中古資産の耐用年数は何年? 計算方法やポイントを解説

中古資産の耐用年数の設定方法は、新品の資産と異なります。
中古資産を正確に会計処理するためには、適切な耐用年数の設定が不可欠です。
本記事では、中古資産の耐用年数の定義や計算方法について解説します。
中古資産の耐用年数とは
新品の事業用資産を取得する際には、資産が利用可能な期間である「耐用年数」にわたって減価償却を行います。
耐用年数は、その用途や資産の種類に応じて税法で定められており、税法上の耐用年数を「法定耐用年数」と呼びます。
ただし、法定耐用年数は新品の資産を前提としているため、中古資産の場合にはそのまま適用することができません。耐用年数の重要性とあわせて詳しく解説します。
耐用年数の重要性
耐用年数は減価償却に必要な計算要素です。
減価償却を正確に行うことができるかは、税金計算にも影響を与えるので、、耐用年数の適切な設定が不可欠です。
また、耐用年数を正確に設定すると今後の減価償却費の予想が可能となり、管理会計に活用することができます。
中古資産の耐用年数の定義
中古資産の耐用年数の定義は、税法で定められています。
中古資産を取得した場合、耐用年数は法定耐用年数ではなく、その事業を行ううえで使用した時以後の使用可能期間として見積もった年数によって設定する点に注意が必要です。
使用可能期間の見積もりが困難な場合は、簡便法を利用することができます(簡便法については後述します)。
ただし、中古資産を事業の用に供するために行った資本的支出の金額が、その中古資産の再取得価額(同じものを新品で取得する時の価額)の50%相当の金額を超える場合は、法定耐用年数が適用されます。
減価償却資産別の法定耐用年数の調べ方
中古資産の耐用年数を設定するためには、新品資産の法定耐用年数を参照します。
法定耐用年数の調べ方について、主要な資産である「建物」「車両」「器具や備品」に分けて説明します。
建物の法定耐用年数
建物の主な法定耐用年数をまとめた表は、以下のとおりです。
構造・用途 |
細目 |
耐用年数(年) |
木造・合成樹脂造のもの |
事務所用のもの |
24 |
店舗用・住宅用のもの |
22 |
|
飲食店用のもの |
20 |
|
木骨モルタル造のもの |
事務所用のもの |
22 |
店舗用・住宅用のもの |
20 |
|
飲食店用のもの |
19 |
|
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造のもの |
事務所用のもの |
50 |
住宅用のもの |
47 |
|
飲食店用のもの
|
34 41 |
|
旅館用・ホテル用のもの
|
31 39 |
|
店舗用・病院用のもの |
39 |
出典:国税庁ホームページ
構造・用途に応じて耐用年数が細かく定められています。建物や建物付属設備のその他の構造・用途の耐用年数については、国税庁ホームページを参照してください。
車両の法定耐用年数
車両の主な法定耐用年数をまとめた表は、以下のとおりです。
構造・用途 |
細目 |
耐用年数(年) |
一般用のもの(特殊自動車・次の運送事業用等以外のもの) |
自動車(2輪・3輪自動車を除く。) 小型車(総排気量が0.66リットル以下のもの) 貨物自動車 ダンプ式のもの その他のもの 報道通信用のもの その他のもの |
4 4 5 5 6 |
2輪・3輪自動車 |
3 |
|
自転車 |
2 |
|
リヤカー |
4 |
|
運送事業用・貸自動車業用・自動車教習所用のもの |
自動車(2輪・3輪自動車を含み、乗合自動車を除く。) 小型車(貨物自動車にあっては積載量が2トン以下、その他のものにあっては総排気量が2リットル以下のもの) 大型乗用車(総排気量が3リットル以上のもの) その他のもの |
3 5 4 |
乗合自動車 |
5 |
|
自転車、リヤカー |
2 |
|
被けん引車その他のもの |
4 |
構造・用途 |
細目 |
耐用年数(年) |
