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採用のミスマッチを防ごう ご家族への対応方法

著者:一般社団法人日本テレワーク協会 相談員  小山 貴子

採用のミスマッチを防ごう ご家族への対応方法

前回(「内定直前直後」)の最後に、「家族に反対されたので、お断りさせてください」という内定辞退について少しお話をさせていただきました。

今回はこのテーマで、より詳しくお話を進めていきたいと思います。



1. 求職者のご家族にも会社を知ってもらおう

(1)ご家族のご意向を確認する

面接中に、新卒や中途でも若手の方であれば親御さん、ご家庭のある方であればパートナーのご意向を確認する時間を作っていらっしゃいますか?ご本人が良かれと決めた就職(転職)先であっても、ご家族のご意向を無視して就職(転職)先を決めることは困難です。また会社としても、ご本人はもとより、ご家族の方にも会社のファンになっていただきたいものです(そこに配慮しない人事はあり得ません)。

「そのようなお断りは方便でしょう」と思われる人事担当者もいらっしゃることでしょう。確かにその部分も否めません。これを言われた後の対応として、これまでの経験談をお話ししますと、二通りあります。「方便だろうなぁ」と思いながらも、「残念だけど、承知しました」と受け取り、ご縁がなかったことを残念に思う形でお別れした人もいます。一方、「ご家族が反対されているのは分かりました。それを受けて、あなたも当社に入社しないのを決めたのはどのような理由からですか?」と質問を返して、話をしてきた人もいます。その場合は根底に「この人は何としてもゼッタイに口説きたい!」という気持ちがあるように思います。そこからひっくり返すのは正直、至難の業です(だからこそ、面接中にご家族のご意向をお聞きし、正直な話をしてもらえる関係性を作っておく必要があります)。そのような質問をしても残念ながらの結果になったこともありますが、一発逆転でいい結果になった時もあります。ご家族の説得を一緒にしたこともあります。ご家族、ご本人の了承を得て、ご自宅に出向いたこともありますし、ご家族の方に会社見学と称して、オフィスに来ていただいたこともあります。そのような対応に出てしまうのは、私自身の学生時代の経験があるからです。

(2)ご家族に会社のファンになってもらう

私が社会人をスタートさせた会社は、当時マスコミを騒がせていたこともあり、(一般的な見方からすると)評判があまり良くない会社でした。田舎の両親にしてみたら、そのような状況下で内定を伝えた際に(私を信用してくれていたのか)表立って反対はしませんでしたが、私も親になった今考えると心の中の不安がよく分かります。

その会社では内定期間に親御さん向けの会社説明会を実施していました。ひとり分の往復交通費も出してくれるという状況に、両親が揃って参加することを決めました。そして、参加した後、手のひらを返したような反応でした。「いい会社に入ることになって良かった!」と。それ以降はその会社にファンにもなってくれ、入社後、配属された拠点に果物を送ってきたり、社内報(希望すれば親御さんにも送られていた)に投稿したりするようにもなりました。

家族が反対している、もしくは不安になっていることには何かしらの理由があると思います。

  • 地元に帰ってくると思っていたら、都心(もしくは別の地域)の会社
  • 転勤のある会社は嫌だと思っているのに、転勤の可能性のある会社
  • 公務員になると思っていたのに、民間を選択した
  • (ベンチャー企業など)知名度がない会社で、倒産しないか、労務管理は大丈夫か
  • 世間を騒がせている会社に入社する。いつかこの会社はなくなってしまうのではないか
  • 事業内容や子どもが何をするかが把握できない

等々、具体的なことが見えず、何かしら不安であることが考えられます。この時こそ、人事担当者の出番です。会社の体制がしっかりしていること、法令を順守していること、ご子息(ご家族)が入社した後にはどんなことをやってもらうか、どんな教育体制になっているか等、具体的なことをお話しし、「うちの会社に入るといい人生が送れる」ということを真摯にアピールしていくだけだと思います。ピンチはチャンス!反対、もしくは表立って反対はしていないけれど、心の中は不安になっているようなご家族こそ、会社の大ファンになってくれる可能性を秘めています。直接情報を伝える場をできるだけ作っていきたいものです。


2. 内定者の家族を説得するのは誰?

