人事領域で使われるロイヤリティの意味とは? 従業員ロイヤリティを高めるメリットやポイントを解説!
ビジネスシーンでよく使われる言葉の1つに、「ロイヤリティ」があります。
人事領域で使う場合は「従業員ロイヤリティ」という、会社への忠誠心を意味する言葉とするのが一般的です。
従業員ロイヤリティをさまざまな施策で高めれば、自社の業績アップも見込めます。
この記事では、従業員ロイヤリティの高め方を、事例と共に解説します。
よく似た言葉である「ロイヤルティ」との違いも解説するので、ぜひ参考にしてください。
ロイヤリティ(Loyalty)とは?
「ロイヤリティ(Loyalty)」とは、直訳すると「忠誠・忠義」です。しかし、使用するシーンによって、多少意味合いが変わります。
マーケティングにおけるロイヤリティ
マーケティングの分野で「ロイヤリティ」と言う場合、「ストアロイヤリティ」と「ブランドロイヤリティ」の大きく2つの言葉で使われます。
ストアロイヤリティとは
ストアロイヤリティとは、直訳すると「店舗への忠誠心」です。
転じて、消費者が特定の店舗に持っている愛着・信頼の度合いを意味します。
ストアロイヤリティの高い消費者は、長期間にわたって商品の購入をする特徴があり、いわば「お得意様」のような存在です。
いかにストアロイヤリティの高い消費者を増やすかが、店舗が繁栄するカギを握っていると言っても過言ではありません。
参考:「食料品購買における消費者満足とストア・ロイヤルティ」(峰尾 美也子)
ブランドロイヤリティとは
対してブランドロイヤリティは、消費者が店舗ではなく特定の商品に愛着を持ち、継続的に購入する度合いを指す言葉です。
ブランドロイヤリティが高いことはすなわち、その商品の固定客や熱心な消費者が多いことを意味します。
ブランドロイヤリティの高い消費者を確保できれば、その商品の安定した売上につながります。ひいては、発売元企業の安定した経営につながるでしょう。
参考:「ブランド・ロイヤルティの形成におけるブランド・コミットメントの長期効果」(寺本 高)
人事領域におけるロイヤリティ
一方、人事領域でロイヤリティを使う場合は、「従業員ロイヤリティ」を意味することがほとんどです。
従業員ロイヤリティは文字通り従業員のロイヤリティのことで、愛社精神、会社に対する忠誠心といった意味合いで使用されます。
マーケティング分野での考え方と同じく、従業員ロイヤリティを高めることには数々のメリットがあります。
参考:J-Net21「従業員のロイヤルティを高めるには」
ロイヤリティとロイヤルティの違い
ロイヤリティと間違えやすい単語として、「ロイヤルティ」があります。
ロイヤリティ(Loyality)は、前述のとおり忠義・忠誠といった意味です。
一方ロイヤルティ(Royalty)は、権威・地位などを意味する言葉で、特許権、商標権、著作権に支払われる使用料といった意味で使われます。
ただしカタカナの場合、Loyalty・Royaltyのどちらも「ロイヤリティ」または「ロイヤルティ」と表記される場合があります。前後の文脈から読み解く必要があるため、注意しましょう。
ロイヤリティとエンゲージメントとの違い
ロイヤリティと意味が似た言葉として、「エンゲージメント」もあります。
エンゲージメントにもいくつかの意味があります。
ビジネスシーンでは従業員が仕事にやりがいを感じ、所属する組織や自分の仕事に前向きに関わる程度を指します。
ロイヤリティとの違いは、会社と従業員の関係性です。
ロイヤリティは従業員が会社に対して持つものであり、会社と従業員は主従関係にあります。
一方、エンゲージメントは会社と従業員が対等です。従業員のエンゲージメントを高めてもらうために、会社側にも努力が求められます。
参考:
「労働者のメンタルヘルス不調の第一次予防の浸透手法に関する調査研究 平成23年度総括・分担研究報告書」(川上憲人)
従業員ロイヤリティを高めるメリット
従業員ロイヤリティを高めることには、以下のようなメリットがあります。
従業員が仕事に積極的になる
従業員の仕事へのモチベーションが高まり、積極的に業務を進める姿勢が見られます。
自主的に、会社のためになる行動をしてくれるでしょう。
また、会社に愛着を持つことで、商品・サービスについてもさまざまなアイデアを出すようになります。
既存商品がブラッシュアップされたり、新たな商品が開発できたりするかもしれません。
結果として、自社の売上アップが見込めるでしょう。
従業員の作業効率がアップする
自社の仕事へのやりがいを感じることで、従業員一人ひとりの仕事能率が向上するでしょう。
従業員ロイヤリティが高いと、各自が自社で長く働く前提で仕事に取り組みます。
そのため、「今後のために効率化できるところはないか」と、自ら仕組みづくりをするようになるのです。
長く働く従業員が増えることで、社内のナレッジも蓄積されます。企業として成長できるのはもちろん、長期的な人材育成も可能となるでしょう。
離職率が下がり、人材確保もしやすくなる
会社への忠誠心があることで、従業員の中に仕事に対するやりがいやモチベーションが生まれます。
