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中小企業のための「介護離職防止」対策! 第12回 認知症の方への対応と認知症介護に向き合うご家族の気持ち

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中小企業のための「介護離職防止」対策! 第12回 認知症の方への対応と認知症介護に向き合うご家族の気持ち

前回のコラムで、認知症状を患うとどのような世界になるのか、少しは想像いただけたと思います。では、実際に認知症の方に直面したらどのように対応したらいいのか?今回はこれをテーマにお話しします。


この記事の著者
一般社団法人 日本顧問介護士協会  代表理事 

2025年には5人に1人が認知症に

2025年には、5人に1人が認知症になると予測されています。そうなると、あなたの会社の社員でも、認知症を発症する方がいるかもしれません。または、お客様や立ち寄ったコンビニなどで認知症の方と遭遇するかもしれません。認知症の方と遭遇しても気づかない場合もあります。気づかないのは仕方ないかもしれませんが、認知症状を理解していないと、「なぜこのような行動や言動をするのだろう」と苛立つ感情を持ってしまうかもしれません。

そうならないために、まずは認知症の方の世界を想像していただき、その上で認知症の方への正しい対応方法を身につけていただけたら、認知症の方も、みなさん自身も精神衛生上穏やかに生活できると思います。


心得「3つの“ない”」

まず、認知症の方への対応の心得として、“3つの「ない」”があります。

  1. 驚かせない
  2. 急がせない
  3. 自尊心を傷つけない

上記3つを基本として、具体的な対応7つのポイントをお伝えします。

ポイント①【まずは見守る】
認知症だと思われる方に気づいたら、本人や他の人に気づかれないように、一定の距離を保ち、さりげなく様子を見守ります。近づきすぎたり、ジロジロ見たりするのは禁物です。


ポイント②【余裕を持って対応する】
こちらが困惑や焦りを感じていると、相手にも伝わって動揺させてしまいます。自然な笑顔で対応しましょう。


ポイント③【声を掛けるときは1人で】
複数で取り囲むと恐怖心をあおりやすいため、できるだけ1人で声を掛けます。


ポイント④【後ろから声を掛けない】
一定の距離で相手の視野に入ったところで声を掛けます。唐突な声掛けは禁物です。「何かお困りですか?」「お手伝いしましょうか?」「どうなさいましたか?」「こちらでゆっくりどうぞ」などと声を掛けることが望ましいです。


ポイント⑤【相手の目線に合わせてやさしい口調で】
小柄な方の場合は、体を低くして目線を同じ高さに合わせて対応します。


ポイント⑥【おだやかに、はっきりとした話し方で】
高齢者は耳が聞こえにくい方が多いので、ゆっくり、はっきりと話すよう心掛けましょう。早口、大声、甲高い声でまくしたてないことが大切です。その土地の方言でコミュニケーションを取ることも大切です。


ポイント⑦【相手の言葉に耳を傾けてゆっくり対応する】
認知症の方は人に急かされることが苦手です。同時に複数の問いに答えることも苦手です。相手の反応を伺いながら会話をしましょう。たどたどしい言葉でも、相手の言葉を使って推測・確認していきます。

認知症の方への対応として、“認知症の方だから”といって付き合い方を変えるのではなく、認知症に伴う認知機能低下があることを理解して対応することが必要となります。

記憶力や判断能力の衰えから、社会的ルールに反する行為などのトラブルが生じた場合には、ご家族と連絡を取り、相手の尊厳を守りながら、事情を把握して冷静に対応策を探ってみてください。決して簡単なことではありませんが、いざそのような場面が目の前にきたときには、是非このような対応の仕方を思い出していただければと思います。普段から、地域での住民同士、社内での社員同士の挨拶や声掛けに努めることも、小さな変化を見逃さないためにも大切なことです。

そして、もし仮にご自身が認知症になってしまったとき、偏見を持たずこのように対応していただけたら、きっと嬉しいと思います。


家族の気持ち

さて、認知症の方のことはある程度理解していただけたと思います。

では、認知症の方を介護しているご家族の気持ちを考えたことはあるでしょうか。認知症の方にも辛さがありますが、介護するご家族もまた複雑な心情を抱えています。実は、介護するご家族の気持ちを理解し、支えることも非常に重要なことなのです。家族や周囲の誰かが認知症になったとき、または会社の社員が認知症になったとき、誰しもショックを受け、戸惑い、混乱に陥ります。

