これからの働き方、ハイブリッドに移行
データシリーズ6
コロナ禍により大きく変わった働き方。『月刊総務』では、働き方の変化と、それによる働く場、オフィスの今後についてアンケートを取った。
総務の現場では、今後の働き方をどのように捉えているのだろうか?
約7割が「オフィスの方が生産性高く働ける」と回答
オフィスとテレワークのどちらが生産性高く働けると思うか尋ねたところ、オフィスと回答した人が66.7%、テレワークと回答した人が33.3%という結果になった。
・オフィス:66.7%
・テレワーク:33.3%
こと生産性の観点でいうと、オフィスの方に軍配が上がる。
リモートワークに慣れていないことも要因として考えられる。慣れてくれば、どのような仕事がリモート向きかオフィス向きかの峻別ができるようになり、この割合も変化してくるはずだ。強制的な在宅勤務、しかもクラウドツールの活用がされていない状態では、この結果になるのはやむを得ないことである。
<オフィスの方が生産性高く働けると思う理由 / 一部抜粋>
・働くための環境が整っているので、生産性という面ではオフィスの方が良い。
・人の目は、まだまだ大部分の人には自制のために必要。
・自宅で仕事をすると、仕事と生活の区別がつきにくくなる。
・すぐに相談ができ、資料も手に届くところにあるから。
・部下マネジメントがしやすい。想定外の業務が飛び込んできても、即座に集合し意
思疎通を図り、その解決にチームで対応できる。
<テレワークの方が生産性高く働けると思う理由 / 一部抜粋>
・成果を出すことがテレワーク継続の前提となるので、意識的に効率よく結果を出す
習慣がつくと思う。
・個人の担当業務に集中しやすいため、進捗もオフィス勤務よりかなりはかどる。
・自分のペースで業務遂行が可能。電話等、途中で作業を止められることがなくスト
レスがない。
・通勤による時間と体力のロスがないため。
また、テレワークの実施状況と、オフィスとテレワークのどちらが生産性高く働けるかの回答を比較したところ、オフィスの方が生産性高く働けるとの回答が、どの実施状況においてもテレワークを上回り、テレワークを続けない・していない企業では9割を超えた。
これからの働き方は「オフィスとテレワークの融合」が7割超
これからの働き方はどうなると思うか尋ねたところ、「オフィスとテレワークの融合」が71.3%という結果になった。ここまでの設問でテレワークのメリットも多く挙げられているものの、「テレワークメインで働く」は3.3%で、新しい働き方が模索される上でもオフィスが完全に不要になるという考えは少ないことがわかる。
・オフィスとテレワークの融合:71.3%
・オフィスメインで働く:25.4%
・テレワークメインで働く:3.3%
フルリモートワークを実施している企業は、ほとんどがIT系企業。まだまだ少数派である。コロナ終息後は、オフィスとテレワークを融合させたハイブリッドが主流となる予想だ。緊急事態宣言の際は在宅勤務「を」しなければならなかったが、アフターコロナでは在宅勤務「も」できる、という状態となる。つまり、働く場の多様化の時代となるのだ。在宅勤務のみならず、サードプレイスと言われる、コワーキングスペース、レンタルオフィス、シェアオフィス、あるいは自社で保有するサテライトオフィスでの働き方、さらにはワーケーションも入ってくる。企業のスタンスとしては、最大限の選択肢の提供が望まれる。一方で、従業員側にも自律的な選択が求められる。自らの仕事の目的を明確にして、その仕事の生産性が最も向上する場所を自らしっかりと選択していく。自ら仕事を構築していく人材とならなければならないのである。選択肢の多様化と自律性は、両輪として存在しないといけないのだ。
今後のオフィスの役割は「社内コミュニケーション」「チームでの作業」
これからのオフィスの役割はなんだと思うか尋ねたところ、「社内コミュニケーションの場」が80.5%、「チームで作業をする場」が76.2%と多くの回答を集めた。
・社内コミュニケーションの場:80.5%
・チームで作業をする場:76.2%
・社風・文化を醸成する場:55.8%
・教育・OJTの場:44.2%
・経営理念・ビジョンを浸透させる場:35.6%
・自社ブランドを体現する場:30%
・社外コミュニケーションの場:25.1%
・一人で作業をする場:5%
・その他:3.6%
アンケート結果から見て取れることは、人を軸とした場合の「交わり」、組織を軸とした場合の「組織の維持と強化」という点である。社内コミュニケーション、チームでの作業、教育・OJT。どれも複数人で行うものである。このように集団で行うものはオンラインでも可能だが、体感性、共感性といった点では、リアルな場の方が高い効果がある。
また、リモートワークによるコミュニケーション量の低下、繋がり感の希薄化、エンゲージメントやモチベーションの低下。これらを放置しておくと、組織としてのまとまり、求心力に重大な課題が生じる。その部分をリアルな場が補う。アンケート結果にあった、社風・文化を醸成する場、経営理念・ビジョンを浸透させる場、自社ブランドを体現する場としてオフィスの意義があるのである。
今までのオフィスは、全ての機能が揃った万能型オフィスと言われる。集団で行う活動もさることながら、ソロワークや集中ワークも含めて、全てが揃った働く場である。しかしリモートワークの普及に伴い、ソロワークと集中ワークは、オフィスよりむしろリモートワークの方が効率的であるとの認識が、コロナ禍での強制在宅勤務で広まった。ハイブリッド・ワークスタイルは、このリモートワークとオフィスのすみ分けを意味している。
オフィスというリアルな場でなければできない活動に機能を絞り込んでオフィスを作る。その意味では、機能特化型オフィスがアフターコロナのオフィスのあり方となるのだ。オフィスというリアルな働く場はなくならず、機能を絞り込んで存在していくことになる。
バーチャルオフィスという仕組みも存在し始めており、その進化の具合によってはリアルなオフィスの存在意義もまた変化するかもしれないが、集団で生き抜いてきたホモサピエンスとしては、リアルな場は当分必要となるのではないだろうか。