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中小企業のための「介護離職防止」対策! 第14回 実際の「介護のある生活」事例①

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中小企業のための「介護離職防止」対策! 第14回 実際の「介護のある生活」事例①

これまで、介護の始まり方、いざ始まったらどうしたら良いのか? 会社としてできることは何か? そして、介護にならないためにはどう予防するのか? などについてお話をしてきました。

今回からは、実際に寄せられている介護相談の一部をご紹介していきます。どのような家族構成で、どのような状況になり、どのような介護サービスを選択して、介護のある生活へ変わっていくのか、具体事例をご紹介していきます。

この事例から、まだ介護に直面していない方も、少しでも身近に感じていただければと思います。


この記事の著者
一般社団法人 日本顧問介護士協会  代表理事 

相談事例~母親の介護開始から相談までの経緯~

【事例】
相談者(介護者):50代の女性(娘様)
被介護者:母親、80代、要介護3、認知症あり
家族構成:両親と娘様の3人暮らし。娘様は常勤(9時~18時、土日祝休み)で仕事をしている。


①介護サービスを受けることに決める

2年前に母親が認知症の診断を受けた。当初は日常生活に大きな支障はなく、日中は父親が介護をすることで生活ができていた。

1年前から徐々に認知症状が進行していき、日中の介護量も増えてきた。日中の介護が父親だけでは難しい状況になってきたため、介護申請を行い、介護サービスを受けることを決意した。


②介護サービスの開始~デイサービス~

介護申請の結果、介護度3の認定が下り、担当ケアマネジャーがついた。

担当になったケアマネジャーと、今の生活状況や娘様の仕事内容、今後の希望などについて話し合いを行い、まずは日中デイサービスへ通う案をいただいた。ただ、母親の性格上、外出を嫌がることや、他人が多くいる場所へ行くことに抵抗を示すことが予想されたため、1日型のデイサービスではなく半日型のデイサービスから始めることにした。

娘様の予想は的中し、当初はデイサービスへ通うことへの抵抗を示した。またデイサービスの環境に慣れるまで時間もかかった。デイサービスに行く日は、娘様も仕事へ行く準備をしながら父親と協力し合い、嫌がる母親の支度も並行して行っていた。

母親には、“いつまでも自分で歩いて生活するための運動をする場所”ということを共通で説明してもらい、納得するまで時間をかけた。担当のケアマネジャーの協力やデイサービスのスタッフの協力もあり、3ヵ月程でデイサービスへ行くことにも慣れ、抵抗を示すこともなくなった。


③母親の入院後、様子が一変

しばらくは平日にデイサービスへ通い、土日は娘様が介護していたが、娘様の介護疲れも見られるようになり、ケアマネジャーのアドバイスで週末のショートステイを月に2回利用することもあった。

このような形で在宅介護生活を続けていたが、ある日母親が風邪をこじらせ入院することになった。入院期間は1ヵ月だった。退院日を迎え、退院後の生活も元のようにデイサービスとショートステイを併用して在宅介護生活を継続しようと考えていたが、母親の様子が一変した。


④デイサービスを嫌がるようになる

家族から見た母親の様子は、1ヵ月間ほぼ寝たきりの生活だったため足腰はかなり弱って見えたが、笑顔もあり入院前とあまり変わらない様子に見えた。

しかし、いざデイサービス再開の日を迎えたら、迎えに来たスタッフに暴言を吐き、車に乗り込むにも強い抵抗を示した。娘様の仕事もあるため何とかデイサービスへは行くことができたが、その日は「帰りたい」の一点張りで事業所内を歩き回り、外へ出ようとする行為が続いた。そしてその対応でスタッフの方が一人つきっきりとなったようだ。


⑤デイサービスが利用できず、悩みを相談する

その後もデイサービスに行くことへの抵抗がおさまらず、行っても帰宅願望が激しくなる日が続いたため、ついに通っていたデイサービスから対応が難しいとの話が出た。

ケアマネジャーからも、今通っているデイサービスの利用は難しくなると話をされたが、その後のアドバイスはいただけなかった。娘様は仕事を辞めることはできないため、この先どのように生活したら良いのか悩み、当協会に相談がきた。


