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中小企業のための「介護離職防止」対策! 第7回 「介護」に対して、企業ができること

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中小企業のための「介護離職防止」対策! 第7回 「介護」に対して、企業ができること

これまで介護に関して、ご自身でできる心構えや準備に関してお話ししてきました。

「仕事と介護を両立」する上では、企業側の理解や協力なしでは難しい場面が出てきます。

そのためには、企業が「仕事と介護の両立」に向けた働きやすい環境を整備していることを社員に伝えるだけではなく、「両立のための働き方を支援している」姿勢を積極的に社員に認識させることも大切です。

社員が家庭の事情を相談しやすい環境が根付いていない場合、職場には迷惑をかけられないという後ろめたさから、相談すること自体を躊躇する可能性があります。というか、相談しないことがほとんどです。

そこで今回は、「介護」に対して、企業としてできることをお伝えしたいと思います。


この記事の著者
一般社団法人 日本顧問介護士協会  代表理事 

まず大切なのは雰囲気と風土づくり

まず大切なことは、「相談しやすい雰囲気づくり」と「多様な働き方を認め合う風土づくり」です。社員の介護離職を防ぐためには、早めの状況把握が必要となります。そのためには、社員が介護のことを相談しやすい雰囲気づくりが欠かせません。役職や立場に関わらず、介護は誰にもいつかは訪れる可能性の高い、共通の「自分事」です。「お互い様」の精神を育むことの大切さと、社員の一人ひとりがそれぞれの人生のフェースに合わせて「今からできる働き方」を選択できることも重要になってくると思います。

まずは、相談しやすい雰囲気づくりとして、社員に対して、仕事と介護の両立に向けた働き方の整備を行っていることを伝えるようにしましょう。仕事と介護の両立に向けて周囲の理解やサポートを得るためには、上司からの働きかけが特に重要です。率先して伝えるように促すことが大切になります。そして、「介護はすべての人に起こり得るものである」ということへの理解と「お互い様の意識」を社内に浸透させることも重要です。

現状、簡単ではない企業が多いことは承知していますが、それでもどこかのタイミングで整備していかなければならない時代になりますので、今から意識だけは持つようにしておきましょう!


具体的にどうしたらいいのか?

いざ、社員から介護について相談されたら、次の3つステップを踏むとスムーズです。


ステップ① 「話を聴く」

まずは、家族や介護の状況を詳しく話してもらうことが大切です。プライバシーに配慮して面談場面を設定し、何に困っていて、どんなサポートを必要としているのかを把握しましょう。このとき、アセスメントシートを用意しておくと聴く側も安心して話が聴けるようになります。聴く側も介護を経験したことがない人が多いため、聴く内容も状況の理解も難しいのが現状です。まずは、アセスメントシートの内容通りに聴き、適切なサポート事項を把握しましょう。


ステップ② 「企業の両立支援制度を伝える」

「仕事との両立を支援すること」「仕事を続けてほしいこと」をきちんと伝えましょう。介護が始まると、生活環境や生活リズムが大きく変わります。その変化は介護をする人にとって大きなストレスになる可能性が非常に高いです。そのような状況下においても、これまでと変わらず企業から必要とされていることを実感できれば、大きな安心に繋がります。その上で、両立できる働き方を一緒に考え、必要に応じて企業の両立支援制度の担当窓口に繋ぎましょう。


ステップ③ 「介護サービスの利用や専門家への相談を促す」

地域包括支援センターやケアマネジャーなど、介護の専門家への相談を促すようにしましょう。その際、行政機関の窓口(受付時間)は平日のみとなるため、休暇を取って相談に行くことが予想されます。休みを取りやすい環境づくりにも配慮しましょう。

また、コミュニケーションを取る際のポイントは、次の3つです。

  1. プライベートの相談をしやすい雰囲気づくりを工夫する。
  2. 社員の家族構成や、家族の介護の必要の有無などを知る。
  3. 社員の体調や仕事の能率など「いつもとの違い」に気付き声をかける。

ある日突然やってくる介護の相談は、日頃からのコミュニケーションや雰囲気づくりがとても重要になります。いざ、相談を受けた時にある程度の状況を把握しておくとスムーズに対応できるでしょう。

そして、働き方でも次の3つをポイントにすることをお勧めしています。

  1. 企業の両立支援制度の利用方法の周知、または介護相談の担当窓口を設けている。
  2. 介護のために勤務に制約がある社員にも、過剰に配慮しすぎず、能力を発揮してもらう。
  3. 企業の誰かが急に休んでも対処できるように、情報を共有化し、フォロー体制を整えておく。

介護に直面した社員が出てから整備するのでは遅く、今からできる体制の整備が大切となります。ますます高齢化が進み、70歳までの雇用が努力義務になった現代を考えると、介護に関する制度整備は必須になります。今のうちから準備を始めましょう!


相談された時に気を付けること

相談された時に特に気を付けなければならないことをお伝えしておきます。

自分の価値観を押し付けないことです。

介護への向き合い方は人それぞれです。「奥さんには任せられないの?」や「介護は家族ですべき」「仕事を続けるなら施設に預けるしかないだろう」などといった自分の価値観を押し付けるような印象を与える発言には十分注意が必要です。

仕事と介護の両立には、何よりも上司にあたる管理職側の積極的な支援が不可欠です。社内をマネジメントする管理職が率先して支援する姿勢を見せることにより、介護があっても安心して働くことができる環境だと理解してもらえると思います。


介護に関するアンケートから始める

介護に際し、プライバシーに関わることや相談できる環境がないと、1人で抱えているケースがあります。

まずは社員の環境や状況を把握するためにも、介護に関するアンケートから始めることをお勧めしています。

いろいろな情報が得られるので、その後の対策も立てやすくなります。また介護というものは、社員にとっても企業にとっても、直面してみないと実感がわかないものですので、社内介護セミナーや勉強会などを行い、いかに自分事として捉えてもらうか、お互い様の精神を持つことがどれだけ大切であるかを知ってもらうことも必要になりますので、できることから一歩踏み出し、介護があっても安心して働ける企業を目指していただきたいと思います。

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著者プロフィール

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石間 洋美

一般社団法人 日本顧問介護士協会 代表理事

子どもの頃から「人の役に立つ仕事がしたい」という想いを強く持っていて、高校生活のボランティア活動で福祉・介護の世界と出会う。福祉・介護に関わる仕事を目指したく、静岡福祉医療専門学校医療福祉情報科へ入学。卒業後は、介護施設にて様々な経験をする。その後、自身のスキルアップのために介護事務業務、相談業務、マネジメント業務、管理業務を行う。医療福祉接遇インストラクターの資格も取得し、お客様満足度向上のための研修講師も務める。介護の業界に携わり「誰にでも介護はある日突然やってくる」現実を目の当たりにしたとき、もっと多くの方の救いや力になりたいという想いがさらに強くなり、その想いを実現すべく、2020年4月に当協会を立ち上げ、現在は「介護で困る人と困る量を圧倒的に少なくする!」を目標に掲げ活動している。

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