確定申告での必要書類まとめ! スムーズに処理するためのポイントも解説
確定申告では、年間の所得を申告してそれに関する所得額を計算するため、本人確認書類などの多様な書類が必要となります。
職業や控除する項目によって必要書類は異なるため、自分に該当する必要な書類を充分に理解し、過不足なく揃えることで、確定申告をスムーズに終わらせることが可能です。
本記事では、全員に共通して必要な書類や、個人事業主が青色申告や白色申告を行う場合に求められる書類、会社員が医療費控除や住宅ローン控除を受けるために必要な書類について解説します。
【共通】確定申告で必要な書類
全員に共通して必要な書類は以下の5点です。
- 確定申告書
- 本人確認書類
- 所得金額がわかるもの
- 銀行口座がわかるもの
- 控除証明書
一つずつ具体的に解説します。
確定申告書
確定申告書は、確定申告で提出するメインの書類です。第一表と第二表の2枚綴りになっています。
これまで確定申告書は「申告書A」と「申告書B」に分かれていましたが、令和4年分から申告書Bに統一されました。
なお、確定申告書には第三表と第四表もあり、譲渡所得や山林所得などがある場合は第三表、損失申告を行う場合は第四表を使用します。
本人確認書類
次に、本人確認書類が必要です。必要な本人確認書類は、マイナンバーカードを持っている場合と持っていない場合で異なります。
マイナンバーカードを持っている場合は、マイナンバーカードの添付または提示のみで本人確認が可能です。
ただし、添付する場合には表面及び裏面の写しが必要です。
マイナンバーカードを持っていない場合は、以下の表のとおり、本人のマイナンバーを確認できる書類と、身元確認書類の添付または提示が必要です。
番号確認書類 (本人のマイナンバーを確認できる書類) |
などのうち、いずれか1つ |
身元確認書類 (記載したマイナンバーの持ち主であることを確認できる書類) |
などのうち、いずれか1つ |
所得金額がわかるもの
次に、所得金額を証明する書類が必要です。青色申告の場合は「青色申告決算書」、白色申告の場合は「収支内訳書」を用意します。
これらの書類以外にも、源泉徴収票や株の取引による所得を計算した年間取引計算書など、収入が明らかになる書類を揃えておくようにしましょう。
銀行口座がわかるもの
所得税を実際より多く負担している場合は、確定申告で所得税の還付を受けられるため、還付がある場合に還付金を受け取る銀行口座がわかる書類が必要です。
還付金の受け取り方法は以下の2つです。
- 預貯金口座への振込み
- ゆうちょ銀行または郵便局に出向いて受け取り
口座振込の場合、銀行口座の情報を確定申告書に記載するため、銀行口座の情報がわかる通帳コピーなどを準備する必要があります。コピーなどの添付は不要です。
なお、公金受取口座を登録済みの場合は、令和5年1月より公金受取口座への振込みを指定できます。
控除証明書
確定申告では、個人の所得から差し引く「所得控除」と、所得税額から差し引く「税額控除」が認められています。
一律に控除される基礎控除以外の控除を受ける場合には、所得控除や税額控除の適用を証明できる書類が必要です。
証明書類の取得にあたっては、特定の機関へ申請が必要な場合もあるため、事前に確認して用意するようにしましょう。
【ケース別】会社員が控除を受けるために必要となる書類
会社員が控除を受けるために書類が必要となるケースは、以下のとおりです。
- 医療費控除を受ける場合
- 災害や盗難を受けた場合
- 住宅ローン控除を受ける場合
- ふるさと納税をしている場合
- 2か所以上から給料を貰っている場合
- 会社を退職している場合
一つずつ具体的に解説します。
医療費控除を受ける場合
医療費控除を受ける場合、「医療費控除の明細書」が必要です。以前は領収書の添付が必要でしたが、領収書の代わりに、病院や薬局の名称、かかった金額などを記載した医療費控除の明細書の作成と添付が求められています。
書式は、国税庁のホームページからダウンロード可能です。
なお、「医療費のお知らせ」などの医療機関からの医療費通知がある場合は、医療費通知を添付すると医療費控除の明細書を省略できます。
災害や盗難を受けた場合
災害や盗難、横領などで損害を受けた場合、その損失の一部を所得控除として認める「雑損控除」が適用されることがあります。
雑損控除の適用を受けるためには、以下の書類が必要です。
