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採用のミスマッチを防ごう 内定直前直後

著者:一般社団法人日本テレワーク協会 相談員  小山 貴子

採用のミスマッチを防ごう 内定直前直後

採用を経験した人の中で「あの時こうしておけば・・・」と失敗を強く意識することになるのは、「内定直前直後」ではないかと思います。どういう失敗かというと、「欲しい人が採用できなかった(あの時こうしておけば・・・)」ということ。

例えばこのような後悔例があります。

  • 社内の●●さんに会ってもらって、具体的な仕事をイメ―ジできるようにしておけばよかった
  • 「御社が第一志望です」という言葉を鵜吞みにしていたら、他社に行ってしまった
  • うちの会社に来てもらいたいという気持ちが強く、競合他社の悪口に近い情報を伝えてしまった(その競合に行ってしまった)
  • 親御さん(ご家族)の意向をもっと確認すべきだった
  • 給与の金額の交渉で失敗してしまった

等々、具体的な後悔をあげることができる方も多いでしょう。


1. 内定を出すタイミング

内定を伝えるタイミングも非常に気を使います。新卒採用においては他の企業がどのくらいから内定を出すようになるのかを情報収集しながらの対応になります。早すぎれば内定辞退が多くなりますし、遅すぎれば欲しいと思う人を他社に採られてしまいます。それ以上に大切なことは、お互いが「この人に来てもらたい!」「ここがいい!(「ここ“で”いい」ではなく)」という相思相愛になったタイミングで内定を出すことでしょう。入社予備軍の人の気持ちがまだ成熟していない時に内定を伝えても、相手の納得感がない時もあります。また「御社に入りたいんです」と一方的に言われても、その理由が不明確過ぎて、こちらがキツネにつままれた状態になったこともあります。


2. 内定辞退は困ってしまう

そして、内定を伝えたとしても、その後の内定辞退はとてもダメージの大きいものです。特に新卒採用においては、「困った!」と思うことが多いのではないでしょうか?採用人数が多く、毎年の傾向から●割は断られるから、採用予定数よりも何割か多くの内定を出さなければならないと考えながら動いている方。想像以上に残ってくれた、想像以上に断られた、どちらになっても「今年の採用はうまくいった」とはなかなか言えない状態でしょう。一方、採用人数が少なく、この人数で大丈夫だと思っている中で断られると(いい所まで行った他の学生にはこちらからお断りをしているので他に採用対象になりえる人がおらず)、採用活動を再開しなければならなくなったことのある方。再開のタイミングでは、多くの学生の就活が終了している時期にもなり、求めている学生になかなか会えず、採用計画の軌道修正を余儀なくされる場面に出くわしたことが何度もあります。


3. 内定辞退のにあう2つの理由

内定辞退にあう理由は大きく2点。一つ目は3C(※1)の観点での競合他社がイメージできていなかった、二つ目はその人を取り巻く環境を理解できていなかった。いずれにせよ、その人の立場になって就職活動を見ることができなかった結果と言えます。

※1: 3Cとは、「顧客(customer)」「競合(competitor)」「自社(company)」の頭文字を取ったマーケティング用語。人事においては、「顧客」を就職予備軍の方々、「競合」を就職予備軍の方々が自社以外に応募した企業、として話を進めていく。

採用の業務経験が浅い方からは

「確かに他の動きは気になりますが、受けている会社のことを聞いてもいいのですか?」

という質問をいただくこともあります。結論からお伝えすると「YES」です。面接中、突然

「他に受けている会社はありますか?」

という聞き方をすれば、答える方も準備ができておらず、戸惑いを隠せない時もあるかもしれませんが、これまで話の流れを読み、ここぞという時に

「差し支えなければ、他に受けている会社はありますか?」

と聞いた私の質問に「答えなくてもいいですか?」等のお返事をしてきた方はいらっしゃいません。「これから同業を何社か受けようと思っています」というお答えもあれば、具体的に「●●社を受けています」というお答えもあります。前者であれば、再度「差し支えなければ具体的に教えていただけますか?」と聞きますし、後者であれば、「そちらに対してはどのような印象をお持ちですか?」「選考は随分進んでいらっしゃるのですか?」等の質問をしていきます。このように「クッション言葉」を使うことでこちらも聞きやすく、相手も答えやすい状態になります。


4. 新卒の就職先確定の決め手

新卒においては、「就職先を確定する際に決め手となった項目」として56.1%の人が「自らの成長が期待できる」かどうかで判断したとの調査結果もありますが(※2)、直接学生に聞いていくと「人事の人に憧れて」という答えもよく返ってきます。選考時に採用予備軍の学生と採用担当者の間で「どれだけの人間関係を築けるか」が、会社を選んでもらえるかどうかの大きなポイントになってきます。昨今は対面でのコミュニーションだけでなく、メールやメッセージ、Webコミュニケーションや電話などの連絡方法を含めて、細かなやり取りが後々響いてくることがあります。内定辞退の連絡をもらう前に、「悩んだ時に相談してもらえる関係性ができているか?」は大きなポイントです。これまでも私が採用に携わった会社に入社してくれた学生から、このようなことを何度か言われたことがあります。「御社と他社のどちらにしようか、悩んでいました。他社に相談に行ったら『うちの会社に来て欲しい』というやり取りになったんですが、御社は僕が何を悩んでいて、どういうことが整うと悩みが解消するか、それぞれの会社が応えてくれそうな点を、僕の立場になって冷静に答えてくれたので、こちらに決めました」と。

※2:就職プロセス調査(2020年卒)


5. まとめ

選考途中に、会社に在籍している人の中から、学生が所属している大学のOBを選び、就活生の対応をさせている会社もありますが、内定が出たタイミングから引き合わせて、学生のちょっとした悩みに答えられる体制を整えている会社もあります(「採用に社員皆で取り組むようにしたら、社員が生き生きし始めた」という声もよく聞きます。人事以外の人が就活生の対応をすることは、社内活性化の一つの方法にもなりえます)。

一方、「親に反対され、お断りさせてください」と内定辞退されたことも何度かあります。中には「方便だろうなぁ」と思う人もいましたが、何人かは本当に親御さんからの反対にあっている状態に遭遇したこともあり、親御さんの説得を一緒にしたこともあります。結果的に入社する運びになった場合も、残念ながらお断りになった場合もあります。親御さんやご家族の対応については次回も詳細をお伝えしたいと思います。

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著者プロフィール

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小山 貴子

一般社団法人日本テレワーク協会 相談員

1970年生まれ。12年間のリクルート社勤務後、ベンチャー企業の人事、社労士事務所勤務を経て、2012年社会保険労務士事務所フォーアンド設立。ただいま、テレワーク協会の相談員と共に、人事コンサル会社の代表取締役、東証一部上場企業の非常勤監査役、一般社団法人Work Design Labのパートナー、東京都中小企業振興公社の専門相談員等にも携わる。2年半ほど横浜と大分の2拠点生活を実施中。

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