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エンプロイアビリティとは? 企業が取り組むメリットを解説

監修者:FPオフィス「ライフ&キャリアデザイン」  代表 / ファイナンシャルプランナー・CFP®認定者(日本FP協会会員)、証券外務員2種、国家資格キャリアコンサルタント  山内 真由美

エンプロイアビリティとは? 企業が取り組むメリットを解説

経済用語で注目のエンプロイアビリティ。いったい、どういうことを示しているのでしょうか。これからの時代を切り拓く人材を育成するには、エンプロイアビリティの向上が必要不可欠だといわれています。

また、対になる言葉であるエンプロイメンタビリティも、企業にとっては重要なものです。

この記事では、エンプロイアビリティについて、どのような構成でできているのか、その要素とはどんなものなのかをはじめに、企業が取り組むメリット、エンプロイメンタビリティとの違いについても詳しく解説します。


エンプロイアビリティとは?

まずは、エンプロイアビリティについて説明します。

エンプロイアビリティの意味

エンプロイアビリティ(employability)とは「employ」(雇う・雇用する)と「ability」(能力)を組み合わせた言葉で「労働者の雇われる能力」を意味します。

「エンプロイアビリティの判断基準等に関する調査研究報告書概要」(平成13年7月・厚生労働省)では「労働市場価値を含んだ就業能力、即ち、労働市場における能力評価、能力開発目標の基準となる実践的な就業能力」※と定義されています。

近年のIT技術の発展、産業構造の急激な変化や労働者の就業形態の多様化によって、労働者の移動が大幅に増えました。

そういったところから、下記のような能力が求められています。

  • 新たな会社に雇われる能力
  • 同じ会社内でも雇用を継続してもらうため、新たな技術を習得する能力
  • 環境の変化に対応できる能力

そのため、「エンプロイアビリティ」が注目されています。

※参考:厚生労働省|エンプロイアビリティの判断基準等に関する調査研究報告書概要

エンプロイアビリティとエンプロイメンタビリティの違い

エンプロイアビリティが労働者の雇用される能力であるのに対し、エンプロイメンタビリティ(employmentability)は企業側の「雇用する能力」を指します。「employment」(雇用)と「ability」(能力)を組み合わせた言葉です。

優秀な人材を確保する能力、働き手から選ばれる魅力と表現することができます。この会社に雇用されたい、または、雇用を継続してもらいたいと労働者に思ってもらう魅力度を指します。

エンプロイメンタビリティの高い企業とは

働き手の価値観が多様化するなか、優秀な人材を雇用し続けるには、売上や規模といった一般的な企業価値だけでなく、労働者から見た企業価値を高める必要があります。

具体的には、就業条件を改善するとともに、評価基準の明確化、やりがいある職場の雰囲気、魅力的な知識の習得およびスキルアップ向上が目指せる環境を整えるなど。

エンプロイアビリティの向上を目指す労働者とともに、成長する姿勢を示す企業がエンプロイメンタビリティの高い企業といえます。


エンプロイアビリティの構成要素

では、エンプロイアビリティはどのような要素で構成されているものなのでしょうか。厚生労働省が示した判断基準を基に見ていきましょう。

知識・技能

業務上必要となる特定の知識や技術および資格であり、労働者個人の能力として顕在的であり、評価の基準がわかりやすい要素です。国家資格や技能検定といった資格のほか、off-JTやOJTなどの職業訓練や教育訓練によって習得する技術や、スキルおよび知識のことです。

たとえば、保険会社で保険を販売するための「保険募集人の資格」や工業勤務における「特定機械の作業手順」、不動産販売業における「宅地建物取引士」などが挙げられます(※)。

思考特性・行動特性

職務を遂行するにあたって必要な要素のうち、労働者個人の協調性、積極性等、各個人が保持している思考の特性や行動の特性に係るものです。仕事を行ううえで、姿勢や態度として現れる部分であり、顕在的な要素となります。次に説明する、潜在的な個人の特性とつながりが強いものです。

個人の性格的な部分と職業上のキャリアを積むことによって、あとから自律的に修得する部分があります。具体的には、会社内でチームで働く力として協調性や調整力、コミュニケーション能力、柔軟性などが挙げられます(※)。

個人的属性

動機、性格、信念、価値観等の潜在的な個人的属性に関するもので、仕事上では評価がしづらい要素です。本人の持って生まれた特性、性格からくる部分と、子供のころからの生活や教育によって形成される部分があり、パーソナリティーとも表現されます。

具体的には失敗した時にいつまでもくよくよしない、いつも朗らかな人柄である、叱られるより褒められるとやる気が出る、人から頼りにされると張り切るなどがあります(※)。

