減価償却資産別に耐用年数を紹介! 適用時のポイントも併せて押さえよう
企業や店舗を運営する際、長期的に使用する建物や設備、車両などは「有形固定資産」に該当します。
有形固定資産は損耗によって徐々にその価値が減少するため、資産ごとの耐用年数をもとに減価償却を行います。耐用年数は資産の構造や用途によって細かく定められているため、資産ごとにどの耐用年数が適用されるのか正しく理解することが大切です。
この記事では、主な減価償却資産別の耐用年数と、適用時のポイントをわかりやすく解説します。
減価償却資産の耐用年数とは
まずは、減価償却資産の耐用年数について基礎知識を整理しましょう。混同しやすい「耐久年数」との違いも解説します。
耐用年数の定義
耐用年数は「法定耐用年数」のことで、減価償却資産が利用できる期間です。実務上は税法上の耐用年数を採用して決定されることが一般的ですが、その年数は、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」によって細かく定められています。
減価償却資産は使用するにつれて物理的に損耗し、資産価値が減少します。減価償却資産の使用を開始した日から、その価値がなくなるまでの期間を耐用年数として、毎年少しずつ減価償却費を計上します。
耐用年数と耐久年数の違い
耐用年数は税法上、減価償却資産が価値を持つ期間です。一方、「耐久年数」とは、メーカーなどが独自の判断基準によって、「このくらいの期間であれば問題なく使用できる」と目安を公表している期間になります。
耐用年数はあくまでも減価償却を行うために定められた期間であり、減価償却資産を物理的に使用できなくなるまでの期間ではないところがポイントです
耐用年数が定められる理由
税法上、減価償却資産の耐用年数が詳細に定められている理由は、資産が使用できる期間を納税者の判断に委ねず、国が基準を設けることで公正性を保つためです。
また、決まった耐用年数をもとに計上することで、「この資産の耐用年数は何年にすべきか」と納税者が悩む必要がなく、計算も容易です。
減価償却資産別に見る耐用年数
ここでは、主な減価償却資産別に耐用年数の具体例を紹介します。
建物の耐用年数
建物の耐用年数は、構造や用途、使用目的などによって細かく分かれています。
構造・用途 |
細目 |
耐用年数 |
---|---|---|
木製・合成樹脂 |
事務所用のもの |
24 |
店舗用・住宅用のもの |
22 |
|
飲食店用のもの |
20 |
|
旅館用・ホテル用・病院用・車庫用のもの |
17 |
|
公衆浴場用のもの |
12 |
|
工場用・倉庫用のもの(一般用) |
15 |
|
木骨モルタル造 |
事務所用のもの |
22 |
店舗用・住宅用のもの |
20 |
|
飲食店用のもの |
19 |
|
旅館用・ホテル用・病院用・車庫用のもの |
15 |
|
公衆浴場用のもの |
11 |
|
工場用・倉庫用のもの(一般用) |
14 |
|
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造 |
事務所用のもの |
50 |
住宅用のもの |
47 |
|
飲食店用のもの(延べ面積のうちに占める木造内装部分の面積が30%を超えるもの) |
34 |
|
飲食店用のもの(その他のもの) |
41 |
|
旅館用・ホテル用のもの(延べ面積のうちに占める木造内装部分の面積が30%を超えるもの) |
31 |
|
旅館用・ホテル用のもの(その他のもの) |
39 |
|
店舗用・病院用のもの |
39 |
|
車庫用のもの |
38 |
|
公衆浴場用のもの |
31 |
|
工場用・倉庫用のもの(一般用) |
38 |
|
れんが造・石造・ブロック造 |
事務所用のもの |
41 |
店舗用・住宅用・飲食店用のもの |
38 |
|
旅館用・ホテル用・病院用のもの |
36 |
|
車庫用のもの |
34 |
|
公衆浴場用のもの |
30 |
|