- 被災証明書または罹災証明書
- 雑損失の金額の計算書
- 災害に関連したやむを得ない支出の領収書
- 保険金による補填額が分かる書類
上記のうち、「雑損失の金額の計算書」は国税庁のホームページからダウンロードできます。
住宅ローン控除を受ける場合
住宅ローン控除とは「住宅借入金等特別控除」を指します。住宅ローン控除は、適用2年目以降は年末調整で処理されますが、初めて適用を受ける場合は確定申告が必要です。
例えば、新築の家屋を購入した場合、初回申告時に必要な書類は以下のとおりです。
- 「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書」
- 金融機関などから交付された「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」
- 家屋の「登記事項証明書」の原本
- 家屋の「工事請負契約書」または家屋の「売買契約書」の写しなど、家屋の取得対価の額を明らかにする書類
上記のうち、「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書」は国税庁のホームページからダウンロードできます。
なお、中古物件や認定住宅などに該当する場合は、必要な書類が異なるため、国税庁のホームページで確認してください。
ふるさと納税をしている場合
寄付をした自治体数が年間で5団体以内の場合は、ワンストップ特例制度を適用できます。ワンストップ特例制度は、寄附の際に自治体へ申請をすると確定申告が不要となる制度です。
ただし、年間で5団体を超える自治体に寄付した場合や、寄付の際に自治体への申請を忘れた場合などには、ワンストップ特例制度が適用されないため、確定申告が必要です。
寄附した団体などから交付を受けた寄附金の受領証(領収書)を用意しましょう。
2か所以上から給料を貰っている場合
2か所以上から給料を貰っている場合、それぞれの給与所得を再計算し、正しい所得税を算出するため、確定申告が必要です。すべての勤務先から受け取った源泉徴収票を提出します。
ただし、年末調整を行っていない「従たる給与」が年20万円を超えない場合は、確定申告は不要です。
会社を退職している場合
給与所得者が年の途中で退職すると、勤務先で年末調整を受けられないため、確定申告が必要です。
退職時に受け取った源泉徴収票をもとに、確定申告書に退職所得や給与所得などを記載します。
なお、退職後に再就職し、再就職先で前職分の給与を含めて年末調整を受けた場合は、確定申告は不要です。
個人事業主やフリーランスが確定申告するときの必要書類
続いて、個人事業主やフリーランスの確定申告では、青色申告と白色申告で必要な書類が異なります。
それぞれについて詳しく解説します。
青色申告を行う際に必要な書類
青色申告を行うためには、青色申告の承認申請を税務署に提出する必要があります。
税務署の承認後、青色申告では「青色申告決算書」の作成と確定申告書への添付が必要です。
青色申告決算書は、年間の収入や経費などをまとめた書類で、損益計算書とその内訳、貸借対照表で構成され、全4枚あります。
なお、青色申告決算書には、一般用様式と不動産所得様式、農業所得様式、現金主義様式の4種類あり、 不動産や農業などに該当しない限り、基本的には一般様式を使用します。
白色申告を行う際に必要な書類
税務署に青色申告を届け出ていない事業者は、白色申告を行います。白色申告では「収支内訳書」の作成と添付が必要です。
収支内訳書には、収入や経費の額、売上先や仕入先別の内訳、経費に関連する内訳を記載します。
日々の取引の記録を転記するため、取引を記載した帳簿を完成させておくことが重要です。なお、帳簿の作成は白色申告者の義務となっています。
年金受給者が確定申告するときの必要書類
年金受給者は、公的年金などの受取額が400万円以下で、公的年金以外の所得金額(給与や個人年金など)が年間20万円以下の場合、確定申告は不要です。
ただし、各種控除(医療費控除など)の対象になっている、公的年金以外の収入が年間20万円を超えるなどの場合は確定申告が必要となります。
また、所得税の還付を受ける場合にも確定申告が必要です。確定申告を行う場合は、控除に必要な書類や、公的年金以外の収入を証明する報酬支払調書を用意しましょう。
確定申告をスムーズに終わらせるポイント
確定申告をスムーズに終わらせるポイントは、以下の3点です。