※参考:厚生労働省|エンプロイアビリティの判断基準等に関する調査研究報告書概要


エンプロイアビリティの分類

エンプロイアビリティは主に4つに分類されます。どういった分類があるのかを個々に詳しく説明します。

相対的エンプロイアビリティ

相対的エンプロイアビリティとは労働市場において、需要と供給によって評価が左右される職業能力を指します。需要が多く、供給が少なければ高く評価され、反対に需要が減ると、雇用される能力としての相対的な価値は下がります。

IT技術の発展に伴う環境の変化により、必要とされなくなる技術や能力などが代表例です。労働者自ら市場の変化に合わせ、新たな学びを継続する姿勢が必要なものです。

絶対的エンプロイアビリティ

比較的安定しており、時代や景気および市場のニーズに左右されず、評価が変化しないものが絶対的エンプロイアビリティです。

高度な専門知識を有する医師や会計士、弁護士のほか、学校の教師、美容師など、免許や国家資格がなければ働けない職種において、免許取得者は絶対的エンプロイアビリティを保持しています。

外的エンプロイアビリティ

自分が勤める企業の外でも通用する能力を指して、外的エンプロイアビリティといいます。労働市場において評価が高く、ほかの企業でも即戦力として、容易に転職できるため「労働移動を可能にする能力」とも表現されます。

外的エンプロイアビリィティを磨くことで、転職できるだけでなく、現在よりも好待遇の条件を引き出すことも可能です。

内的エンプロイアビリティ

いま勤めている企業において必要とされ、継続雇用されることを可能にする能力が内的エンプロイアビリティです。企業が業績悪化のため人員整理をする場合でも、対象とならないほど、組織になくてはならない存在となれば、内的エンプロイアビリティが高い人ということになります。

自社内で使われる専門知識やノウハウの蓄積、または重要顧客との関係性などが評価の対象となります。


エンプロイアビリティのメリット・デメリット

エンプロイアビリティに取り組むことで、企業においてどんなメリットとデメリットがあるのでしょうか。これから取り組もうと考えている事業主さん必見です。

エンプロイアビリティのメリット

エンプロイアビリティの考え方を企業に導入するメリットは、労働者一人ひとりが自律的にスキルアップに取り組むようになることです。その結果として組織全体のスキルの底上げにつながり、業務の生産性が向上し、グローバル化やデジタル化といった変化にスムーズに対応できるようになります。

また、労働者のエンプロイアビリティ向上に積極的な企業であるという評判が広まれば、新たに優秀な人材を確保し、定着させることにもつながります。労働者に対する能力開発への投資が企業の成長につながり、労使ともに成長するという好循環が生まれます。※

※参考:日本経済団体連合会|Society 5.0時代を切り拓く人材の育成(P6~7)

エンプロイアビリティのデメリット

エンプロイアビリティの向上により、優秀な人材ほど自分のスキルに見合った賃金や労働条件を求め、転職する恐れがあります。せっかく育てた人材が流失してしまっては、企業にとっては大きなデメリットとなります。

それを防ぐには、労働者一人ひとりのスキルの価値を見極め、必要に応じて良い条件を提示することが大切です。また、今後もこの企業でスキルを学べるといった、自社にとどまることにメリットを感じてもらうことも重要です。

逆に向上心がある優秀な人材は、学ぶ機会のない会社に見切りをつけてしまう可能性もあります。必要な人材を確保するには、継続的な人材教育の場を提供することが欠かせないといえます。


エンプロイアビリティについてのまとめ

ここまでエンプロイアビリティについて紹介しました。まとめると以下のとおりです。

  • エンプロイアビリティとは、雇われる能力のことを指す
  • エンプロイアビリティの向上は、自身の市場価値を向上させる
  • エンプロイアビリティには構成要素がある
  • エンプロイアビリティは4つに分類される
  • エンプロイアビリティの導入には、メリットとデメリットがある

この記事をきっかけにエンプロイアビリティに興味をもった事業主さんは、従業員のスキルの向上、企業の業績アップに向けてぜひ取り組んでみてください。

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監修者プロフィール

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山内 真由美

FPオフィス「ライフ&キャリアデザイン」 代表 / ファイナンシャルプランナー・CFP®認定者(日本FP協会会員)、証券外務員2種、国家資格キャリアコンサルタント

メガバンクの資産運用部門にて投資信託、外貨預金等の販売に従事した後、FPとして独立開業。

教育資金セミナー講師、子育て家族向けの運用相談、およびライフプラン相談に精力的に取り組む。近著に「FPママの親と子で学ぶお金のABC」(河出書房新社)がある。

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