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採用のミスマッチを防ごう 内定期間

著者:一般社団法人日本テレワーク協会 相談員  小山 貴子

採用のミスマッチを防ごう 内定期間

内定を出しても安心はできない

「内定を出した。内定者も喜んでくれている。一安心!」と思っていると、いろいろと騒動が起こることがあります。前回お伝えした、「家族に反対されたので、お断りしたい」というお申し出がある場合もその一つ。他にもお断りの理由として以下のようなことが挙げられます。

  • 選考途中だった企業からいいお返事をもらった
    ←就職活動、続けていたの?
  • (新卒の場合)やはり進学することにした
    ←進学も視野に入れていたの?
  • (中途の場合)勤務している企業から慰留された
    ←今の環境から離れたいって言っていたよね?
  • (そもそも連絡が取れなくなってしまう)
    ←何が悪かったんだろう?(元気にしているのだろうか?)

等々。うまく進まない方法はさまざまですが、合意が取れていると思っていたのは会社側だけということもあります。面接の際に、その人の「人生理念」を聞くのだという意識でいると、その人が最も気になる点が把握できます。会社の「経営理念」のようにどこかに掲げられているものではありませんが、面接中に話を聞いていくと、「何を大事にして生きていこうとしているのか」その人の芯が見えてくる時があります。自社の内定が、その部分に対して理にかなっていないと判断されたということだと思います。


求職者の心を捉えた対応の必要性

第6回の「選考①」でもお伝えしましたが、「刻々と変わる求職者の心を捉えた対応の必要性」があります。他の企業に行くことにした人の例を見てみると、以下の「AIDMA(アイドマ)の法則」「AIDMAS(アイドマス)の法則」の二つ目の「A(action)」までは行ったものの、他の企業のAIDMAが進行してしまったという結果です。

A:attention(注意)

→第一印象:この会社見つけた!どんな会社だろう

I:interest(興味)

→企業理解:面白そうな会社かもしれない

D:desire(欲求)

→人的理解:こんな人に会ってみたいなぁ

M:memory(記憶)

→印象づけ:あの会社や社員が忘れられない

A:action(行動)

→個別説得:この会社を就職先として決めよう

S:satisfaction(満足)、share(拡散)

→安心感:この会社で良かった

また、第8回の「内定直前直後」でもお伝えしましたが、3C(※1)の観点で競合他社がイメージできていなかった結果とも言えます。中途採用では面接時に一気に良い関係性を築くのは難しいことですが、新卒の場合は「迷ったら、悩んだら、相談をしてもらえる関係性」を築くことは可能だと思います。内定期間に入ったとしても、気を緩めることなく、その人の相談先として機能する必要があります。

※1: 3Cとは、「顧客(customer)」「競合(competitor)」「自社(company)」の頭文字を取ったマーケティング用語。
人事においては、「顧客」を内定者、「競合」を内定者が自社以外に応募した企業、として話を進めていく。


担当間で内定者の情報を共有する

内定者の本音を拾うために、会社側の複数人が対応し、情報をもらえる環境にしておくことも、場合(特に新卒)によっては必要でしょう。私の内定時代も、4人が対応してくれました。

  • 人事Mgr(男性)
    決裁者
  • 人事2年目(男性)
    面接官
  • 人事1年目(女性)
    面接都度の受付対応、連絡等。
    回数が増すと徐々に本音を言えるようになった人。
    折々で私の立場になり「大丈夫!いいところまで来ているようだよ」と言ってくれた。
  • 1年目(男性)
    大学で同じゼミだった先輩。
    この会社を受けるようになり、就活の相談をしていた人。

お分かりのように、4番目の人には最初から本音しか話しておらず、3番目の人にも徐々に本音が話せるようになっていきました。こうなると4人には私の情報は筒抜けです。どこに内定をもらい、何に不安を感じているのか、人事の人たちにとってみれば相手の状態を知りえているので、都度対処法を見つけて対応をしていたわけです。孫子の兵法に「敵を知り、己を知れば、百戦してあやうからず」というものがあります。学生⇄人事は“敵”ではありませんが、相手の状態を知るということは一人ではなかなかできるものでもありません。チームとして連携して百戦あやうからずの状態にしていく必要がありそうです。


内定者同士の交流も必要

新卒の場合は早期に内定者を集め、交流の場を設定し「どのような人たちが同期になるのか?」ということを分かってもらうことも必要です。普段付き合いのある同級生達もそれぞれの内定先で様々な行事が開催されていた場合、その部分がないと不安になってもきます。

内定者研修を実施するのも一つです。今はアリルで研修、そして研修後に食事会へ移動ということもままなりませんが、昨年10月に内定者研修をご依頼いただいた数社の会社にはこのような提案をしました。

  • 研修前に皆に自分のプロフィールカードを書いてもらい、それを研修前に共有できるようにする
  • 私が内定者向けによくやるカードゲームのカードを内定者の自宅に送ってもらう
  • カードと一緒に飲み物とおつまみセットを送ってもらう

そして、当日。研修中も5、6人のグループでブレイクアウトの交流を2回、なるべく同じ人にならないようにし、食事会でも小単位で分かれ、皆が発言できるようにしました。それぞれのグループには人事の関係者も入っていただき、交流してもらいました。全体で集まった際にその後のスケジュールややって欲しいこと(会社によっては入社までにマナー含めたイーラーニングの受講をお伝えしていたところもあり)、内定者同士のSNSの運用ルールなどをお伝えして解散というスケジュールです。昨今はさまざまな制限はある環境ですが、工夫の余地もたくさんあります。入社までにどうなっていて欲しいかを考え、そのためにできることを準備していくしかありません。


まとめ

このような対応をしても、お断りの連絡をもらうこともあります。これをひっくり返すのは至難の業ですが、一矢報いる行動に出ることもあるでしょう。「どうしてお断りの流れになったのか?」の確認というよりは、相手の立場になって「どういう経緯があったか?」の立場でやり取りすることをお勧めします。私の経験でも、内定を断ってきた人が「友達を紹介してくれて、その人が内定者になった」「数年後、その会社に入社した」ということもありました。何が幸いするか分かりません。採用担当として、その時のベストを尽くしていくしかありませんね。

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著者プロフィール

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小山 貴子

一般社団法人日本テレワーク協会 相談員

1970年生まれ。12年間のリクルート社勤務後、ベンチャー企業の人事、社労士事務所勤務を経て、2012年社会保険労務士事務所フォーアンド設立。ただいま、テレワーク協会の相談員と共に、人事コンサル会社の代表取締役、東証一部上場企業の非常勤監査役、一般社団法人Work Design Labのパートナー、東京都中小企業振興公社の専門相談員等にも携わる。2年半ほど横浜と大分の2拠点生活を実施中。

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