家具、電気機器、ガス機器、家庭用品 |
事務机、事務いす、キャビネット 主として金属製のもの その他のもの |
15 8 |
応接セット 接客業用のもの その他のもの |
5 8 |
|
ラジオ、テレビジョン、テープレコーダーその他の音響機器 |
5 |
|
冷房用・暖房用機器 |
6 |
|
事務機器、通信機器 |
電子計算機 パーソナルコンピュータ(サーバー用のものを除く。) その他のもの |
4 5 |
インターホーン、放送用設備 |
6 |
|
電話設備その他の通信機器 デジタル構内交換設備、デジタルボタン電話設備 その他のもの |
6 10 |
出典:国税庁ホームページ
工具、器具・備品のその他の構造・用途の耐用年数については、国税庁ホームページを参照してください。
機械や装置の法定耐用年数
機械や装置の主な法定耐用年数をまとめた表は、以下のとおりです。
構造・用途 |
細目 |
耐用年数(年) |
食料品製造業用設備 |
10 |
|
飲料・たばこ・飼料製造業用設備機器 |
|
10 |
繊維工業用設備 |
炭素繊維製造設備 黒鉛化炉 その他の設備 その他の設備 |
3 7 7 |
木材・木製品(家具を除く。)製造業用設備 |
8 |
|
家具・装備品製造業用設備 |
11 |
|
パルプ・紙・紙加工品製造業用設備 |
12 |
出典:国税庁ホームページ
機械・装置のその他の構造・用途の耐用年数については、国税庁ホームページを参照してください。
耐用年数の計算方法
中古資産の耐用年数の計算方法には「簡便法」と「見積法」があります。
それぞれについて詳しく解説します。
原則的には「見積法」を採用することとなりますが、見積法の採用は実務上困難であることが多いため「簡便法」を採用することが一般的です。
なお、前述したとおり、中古資産を資本的支出の額が、中古資産と同じものを新品で買ったときの価格の50%を超える場合は、法定耐用年数を使用するため注意しましょう。
簡便法による計算方法
まずは、より一般的な方法である「簡便法」から見ていきます。
簡便法による計算方法は、以下の2通りです。
- 法定耐用年数のすべてを経過している場合
- 法定耐用年数の一部を経過している場合
それぞれについて詳しく解説します。
法定耐用年数のすべてを経過している
中古資産を取得した時点で、法定耐用年数のすべてを経過している場合の計算方法は以下のとおりです。
中古資産の耐用年数=法定耐用年数×20%
端数は切り捨てとし、2年未満は2年とします。
例えば、法定耐用年数が8年の資産を取得して10年経過していた場合の計算は以下のとおりです。
法定耐用年数8年×20%=1.6年
端数を切り捨てると1年ですが、2年未満のため耐用年数は「2年」となります。
法定耐用年数の一部を経過している
中古資産を取得した時点で、法定耐用年数のすべてを経過している場合の計算方法は以下のとおりです。
中古資産の耐用年数=(法定耐用年数ー経過した年数)+(経過した年数×20%)
例えば、法定耐用年数が10年の資産を取得して7年経過していた場合の計算は以下のとおりです。
(法定耐用年数10年ー7年)+(7年×20%)=3+1.4=4.4
端数は切り捨てるため、耐用年数は「4年」となります。
見積法による計算方法
「見積法」は、中古資産を取得したときからの使用可能期間を、合理的に見積もって耐用年数とする方法です。
専門的・技術的な情報が必要になるため、見積りに多額の費用が発生する可能性があります。そのため、実務上は、簡便法を採用することが多いです。
中古資産耐用年数のまとめ
新品の固定資産の耐用年数が「法定耐用年数」となるのに対して、中古資産の耐用年数は、取得後に使用可能な期間として見積もった年数によって設定します。
ただし、見積もりが困難な場合も多く、一般的には「簡便法」を使って算定します。
中古資産の耐用年数の算出に不安や疑問がある場合は、積極的に税務の専門家のアドバイスを受け、適切な耐用年数を算出して税務上の問題を避けるようにしましょう。