工場用・倉庫用のもの(一般用) |
34 |
|
金属造 |
事務所用のもの(骨格材の肉厚が、4mmを超えるもの) |
38 |
事務所用のもの(骨格材の肉厚が、3mmを超え、4mm以下のもの) |
30 |
|
事務所用のもの(骨格材の肉厚が、3mm以下のもの) |
22 |
|
店舗用・住宅用のもの(骨格材の肉厚が、4mmを超えるもの) |
34 |
|
店舗用・住宅用のもの(骨格材の肉厚が、3mmを超え、4mm以下のもの) |
27 |
|
店舗用・住宅用のもの(骨格材の肉厚が、3mm以下のもの) |
19 |
|
飲食店用・車庫用のもの(骨格材の肉厚が、 4mmを超えるもの) |
31 |
|
飲食店用・車庫用のもの(骨格材の肉厚が、3mm超え、4mm以下のもの) |
25 |
|
飲食店用・車庫用のもの(骨格材の肉厚が、3mm以下のもの) |
19 |
|
旅館用・ホテル用・病院用のもの(骨格材の肉厚が、4mmを超えるもの) |
29 |
|
旅館用・ホテル用・病院用のもの(骨格材の肉厚が、3mmを超え、4mm以下のもの) |
24 |
|
旅館用・ホテル用・病院用のもの(骨格材の肉厚が、3mm以下のもの) |
17 |
|
公衆浴場用のもの(骨格材の肉厚が、4mmを超えるもの) |
27 |
|
公衆浴場用のもの(骨格材の肉厚が、3mmを超え、4mm以下のもの) |
19 |
|
公衆浴場用のもの(骨格材の肉厚が、3mm以下のもの) |
15 |
|
工場用・倉庫用のもの(一般用)(骨格材の肉厚が、4mmを超えるもの) |
31 |
|
工場用・倉庫用のもの(一般用)(骨格材の肉厚が、3mmを超え、4mm以下のもの) |
24 |
|
工場用・倉庫用のもの(一般用)(骨格材の肉厚が、3mm以下のもの) |
17 |
建物附属設備の耐用年数
建物附属設備とは、エレベーター・自動ドア・冷暖房設備など、建物に組み込まれている設備のことで、建物の使用価値の向上に寄与します。耐用年数は次の通りです。
構造・用途 |
細目 |
耐用年数 |
---|---|---|
アーケード・日よけ設備 |
主として金属製のもの |
15 |
その他のもの |
8 |
|
店舗簡易装備 |
- |
3 |
電気設備(照明設備を含む。) |
蓄電池電源設備 |
6 |
その他のもの |
15 |
|
給排水・衛生設備、ガス設備 |
- |
15 |
車両・運搬具の耐用年数
車両・運搬具は、「一般用」と「運送事業用・貸自動車業用・自動車教習所用」に大きく区分されます。耐用年数は、車両の用途や総排気量などをもとに定められています。
構造・用途 |
細目 |
耐用年数 |
---|---|---|
農林業用のもの |
主としてコンクリート造、れんが造、石造又はブロック造 果樹棚又はポップ棚 |
14 |
その他(頭首工、えん堤、ひ門など) |
17 |
|
主として金属造のもの(農用井戸、かん水用又は散水用配管など) |
14 |
|
主として木造のもの |
5 |
|
土管を主としたもの |
10 |
|
その他 |
8 |
器具・備品の耐用年数
「器具・備品」とは、業務で使用するパソコンや時計、ガス機器などのことです。構造や用途によって耐用年数が定められています。主な器具・備品の耐用年数を表にまとめました。
構造・用途 |
細目 |
耐用年数 |
---|---|---|
家具、電気機器、ガス機器、家庭用品(他に揚げてあるものを除く。) |
事務机、事務いす、キャビネット 主として金属製のもの |
15 |
事務机、事務いす、キャビネット その他のもの |
8 |
|
応接セット 接客業用のもの |
5 |
|
応接セット その他のもの |
8 |
|
ベッド |
8 |
|
児童用机、いす |
5 |
|
陳列だな、陳列ケース 冷凍機付・冷蔵機付のもの |
6 |
|
陳列だな、陳列ケース その他のもの |
8 |
|
その他の家具 接客業用のもの |
5 |
|
その他の家具 接客業用以外のもの 主として金属製のもの |
