採用のミスマッチを防ごう 採用選考②
前回に引き続き、「選考」についてお話をしていきます。
採用の場面にはさまざまな段階がありますが、「選考」は何と言っても実践が大事!
「こうやった方がいいのだな」というのは、書籍やネットの情報でいくらでも仕入れることができますが、感情のある入社予備軍の人達とのやり取りは10人が10人違った対応が予想され、定型の情報で理解していたとしても、実際にやってみて戸惑い、悩み、なかなか正解にたどり着けないものだと思います。
そんな中でも、ゆるぎない信念を持ち、この行動は会社にとって、目の前の人(の人生)にとって、正しい行為だという心構えでいることは、非常に大事なことだと思っています。
これからお伝えする私が経験した具体的な動きが、皆さんにとって何かしらのお役に立てることがあれば幸いです。
1. 心構え
今、皆さんが所属されている企業の状態によっても採用したい人は随分違ってきますね。ベンチャーや大手等の規模においても、成長フェーズがどこかにおいても、また業種や職種においても、それぞれ違う要素はありますが、採用に携わる人がまず「この人の光っている部分はどこだ?」「この人のいい所はどんなところ?」という観点で選考していき、「この人の人生をここで(更に)開花させることができる」という信念を持って採用しているのであれば、どんな環境であったとしても失敗する採用はありえないと思います(人事の熱意とは裏腹に、現場が採用に協力的ではないということもよくお聞きますが、この信念があれば、現場の人をも巻き込んだ採用活動ができるようにきっとなります)。
一気にそのような思いになれなかったとしても、少なくとも「この人はまた会いたい人だ」と思うことでしか、選考は進んでいきません。採用担当者は感性豊かに目の前の人を見ていく必要があります。
携わる人が大人数の場合はあり得る話ですが、「自分はまた会いたいとまで思わないけれど、上の人に見てもらうために(その人の好みを忖度して)一旦OKを出しておくか」という判断がされる場合がありえます。そのような状態であれば、上の人に「その人を合格させたのはどういう理由?」と聞かれた時に答えることができなくなります。そのような行為に甘んじていると、いつまで経っても採用に誇りを持てなくなります。「そのような仕事を自分はしたいのか?」、人を判断するような仕事に就く人こそ、自問したい内容です。
入社予備軍の人にとってみると、採用に携わっている方々に魅力を感じられなければ、いくら「うちに来て欲しい」という誘いを受けたとしても次の選考に進みたいという気持ちもおきてきません。会社に所属している人は誰しもが会社の広告塔の一翼を担っているわけですが、特に採用関係者はその職務に忠実であっていただきたいと思います。魅力ある人間でいるために今から何をしますか?
2. 経験談
選考中にSPIをはじめとしたテストを導入されている企業も多いと思います。「うちに合う人はどんな人か」「最大のパフォーマンスを出してくれる人はどんな人か」をすぐに分かるようにしたいというご要望は非常に多く寄せられます。データをたくさん収集できているテスト会社さんでは、これまでの「採用者の傾向」「入社してから評価の高い人の傾向」等を随分前から確認することができるようになりました。
しかし、環境変化の激しいこの時代、それに頼ることはまだなかなか難しいのではないかと思うこともあります。これまでの優秀者のタイプがこれからも同じであり続けるということに確信が持てないということ、各社が狙っている「優秀者層の獲得」というレッドオーシャンでこのまま競争をし続け、社内風土の醸成や環境整備等の優先順位が落ちてしまっているのであれば、採用成功への道は遠いと思うからです。
入社早々から評価が高く、そのまま出世コースへ進んだという方もいらっしゃると思いますが、今は役職者であっても途中大きな挫折を味わっているという経験がある方も多くいらっしゃると思います。環境が人を成長させるのですね。また入社数年は鳴かず飛ばずだったのに、とある時から急に評価が高くなった、そのような方もいらっしゃるでしょう。
集団力学においても、“個人特性”と“環境”の掛け合わせで“行動”や“振るまい”が変わってくることが分かっています。どのような組織風土を作っていくかを優先して考えなければ、「将来有望だろう」と思われる人を採用しても、素晴らしいパフォーマンスを発揮してもらうことはできません。
また選考にテストを導入されている企業の中には「どのような人がうちの会社でパフォーマンスを発揮することができるかどうかを知りたい」ということとは別に「メンタルの発病傾向がある人を知りたい」「(メンタルを発症すると困るので)うちが採ってはいけない人を知りたい」というご要望をおっしゃる方もいらっしゃいます。これはなかなか難しい。傾向値はありますが、そうなるのは、上記からもお分かりのように、その人がおかれた環境によるからです。とある企業の採用に従事していた時にこのようなことがありました。
その会社では1次、2次の面接の後にテストを実施していました。その過程で非常に評価の高いとある人にテストを受けてもらったところ、「敏感性、自責性、気分性が非常に高い」ことが分かりました。採用関係者の中には「採用しない方がいいのではないか」という意見も出てきていましたが、結果的には採用しました。
その理由は・・・彼が従事する仕事は映像制作。テスト前の評価が非常に高かったこと、業務としては繊細なことも求められる仕事でもあり、この特性が活かされるはずと判断しました。本人や入社したら上司になるであろう人にもそれを伝え、採用することになりました。3年後、彼は業界では有名な賞を受賞するまでになりました。対外的には「うちには●●賞を受賞した者もおりまして」とお客様に伝えることができ、営業にも非常にいい効果を発揮することができまし、社内においても制作部門の皆がその賞を目標にするようにもなり、多大な貢献をしてくれました。「たられば」ですが、彼を採用していなかったらどうなっていたか。この会社が3年でこのような成果を出すことはできなかったと思います。
もちろん数値を参考にする姿勢も必要です。確かに彼を営業職として採用することは難しかったように思います。ただ、本人が希望する職種があり、会社もそれを受け入れ、関わる人全員で彼がよりよいパフォーマンスを発揮できるような仕組みが取れるのであれば、敏感性が高いという“数字”に引っ張られる(惑わせられる)ことなく、よりよい選考ができるように思います。
次回は、採用をする際に非常に重要になる「内定直前直後」についてお伝えしていきます。