- テンプレートを活用する
- ツールを活用する
- 税理士に代行してもらう
一つずつ具体的に解説します。
テンプレートを活用する
確定申告で必要な書類は、テンプレートが用意されているものも多く、あらかじめ準備しておくと確定申告の準備にかかる時間を短縮できます。
ビズオーシャンでは、確定申告に使用できるテンプレートをまとめているため、ぜひ活用してみてください。
ツールを活用する
確定申告ソフトなどのツールを活用すると、確定申告にかかる労力や時間を短縮できます。
確定申告では、確定申告書の正確な作成と必要書類の準備が重要です。国税庁ホームページで書類の記入方法や必要書類が記載されているものの、個人で準備する場合は膨大な労力と時間がかかります。
確定申告ソフトを使うと抜けもれなく記載でき、必要書類の把握も可能です。無料で利用できるツールもあるため、利用を検討しましょう。
税理士に代行してもらう
確定申告を税理士に代行してもらうのも一つの方法です。費用はかかるものの、時間が節約できる、正確に申告できるなどのメリットが大きいため、自分で対応する時間がとれない場合におすすめです。
また、税理士には税務相談を行うことも可能で、日々の事業における将来の不安や、気になることなどを相談できるため、税務に詳しい相談者を得られるメリットも大きいといえます。
確定申告の必要書類についてのよくある質問
確定申告の必要書類について、よくある質問をまとめました。
確定申告に必要な書類の保管期間は?
確定申告に必要な書類の保管期間は、書類によって異なります。
以下の表に、保存が必要なものと保管期間をまとめました。
保存が必要なもの |
保管期間 |
|
---|---|---|
共通 |
確定申告書の控え |
1年 |
青色申告 |
帳簿 (仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳など) |
7年 |
決算関係書類 (損益計算書、貸借対照表、棚卸表など) |
7年 |
|
現金預金取引等関係書類 (領収証、小切手控、預金通帳、借用証など) |
7年(※) |
|
その他の書類 (取引に関して作成し、または受領した上記以外の書類(請求書、見積書、契約書、納品書、送り状など)) |
5年 |
|
白色申告 |
収入金額や必要経費を記載した帳簿(法定帳簿) |
7年 |
業務に関して作成した上記以外の帳簿(任意帳簿) |
5年 |
|
決算に関して作成した棚卸表その他の書類 |
5年 |
|
業務に関して作成し、又は受領した請求書、納品書、送り状、領収書などの書類 |
5年 |
(※)前々年分の事業所得・不動産所得の金額が300万円以下の場合は5年
なお、上記の保管期間は、確定申告期間の最終日(3月15日)の翌日から起算します。
2024年度(令和5年度)の書類提出期限は?
2024年度(令和5年度)の書類提出期限は、以下のとおりです。期限を守って忘れずに申告しましょう。
※令和5年度の消費税に係る確定申告の提出期限日は、通常の期限日である3月31日が日曜日であるため、4月1日(月)となっています。
所得税の確定申告期間 |
2024年2月16日〜2024年3月15日 |
消費税の確定申告期間 |
2024年2月16日~2024年4月1日 |
贈与税の申告・納税期間 |
2024年2月1日~2024年3月15日 |
2024年(令和5年分)の確定申告から、マイナポータル連携で自動入力できる項目に「給与所得の源泉徴収票、国民年金基金掛金、iDeCo、小規模企業共済掛金」が追加されます。
また、令和6年1月以降、国税庁の確定申告書等作成コーナーでインボイス発行事業者の消費税の申告書を作成できるようになります。
消費税納付額を売上税額の2割に軽減する「2割特例」の申告書も作成可能です。インボイス登録で課税事業者になった方は確認しておきましょう。
確定申告時には必要書類を確認しておこう
確定申告は必要な書類が多く、複雑に見えるかもしれません。しかし、事前に自分に該当する必要な書類を把握し、テンプレートやツールを活用して適切に準備すると、スムーズに確定申告を終えられます。
また、確定申告に必要となる書類の紛失にも注意が必要です。書類によっては、紛失すると再取得に時間がかかる場合や、再取得ができないものもあります。
確定申告で不要な手間やストレスを減らすために、日頃から書類をしっかり管理しておくようにしましょう。