当協会からのご提案

①デイサービスを嫌がる理由を探る

まず私たちからは、デイサービスに行きたくない(嫌がる)本当の理由をゆっくりと聞き出す時間を設けることをお願いした。今まで慣れて通ってきたデイサービスをそれほどまでに拒否し、暴言を吐くことがなかった方が暴言を吐くようにまでなってしまったことには何かしらの理由があるのだと思い、それを探る会話方法をお伝えした。


②母親がデイサービスを嫌がる理由とは

その結果、娘様は理由を聞き出すことができた。入院中にとても怖い経験をしたことが判明し、デイサービスを病院と同じ場所だと勘違いし、また同じように怖いことをさせられると思い込んでいることがわかった。ただ、認知症のためその違いを理解することが難しく、一旦は会話の中で納得してもそれすらすぐ忘れてしまうため会話は堂々巡りとなってしまう。


③解決に向けてのご提案

デイサービスへの抵抗を示す理由がわかったため、ケアマネジャーやデイサービスのスタッフにこの旨を伝え、「この場所は安全で安心できる場所だ」と認識できるよう共通の会話をしていただくようお願いをすることを提案した。
それでも難しい場合には、思い切って環境を変え、お母様が安心できる場所が見つかるよう別のデイサービスもご提案した。半日型のデイサービスでは機能訓練型のサービスも多く、比較的元気な方が通われている。午前と午後の2クールを運営しているところもあり、活気があるように感じられるメリットもある。
しかし、認知症の方からすると慌ただしいような雰囲気に感じてしまう方もいる。そうなると活気は逆効果で、不穏にしてしまう場合もある。今は認知症対応型デイサービスもあるため、そのような事業所をお伝えした。


④娘様の選択

娘様は一通り試みてくださり、最終的には認知症対応型デイサービスへの利用に切り替える選択をされた。お試し利用から開始され、その事業所へ徐々に慣れていくよう少しずつ時間を調整していき、今はその事業所を利用され、「介護のある生活」を送っている。娘様は、半休を利用したり、ホームヘルパーの利用も開始したりしながら、なるべく仕事に支障がでないよう工夫されている。


まとめ

いかがでしたでしょうか?

これは在宅介護をされている方の一例にすぎませんが、入院生活の環境によっては性格も認知症状の進行も大きく変わることもあります。今回の事例のように、状態が急変することもあり、そのたびに介護プランの見直しを行い、介護者の方たちの生活習慣も変わる可能性があるということを覚えておいていただきたいと思います。

介護はその方がお亡くなりになるまで続きます。介護者の方はストレスが溜まり、経済的な不安が出てくる方もいます。今のうちからしっかりと準備し、もし何かあれば自治体の窓口や当協会のような相談対応をしているところに、すぐに相談をするように心掛けましょう。

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著者プロフィール

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石間 洋美

一般社団法人 日本顧問介護士協会 代表理事

子どもの頃から「人の役に立つ仕事がしたい」という想いを強く持っていて、高校生活のボランティア活動で福祉・介護の世界と出会う。福祉・介護に関わる仕事を目指したく、静岡福祉医療専門学校医療福祉情報科へ入学。卒業後は、介護施設にて様々な経験をする。その後、自身のスキルアップのために介護事務業務、相談業務、マネジメント業務、管理業務を行う。医療福祉接遇インストラクターの資格も取得し、お客様満足度向上のための研修講師も務める。介護の業界に携わり「誰にでも介護はある日突然やってくる」現実を目の当たりにしたとき、もっと多くの方の救いや力になりたいという想いがさらに強くなり、その想いを実現すべく、2020年4月に当協会を立ち上げ、現在は「介護で困る人と困る量を圧倒的に少なくする!」を目標に掲げ活動している。

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