ここでは、ご家族がどのような気持ちになり、どのように受け入れられるようになるのか4つのステップでお伝えします。

第1ステップ【戸惑い・否定】

  • 異常な言動に戸惑い、否定しようとする。
  • 他の家族にすら打ち明けられず悩む。

おかしな言動を示し始めた親や配偶者に対する家族の最初の反応は「あんなにしっかりしていた人がまさか」という戸惑い・否定です。長年一緒に暮らしてきた方を認知症と認めることはその方の人格を全否定するかのように感じられ、正面から現実を見ることに戸惑いを覚えます。異常な言動に気づいても、それを他の家族に打ち明けるべきかどうか悩んでしまうのもこの時期です。

第2ステップ【混乱・怒り・拒絶】

  • 認知症への理解の不十分さからどう対応してよいのかわからず混乱し、些細なことに腹を立てたり叱ったりする。
  • 精神的・身体的に疲労困憊、拒絶感・絶望感に陥りやすい最も辛い時期。

精神的・身体的に疲労困憊し、異常な言動を増幅させる認知症の方に対して「もう顔も見たくない」と拒絶する態度を取ってしまうことも珍しくありません。混乱と苦悩は家族全体に広がります。毎日の苦労とこんな生活がいつまで続くのかという不安が重くのしかかり、絶望的な気分へと追い詰められます。もはやご家族だけで問題を抱え込む段階ではありません。医療や福祉の相談窓口を訪ね、診察を受け、介護サービスの利用を始めれば、認知症への理解が徐々に進み、諸症状への対応方法もわかってきます。

第3ステップ【割り切り】

  • 怒ったり、イライラしたりしても、何もメリットはないと思い始め、割り切るようになる時期。
  • 症状は同じでも、介護者(家族)にとっては「問題」としては軽くなる。

様々な情報や経験によって、次第に認知症介護に慣れてきます。地域社会から医療や福祉のサービスを適切に得ることができれば、在宅介護でもやっていけるのではないか、という気持ちに変化し始めるのもこの段階の特徴です。認知症の症状が同じでも「問題」はずっと軽くなります。ただし、認知症がさらに進行して新たな症状が現れることもありますので、その場合は落ち着いた対応を取り、第2ステップに戻らないように気をつけましょう。

第4ステップ【受容】

  • 認知症に対する理解が深まり、認知症の方の心理を介護者自身がわかるまでになる。
  • 認知症であるご家族のあるがままを受け入れられるようになる時期。

認知症の方の心理を介護者自身が自然に受け止められるようになります。認知症の症状を含めご家族の一員としてあるがままを受け入れることができたら、認知症介護という厳しい経験を通じて、介護者が人間的成長をした証と言えるかもしれません。
以前ある本で「介護とは親ができる最後の教育である」という一文を見ましたが、まさにそうなのかもしれません。


介護者の余裕は、認知症の方ご本人やご家族に対する周囲からの理解や支援、そして介護サービスの適切な利用などによって得られるとされています。もしみなさんの周りで、認知症の方の介護をされている方がいたときは、是非「理解」と「支援」をしていただきたいと思います。もはや他人事ではない認知症介護を自分事と捉え、今から少しずつ知識を身につけ、普段からの意識をしていただければ、認知症の方が増えたとしても、生活しやすい地域環境になると思います。

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著者プロフィール

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石間 洋美

一般社団法人 日本顧問介護士協会 代表理事

子どもの頃から「人の役に立つ仕事がしたい」という想いを強く持っていて、高校生活のボランティア活動で福祉・介護の世界と出会う。福祉・介護に関わる仕事を目指したく、静岡福祉医療専門学校医療福祉情報科へ入学。卒業後は、介護施設にて様々な経験をする。その後、自身のスキルアップのために介護事務業務、相談業務、マネジメント業務、管理業務を行う。医療福祉接遇インストラクターの資格も取得し、お客様満足度向上のための研修講師も務める。介護の業界に携わり「誰にでも介護はある日突然やってくる」現実を目の当たりにしたとき、もっと多くの方の救いや力になりたいという想いがさらに強くなり、その想いを実現すべく、2020年4月に当協会を立ち上げ、現在は「介護で困る人と困る量を圧倒的に少なくする!」を目標に掲げ活動している。

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