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中小企業のための「介護離職防止」対策! 第8回 「介護関連の支援制度の活用と実態」

~企業は「人」がいるから売上がある!をサポート~

著者:一般社団法人 日本顧問介護士協会 代表理事  石間 洋美

中小企業のための「介護離職防止」対策! 第8回 「介護関連の支援制度の活用と実態」

前回は「介護に対して企業ができること」として、社員に対して「両立のための働き方を支援している」姿勢を積極的に見せることの大切さと「相談しやすい雰囲気づくり」、そして「多様な働き方を認め合う風土づくり」についてお話しさせていただきました。

では、実際に利用できる介護に関連する支援制度にはどのようなものがあるか、ご存知でしょうか。そして、実態はどうなっているのでしょうか。

今回は、介護に関連する支援制度の活用と実態についてお話ししようと思います。


「介護休業」と「介護休暇」の2つの制度

病気やけが、老齢により2週間以上にわたり日常生活を営むのに支障が出てしまう家族を介護する必要がある場合、介護のための「休暇の取得」「勤務時間帯の変更」「超過勤務・深夜勤務の制限または免除」の制度を利用することができます。

常勤社員と非常勤社員では異なる場合があることや、制度の対象となる家族は、社員との続柄により同居が条件となる場合があるなど注意が必要になりますが、仕事と介護の両立を支援する制度としては是非知っておいていただき、活用もしていただきたい制度になります。

まず、休暇を取得したい場合には、一般的に

「介護休業制度」と「介護休暇制度」

の2つの制度があります。


「介護休業制度」とは、介護をするためにまとまった休みが必要な人のための制度です。非常勤社員でも要件を満たせば取得することが可能です。

具体的内容としては、要介護状態にある対象家族1人につき通算93日まで休業できる制度です。この日数内であれば、3回を上限として分割して取得することが可能となります。また、介護休業の期間内は、国からの経済支援を受けることができます。一定要件を満たせば、介護休業開始前賃金の67%の介護給付金が支給されます。受給の可否は最寄りのハローワークで相談できますので是非知っておきましょう!


「介護休暇制度」とは、病院の付き添いなどで短時間の休みが必要な際に活用できる制度です。

具体的内容としては、1年の間に5日間、短い単発の休みがほしい時に利用できる制度です。「時間単位」で休暇を取得でき、対象家族が複数の場合には1年の間に10日間の休みが取得できます。(令和3年(2021年)1月から、「育児・介護休業法施行規則等の改正」により、すべての働く人が、「時間単位」で介護休暇を取ることができるようになりました。それまでは「半日単位」での取得でした。)


次に、勤務時間を変更したい場合や、超勤(残業)・深夜勤を避けたい場合には、「所定外労働の制限(残業免除)」「時間外労働や深夜業務の制限」「所定労働時間の短縮等の措置」があります。


「所定外労働の制限(残業免除)」とは、介護が終了するまで必要な時に残業が免除されます。1回の請求で、1ヶ月から1年の期間での請求が可能となります。


「時間外労働や深夜業務の制限」とは、介護が終了するまで、1ヵ月間で24時間、1年間で150時間を超える時間外労働を制限できます。また、午後10時から午前5時までの労働を制限することも可能です。時間外労働について1回の請求で、1ヶ月から6ヶ月以内の期間、深夜業については1ヶ月から1年での請求が可能です。回数の制限はありません。


「所定労働時間の短縮等の措置」とは、短時間勤務制度、フレックスタイム制度、時差出勤制度、介護サービス費用の助成措置があります。企業は要介護者を介護する社員に対し、両立を助けるための支援措置が義務付けられています。連続する3年の間にいずれかの措置を講じ、2回以上利用できるようにしなければならないのです。

以上のような支援制度を上手に活用することは、仕事と介護の両立させる上ではとても重要なポイントとなりますので、是非覚えておきましょう!


介護離職はしない!

しかし、この介護休業制度と介護休暇制度の取得率は驚くほど低く、労働者全体の約5%にも満たないのが現状です。

そもそも、この介護休業制度と介護休暇制度が創設された背景には、介護離職があります。介護離職する人は年間10万人を超えており、年々増加傾向にあるとされています。このような現状を打開するため、2015年に政府は「介護離職ゼロ」を目指すと公表し、働きながら介護を続けられるさまざまな支援制度を規定・改定するとしました。

そこで生まれた支援制度が「介護休業制度」「介護休暇制度」というものです。

介護離職をしてしまうと、経済面・精神面・肉体面での負担が増えるため、介護離職を防ぐことに努めなければなりません。介護離職してしまった人は、基本的には無収入となるので、介護サービスの利用料負担も厳しくなり、介護サービスの利用を減らす傾向にあると言われています。

そうすると、できる限り自分で介護をするのですが、介護は、仕事としているプロの方々(介護職員)でも苦労する重労働であり、それを素人がやるのであれば、精神面・肉体面の両方で大きな負担となることは明らかです。次第に追い詰められ、その結果、介護うつになったり、体を壊したりする可能性が高く、介護者本人が病気などの状態で、さらに経済的な厳しさとも直面しなければならなくなります。そのような状態を避けるためにも介護休業や介護休暇の制度は、介護離職を避けるためにも、是非とも活用すべきなのです。

また、支援制度は知っていても利用していないという現状もあります。

その背景には、休みを取得しにくい環境であることや、仕事が忙しくて利用できない等の理由があることも明らかになっています。介護離職防止は、企業にとっても大きく影響があるため、力を入れて取り組む課題だと思います。

大切な人財(ある意味投資をして育ててきた人財)が介護を理由に辞めてしまうのは人的損失だけでなく、技術やノウハウも失うことになります。

こうした介護離職を防ぐためにも、企業の雰囲気づくりから変えていき、支援制度の活用を周知し、働き続けたいと思う会社づくりが大切なのではないかと考えます。社会全体で取り組むべき課題かもしれませんが、まずは目の前の取り組める場所から始めましょう!

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著者プロフィール

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石間 洋美

一般社団法人 日本顧問介護士協会 代表理事

子どもの頃から「人の役に立つ仕事がしたい」という想いを強く持っていて、高校生活のボランティア活動で福祉・介護の世界と出会う。福祉・介護に関わる仕事を目指したく、静岡福祉医療専門学校医療福祉情報科へ入学。卒業後は、介護施設にて様々な経験をする。その後、自身のスキルアップのために介護事務業務、相談業務、マネジメント業務、管理業務を行う。医療福祉接遇インストラクターの資格も取得し、お客様満足度向上のための研修講師も務める。介護の業界に携わり「誰にでも介護はある日突然やってくる」現実を目の当たりにしたとき、もっと多くの方の救いや力になりたいという想いがさらに強くなり、その想いを実現すべく、2020年4月に当協会を立ち上げ、現在は「介護で困る人と困る量を圧倒的に少なくする!」を目標に掲げ活動している。

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