同じように利子の支払いを行っていくものとなっています。
ただ、その融資契約の変更等があった場合には、その補給金額も変わります。つまり、3年経過してみないとわからないため、利子補給を受けた時点では、その収入が確定しているとはいえないと考えられます。
したがって、処理としては、利子補給金の収入があった場合には収入として計上せず、その利子補給金に対応する利子の支払いがあったときに、その金額と同額の利子補給金を収入に計上することになります。
仕訳例としては以下のようになります。
(利子補給金受取時)
普通預金 | 50,000円 | 前受金 | 50,000円 |
(利息支払時)
支払利息 | 1,000円 | 普通預金 | 1,000円 |
前受金 | 1,000円 | 雑収入 | 1,000円 |
新型コロナウイルス感染症に伴う、申告納付期限の個別延長
新型コロナウイルスの影響で、3月15日(水)までに申告および納付をすることが困難な場合もあります。例えば、経理担当者が罹患した、あるいは税理士事務所で新型コロナが発生したような場合が考えられます。
このような場合でも、個別延長の申請を行うことにより、申告・納付期限を延長することが可能となっています。
具体的には、「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を提出する方法によって行います。
ここで気を付けたいのは、個別延長をして申告書を提出した日が、その納税者の法定納期限として取り扱われる点です。所得税は、申告期限が納付期限なので、この場合、申告が先行して納付が後になると、その期間分の延滞税が課される場合もあります。納付金額にもよりますが、申告書の提出と税金を納付するタイミングは気を付けましょう。
引用・参考:国税庁
「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取り扱いに関するFAQ」
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