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採用のミスマッチを防ごう 採用選考①

著者:一般社団法人日本テレワーク協会 相談員  小山 貴子

採用のミスマッチを防ごう 採用選考①

「いい人が採用できない!」

これを解決する方法はいろいろとありますが、失敗が特に露呈しがちなのが「選考」の場面です。

この場面での心構えや具体的な動きをお伝えしますが、今回はまず全体像の把握をしていただくために、3つのポイントから話を進めていきます。


1. 刻々と変わる求職者の心を捉える対応の必要性

相手(求職者)の心理状態を鑑みながら適切な情報提供をしなければ、こちらがいくら採用したいと思っても採用はできません。例えば、お見合いの場で「この人は素敵だ!」と思ったとして、いきなり「結婚してください!」と伝えた場合、相手も「この人は素敵だなぁ」と思いかけていたとしても、引いてしまうのが関の山でしょう。

「AIDMA(アイドマ)の法則」「AIDMAS(アイドマス)の法則」をご存じですか?これは消費者の購買行動プロセスを説明するための代表的モデルですが、採用の場面に転用することもできます。応募者がどのような心境の変化を感じながら面接を受けているか、具体的に表現してみたいと思います。

A:attention(注意)→第一印象:この会社見つけた!どんな会社だろう

I:interest(興味)→企業理解:面白そうな会社かもしれない

D:desire(欲求)→人的理解:こんな人に会ってみたいなぁ

M:memory(記憶)→印象づけ:あの会社や社員が忘れられない

A:action(行動)→個別説得:この会社を就職先として決めよう

S:satisfaction(満足)、share(拡散)→安心感:この会社で良かった

今、求職者がどの段階にいるのか分からない時もあるかと思います。その時には、筆者がよく使う言葉「(就職活動終了=10合目として)今、何合目くらいですか?」を使ってみてください。それを聞くと、AIDMAのどのくらいにいるのかが分かり、その後のやり取りが具体的になることがよくあります。


2.求職者に興味を持って話を聞く

採用難易度の高い職種や、なかなか応募者が来てくれない企業の採用担当者の面接に同席していると、よく感じることがあります。「自社の説明時間が長すぎる」ということです。

求職者がどのような状態で応募しているかを確かめる前に、自社の優位性、具体的な仕事内容、将来の展望等を伝えていることがあります。自社の良い所がA~Zとあったとしても、求職者がそのすべてに興味を持つとは限りません。「何を気にして、何を求めてここに来ているのか?」を把握すると、A~Zのどの情報を提供するのがいいか、どうしたら振り向いてくれるかが分かってきます。たくさんの情報を伝える必要はありません。とにかく相手が興味を持ちそうな話をします(人は興味のないことを聞かせられることは苦痛です)。そうすれば、求職者から質問が出てくるところまで持っていくことができます。AIDMAのどの場面であっても「この会社はいいなぁ」と思ったら質問が出てくるものです。

自社の話を始める前に、ぜひ求職者のこれまでの人生を聞いてみてください(特に「これまでの選択の場面」でどのような選択をしてきたかを聞くと、その人の思考の傾向が見えます)。以下の5点がポイントになると思います。

・「なぜ?」をキーワードに質問する

例えば「なぜこの会社を選択したのですか?」。ただし、深掘りしようとすると、「なぜ、なぜ、なせ」と繰り返してしまいがちですが、詰問にならないようにご注意を!

・具体的な数字や大きさ・量・規模などに落とし込む

例えば、職務経歴書に「プロジェクト管理の経験がある」と書かれていると「マネジャーの経験がある人だ。うちにいいかも!」と早合点してしまいがちですが、何人で管理していたか(ポジションはどこか)、プロジェクトの人数、売上規模等々を聞くと、その人が働いていた職場が映像になってきます。この映像になる感覚が大事です!

・オープンクエスチョンを心がける。クローズな(Yes / Noで答えてしまえるような)質問は避ける

例えば「これまでどんなことをしている時に喜びを感じましたか?」「今は弊社にご応募いただいていますが、それは一旦横に置いておいて、次の会社に望むことはどんなことですか?」。できるだけ広がりのある答えを出してもらえるような質問をしてみてください。

・聞きづらい質問にはクッション言葉を添える

例えば「差し支えなければ、今、受けている会社を教えていただけますか?」。いきなり「今、受けている会社を教えてください」と言われるのとは印象が違ってきます。結果的に教えていただけない可能性もあるものの、筆者は採用業務に30年近く携わった中で拒否されたことはまだありません。

・親御さん、ご家族の意向を聞く

「親御さんはこの就職に関してどんなことをおっしゃっていますか?」と聞いてみてください。ご縁があって入社していただいた場合、周囲の人にもそれを喜んでもらいたいものです。筆者が新卒で入社した会社は、30年前のことですが内定者の親御さん向けの会社説明会を開催していました。この内定に筆者の両親は心の中でかなり心配していたと思いますが、その前には賛成とも反対とも言いませんでした。ただ、この説明会に出てから「いい会社に内定をもらったものだ!」と手放しで喜んでくれたことを思い出します。

 応募者も周りの人も不安に思っているのであれば、企業側が誠意を持って対応することも必要だと思います。

質問をする際に、注意しなければならないこともあります。厚労省でも「公正な採用選考」に関して、やってはいけないことも含めて発表していますので、以下もご参照ください。

・公正な採用選考について

https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/topics/saiyo/saiyo.htm

・公正な採用選考の基本

https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/topics/saiyo/saiyo1.htm

・公正な採用選考チェックポイント

https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/topics/saiyo/saiyo2.htm


3.面接チームのフォーメーションを意識して動く

面接の場面は非日常空間でもあり、初対面の求職者の本音を知りたいと思っても、それを達成するのは非常に難易度が高いと思われます。一人の力では限界がありますが、採用に携わるのは採用担当者一人だけではありません。他にも、採用の役職者、現場担当者、大学のOB・OG(新卒の場合)、経歴が近い転職者(中途の場合)等でフォーメーションを組み、それぞれがどのような役割を持って応募者に対応するかが非常に大事です。

さまざまな企業の方々とやり取りをしていると、「現場は人手不足で困っているのに人事がいい人を採用してくれない」という現場の声、「忙しい現場に協力を仰ぐのは難しい」という人事の声をお聞きすることがあり、お互いに役割を投げ、組織が分断している場面に遭遇することがあります。昨今、どの会社でも目の前の業務への貢献度が至上命題になっている様相を呈していますが、関係する皆で目標(いい人を採用する)を設定し、目標を達成するための自分の役割を意識しながら、チームで動くことをぜひ目指していただきたいと思う次第です。

次回は引き続き「選考」に関して、心構えや具体的な動き(筆者の過去の失敗例、成功例も含む)をお伝えしたいきたいと思います。

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著者プロフィール

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小山 貴子

一般社団法人日本テレワーク協会 相談員

1970年生まれ。12年間のリクルート社勤務後、ベンチャー企業の人事、社労士事務所勤務を経て、2012年社会保険労務士事務所フォーアンド設立。ただいま、テレワーク協会の相談員と共に、人事コンサル会社の代表取締役、東証一部上場企業の非常勤監査役、一般社団法人Work Design Labのパートナー、東京都中小企業振興公社の専門相談員等にも携わる。2年半ほど横浜と大分の2拠点生活を実施中。

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