相続ってなに? 相続の範囲・割合・方法など基本を解説!
まだまだ先のことだと思っていても、突然降りかかってくるのが相続の問題です。特に生前に相続の話をすることは難しく、どちらかというとタブー視されている傾向があることから、実際に相続となると知らないことだらけで混乱してしまう人も多いでしょう。今回は相続とは何か、そして相続人となる人の範囲や分割の方法について説明します。
相続って何?
相続とは、人が亡くなった際にその人が持っていた財産(遺産)を特定の人が受け継ぐことです。その際の財産(遺産)には全ての権利義務も含まれます。一般的に遺産といわれるものには次のようなものがあります。
- 現金などの預貯金
- 株式などの有価証券
- 自宅などの不動産
- 車や貴金属などの動産
ただし、先に述べたように遺産には権利義務が含まれます。つまり、借金があればその支払い(債務)も遺産の対象となります。また、最近問題になっているのが「デジタル遺産」といわれるものです。最近は電子マネーや仮想通貨などを扱う方も増えたことや、ネット銀行やネット証券の利用により、ログインIDやパスワードなどが不明なため、実際にどれだけの資産があるのかを把握できない状況に陥るケースが多くみられます。もちろんIDやパスワードは他人に口外するものではありませんが、万が一のときにはわかるように一覧にしておき、パスワードと共に限られた身内に託しておくことも大切です。
相続人の範囲と順序
相続人の範囲は民法で決まっており、それを「法定相続人」といいます。法定相続人になれるのは「配偶者」および「血族」と決まっており、亡くなった人の属性によって相続人の範囲や順序が異なります。配偶者がいる場合は、その方は必ず相続人となります。ただし、内縁関係にあった場合には相続人には含まれませんので注意してください。また、配偶者がいない場合は、優先順位の高い血族から順番に相続人となります。ちなみに優先順位と該当する血族については以下のとおりです。
優先順位 |
該当する血族 |
第一順位 |
亡くなった人の子ども(直系卑属)およびその代襲相続人 |
第二順位 |
両親などの直系尊属 |
第三順位 |
兄弟姉妹およびその代襲相続人 |
代襲相続とは、死亡した人よりも先にその人の子どもや兄弟姉妹が亡くなっている場合に、本来相続人となるはずだった子ども、もしくは兄弟姉妹の子どもが相続人となることです。そのような相続人を代襲相続人といいます。もし子ども(直系卑属)も亡くなっている場合は、さらにその子どもが代襲相続人となります。ただし、兄弟姉妹が亡くなった場合は、代襲相続人となるのはその子どもまでとなります。兄弟姉妹の子どもまでが亡くなっていたとしても、その子どもは代襲相続人とはなりません。兄弟姉妹の場合の代襲相続はあくまでも1代限りであると覚えておきましょう。
遺産はどんな割合で分割する?
遺産については、原則として遺言書がある場合はそれに従います。例えば、「自宅は妻に相続する」と遺言書に記載されていれば、その内容が優先されます。他の金融資産などについても同様です。ただし、血族においては最低限の遺産を相続できる権利が存在し、それを「遺留分」と言います。遺留分は相続財産全体の2分の1となっています(遺留分権利者が直系尊属のみの場合は、3分の1)。
指定相続分
上で述べたとおり、遺言書などで相続割合が決まっている場合はその指定にしたがって分割することになります。指定分割、または指定相続分は亡くなった人の意思を尊重するという意味では非常に大切なことですが、なかにはその内容に納得しない相続人も出てくる可能性があります。指定相続で遺産を分割する場合は、生前に個人と相続人がよく話し合い、有効な遺言書などでその内容をきちんと残しておくことが大切です。
法定相続分
法定相続分とは、指定相続にとらわれず、法律で決まった割合で遺産を分割する方法です。その割合については、以下のように決められています。
- 相続人が配偶者と子どもの場合
配偶者:2分の1、子ども:2分の1(子どもが複数いる場合は、この2分の1の財産を子ども同士で均等に分割する) - 相続人が配偶者と故人の親の場合
配偶者:3分の2、親:3分の1(両親ともに存命の場合は、この3分の1を両親で均等に分割する) - 相続人が配偶者と故人の兄弟姉妹の場合
配偶者:4分の3、兄弟姉妹:4分の1
相続の仕方にはどんな方法がある?
相続する遺産には、金融資産や不動産などのプラスの遺産もあれば、借金などのマイナスの遺産もあります。通常の相続においてはマイナスの遺産についても当然に相続することになり、故人に代わって返済を続けていく必要があります。
単純承認
借金などのマイナスの遺産も合わせて、決められた分割割合で相続することを認めることです。単純承認には特に手続きは必要なく、下で説明する限定承認や放棄の意思表示をしない限り、単純承認したとみなされます。
限定承認
借金などのマイナスの遺産がある場合、そのマイナスの遺産については、プラスの遺産の限度まで相続するという意思表示を行うことです。そうすることによって、マイナスの遺産がプラスの遺産を上回る場合に、それ以上の債務を背負わなくてもいいことになります。この限定承認を行うには、相続開始を知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てする必要があります。また、相続人がほかにもいる場合であれば、限定承認を行う際にその相続人全員の同意が必要となることも覚えておきましょう。もし、3ヶ月以内にほかの相続人から限定承認に対する同意が得られなかった場合は、原則として単純承認したとみなされます。
相続放棄
プラスの遺産もマイナスの遺産も合わせて、全ての相続を放棄することです。相続放棄を行う際には、限定承認と同様に相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に対して相続放棄をする旨を申し立てます。この際には、限定承認の時のようなほかの相続人の同意は必要ありません。そして、相続放棄が認められれば、はじめから相続人ではないとみなされ、次の順位の人に相続する権利が移ることになります。
相続の仕方には、上に述べた「単純承認」「限定承認」そして「相続放棄」がありますが、「限定承認」および「相続放棄」を行う際には、必ず相続の開始を知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てをする必要があります。ただし、相続開始前に相続人が財産の全部もしくは一部を処分した場合は、自動的に単純承認したとみなされます。また、限定承認や相続放棄の手続きを行った後に財産を処分したり、もしくは知っていたのに財産を隠したりしたことなどが判明した場合は、単純承認をしたことになります。
まとめ
相続が発生すると、まず遺産について調べることになります。どのような遺産がいくらあるのかを全部把握するのはとても大変ですので、できるだけエンディングノートなどを活用し、生前に遺産についてまとめておくことが、後に残される人に対する思いやりといえるでしょう。また、相続人の把握も簡単そうで実は難しいケースもあります。特に親や配偶者、子どもがいない場合は、戸籍謄本などを取得して兄弟姉妹やその子どもなどの存在を把握しておくとよいでしょう。また、限定承認や相続放棄など期限のあるものについては必ず期限内に行うことも忘れないようにしてください。
出典