このような話をすると、「家庭内の説得をするのは応募者の役目でしょう」や「会社がそこまでしないといけないの?入社してくる内定者達を甘えさせているようだ」とおっしゃる経営者や人事の方がいらっしゃいます。ご自身が親御さんだとして、ご子息から「この会社に内定をもらったから」と言われた後、

  • 全く何の連絡もしてこない企業
  • パンフレットを送ってきた企業
  • 親御さん向け説明会を開催してくれた企業
  • 自宅まで人事担当者が挨拶に来てくれた企業
  • 自宅まで社長が挨拶に来てくれた企業

等々、どの企業であればご子息の入社をより喜べますか。(ご自宅訪問は「公正採用」「プライバシー」の観点を逸脱しないような会社側の配慮はもちろん必要です)

私の知り合いの経営者には、海外のご家族の元までご挨拶に伺っている方もいます。新卒や中途でも若手の方であれば「これまで育ててくださってありがとうございました!これから私共でご子息をお預かりします」というお話をした上で、その方を受け入れています。

ここまでやるのは難しいというご判断であれば、少なくとも次のようなことは是非やってみてください。内定となると、内定通知書をお渡しし、入社承諾書をちょうだいするという流れになりますが、入社承諾書にはご本人と保証人の欄があり(最近は「ご本人」欄のみのものもあるようですが)、保証人の方の住所やお名前が記入されて返ってくることになります。少なくとも(ご実家まで伺わなくとも)いただいたものにはお礼をお伝えしたいですね。そのご住所宛にお手紙を送っておくことから、関係が始まるように思います。ここでもさまざまなパターンがあります。

  • 定型文のコピー:
    代表取締役名、人事部長名(規模にもよりますが)。お名前の所のみ自署等々
  • 綺麗な字のスタッフに文章を書いてもらう:
    定型文だったり、個別の方のこれまでの経歴などを表現したり個別対応
  • 代表取締役自ら自署で書く:
    定型文だったり、個別の方のこれまでの経歴などを表現したり個別対応

等々さまざまなパターンがありますが、逆の立場だったら、どれをいただくと嬉しいですか。どんな対応をしていただくと家族として「我が子の入社した会社は素晴らしい会社だ!」と思えますか。


3. 辞めたい社員を引き留めるのは家族

新入社員であれば、学生と社会人のギャップで入社早々に体調を崩す、もしくは「辞めたい」と思い始めることがあります。場合によっては本人と連絡が取れなくなるということもあります。会社が知らないうちに本人が家族に「退職したい」と伝えているパターンもありますが、家族と会社との関係性ができていると「あんないい会社はない!もう少し頑張りなさい」というやり取りになることが多くあります。体調を崩している場合、1、2日のような短期で回復する場合もありますが、長期にわたる可能性もあります。また、連絡が取れなくなる場合もありますが、上記のような関係性(手紙を送る等)ができていない中、初めて連絡をしてしまうと、「うちの息子(娘)に何をしてくれたんだ!」という状態からやり取りが始まりがちです。関係性ができていると、大抵「うちの息子(娘)がご迷惑をおかけして、申し訳ありません」というところから始まります。事前に関係性ができているかどうかは、いざという事態の際にも非常に重要になってきます。

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著者プロフィール

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小山 貴子

一般社団法人日本テレワーク協会 相談員

1970年生まれ。12年間のリクルート社勤務後、ベンチャー企業の人事、社労士事務所勤務を経て、2012年社会保険労務士事務所フォーアンド設立。ただいま、テレワーク協会の相談員と共に、人事コンサル会社の代表取締役、東証一部上場企業の非常勤監査役、一般社団法人Work Design Labのパートナー、東京都中小企業振興公社の専門相談員等にも携わる。2年半ほど横浜と大分の2拠点生活を実施中。

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