15 |
|
その他の家具 接客業用以外のもの 主として金属製でないもの |
8 |
|
ラジオ、テレビジョン、テープレコーダーその他の音響機器 |
5 |
|
冷房用・暖房用機器 |
6 |
|
電気冷蔵庫、電気洗濯機その他これらに類する 電気・ガス機器 |
6 |
|
氷冷蔵庫、冷蔵ストッカー(電気式のものを除 く。) |
4 |
|
カーテン、座ぶとん、寝具、丹前その他これらに類する繊維製品 |
3 |
|
じゅうたんその他の床用敷物 小売業用・接客業用・放送用・レコード吹込用・劇場用のもの |
3 |
|
じゅうたんその他の床用敷物 小売業用・接客業用・放送用・レコード吹込用・劇場用以外のもの |
6 |
|
室内装飾品 主として金属製のもの |
15 |
|
室内装飾品 その他のもの |
8 |
|
食事・ちゅう房用品 陶磁器製・ガラス製のもの |
2 |
|
食事・ちゅう房用品 その他のもの |
5 |
|
上記に当てはまらないその他のもの 主として金属製のもの |
15 |
|
上記に当てはまらないその他のもの 主として金属製以外のもの |
8 |
|
事務機器、通信機器 |
謄写機器、タイプライター 孔版印刷・印書業用のもの |
3 |
謄写機器、タイプライター その他のもの |
5 |
|
電子計算機 パーソナルコンピュータ(サーバー用のものを除く。) |
4 |
|
電子計算機 その他のもの |
5 |
|
複写機、計算機(電子計算機を除く。)、金銭登録機、タイムレコーダーその他これらに類するもの |
5 |
|
その他の事務機器 |
5 |
|
テレタイプライター、ファクシミリ |
5 |
|
インターホーン、放送用設備 |
6 |
|
電話設備その他の通信機器 デジタル構内交換設備、デジタルボタン電話設備 |
6 |
|
電話設備その他の通信機器 その他のもの |
10 |
減価償却資産に耐用年数を適用するときのポイント
最後に、減価償却資産に耐用年数を適用する際のポイントを紹介します。
耐用年数は税法上の法定耐用年数になるとは限らない
耐用年数は「経済的に使用可能」と予測される年数であり、使用する者が資産のおかれた条件等を考慮して自主的に決定するものです。
ただし、実務上はこの税法上の取扱いに従って耐用年数を決定するのが一般的です。税法では、税金計算上の減価償却費を公平に計算するために詳細な定めがあるためです。
同じ企業の同じ資産でも会計上の耐用年数と税法上の耐用年数が異なる場合があり、その場合は、会計上の減価償却費と税法上の減価償却費が異なります。
耐用年数は用途によって変化する
種類や構造が減価償却資産であっても、用途によって耐用年数が異なることがあります。
例えば、建物の耐用年数は、「事務所用のもの」「店舗用・住宅用のもの」など用途が細かく分かれており、耐用年数にも開きがあります。
耐用年数は資産の構造によって変化する
耐用年数は同じ用途の資産であっても資産の構造によって年数が異なることがあります。
例えば、建物附属設備のアーケード・日よけ設備は「金属製のもの」「金属製以外のもの」といった構造の違いによって、異なる耐用年数が定められています。
貸与資産は貸付先の用途で判断する
他人に貸付けを行っている減価償却資産は、貸付先での用途に応じて決定するのが原則です。ただし、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」において、貸付業用として記載がある資産についてはこの限りではありません。
耐用年数を理解して正しく減価償却しよう
減価償却には複雑な処理が必要だと思っている方も多いでしょう。しかし、資産ごとの耐用年数表の見方と計算方法を覚えれば、それほど難しいものではありません。
本記事を参考に、自社が持つ資産の耐用年数を理解し、正しく減価償却できるようにしましょう。
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