この結果、離職率も下がるでしょう。
加えて、リファラル採用もしやすくなります。
前述のとおり、会社への愛着がある従業員は、自身が長く働く前提でいます。
友人・知人に「自分の会社は良い会社だ」と紹介することも増え、新たな人材を呼び込むきっかけにもなるのです。
従業員ロイヤリティを高めるためのポイント
従業員ロイヤリティを高めるためには、従業員が自社への愛着が持てるような働きかけが必要です。
主な方法として、以下の3つが考えられます。
企業理念やビジョンを全従業員に共有し、浸透させる
自社が掲げる企業理念や目指す姿(ビジョン)を、従業員に理解させましょう。
ただし、単に内容を把握させるだけではいけません。
「自分はその達成のために何をやるべきなのか」「自分が行っている仕事は、自社のどういった目的に貢献できているのか」を自覚させることが重要です。
社内研修やミーティング、社内報での発信などが効果的です。社歴の異なる社員同士での懇親会も良いでしょう。
コミュニケーションの機会を増やし、従業員同士のつながりを強める
従業員同士が積極的にコミュニケーションを取れる環境を整えましょう。
一般社員同士だけではなく、一般社員と経営層とのコミュニケーションも含まれます。
従業員ロイヤリティの高低は、一般社員と上層部との関係性が大きく影響すると言われています。
日頃から接する機会を増やし、「相談しづらい」「自分のことを分かってくれていない」と思われないよう努めましょう。
面談や定期ミーティングのように業務に関連するものだけではなく、雑談ができる場を増やすのもポイントです。
チャットツールや社内SNSを導入して、オンラインでやりとりしやすい環境を整える方法もあります。
人事評価の基準を見直す
人事評価に対する納得感を高められるよう、人事評価の方法も見直しましょう。
一般的に、人事評価はその従業員が出した「成果・結果」に着目して行われます。
しかし、成果や結果だけに着目してしまうと、そこに至ったプロセスや業務に対する姿勢は見えなくなってしまいます。
「やったことが正当に評価されない」と、従業員に不満を覚えさせてしまうかもしれません。
成果・結果だけではなく、行動やプロセス、取り組む姿勢まで評価できるように、評価の軸を決め直しても良いでしょう。
上司が従業員をより丁寧に見たり、フィードバックしたりもしやすくなるはずです。
従業員ロイヤリティが高い会社はどんな会社?
従業員ロイヤリティの高い会社には、いくつかの共通点が見られます。
トップダウンではなく、現場主導で取り組みを進めている
従業員ロイヤリティを高める取り組みを、経営層が一方的に進めるのではなく、現場の管理職が主導して進めています。
部下の自社への満足度を調査したり、小まめにヒアリングをしたりして、現場の課題を把握しています。
そのうえで、どうしたらその課題を解決できるかを考えて、社内制度や従業員ロイヤリティを高める取り組みに反映していくのです。
従業員一人ひとりを尊重する姿勢を見せることで、従業員ロイヤリティを高めていると言えるでしょう。
長期間・定期的に取り組んでいる
前述の内容にも関連しますが、従業員ロイヤリティを高める取り組みに長期間・定期的に取り組んでいる点も特徴です。
たとえ管理職が従業員へのヒアリングをしていたとしても、1回ないし数回で終わってしまっていては意味がありません。
定期的に行わなければ、従業員ロイヤリティを高める取り組み自体が忘れられたり、取り組んでいる意義を従業員が見失ったりしてしまいます。
ユーザーを尊重した商品・サービスを提供している
社内体制のみではなく、取り扱っている商品やサービスの内容も影響します。
商品の品質にこだわり抜いていたり、ユーザーの利便性・快適性を重視したサービスを展開していたりする企業も、従業員ロイヤリティが高い傾向です。
「ユーザー満足度を高めるためにはどうしたら良いか」を従業員一人ひとりが主体的に考える土壌が出来上がっている点が、大きいと考えられます。
岩田商事株式会社|従業員目線での人事評価制度を採用、好業績をキープ
大分県でガソリンスタンド5店舗を経営する岩田商事株式会社では、人事評価制度の見直しにより、好業績を保っています。
元々は、全従業員が一律の基準で評価される人事評価制度しかありませんでした。
また、かつてトップダウンで経営をしていましたが、社長不在時に事が運ばなくなる事態に陥ったこともありました。
そこで社長は従業員の自主性と納得感が経営に重要だと考え、人事評価制度の抜本的な見直しに踏み切ったのです。
導入方法、スケジュールなどは全て従業員がメインで検討し、導入の必要性も彼らから説明。従業員自らが自由に設定できる評価項目も設けました。
この結果、一人ひとりが目的意識を持って業務に当たるようになったのです。
業務上の工夫やサービス向上も見られ、社会情勢のあおりを受ける中でも優れた業績を挙げ続けています。
正栄産業株式会社|経営計画書を全社員に共有し、社員の信頼も売上もアップ
富山県で木造建築工事業を営む正栄産業株式会社は、自社の経営計画書の共有で売上アップを実現しています。
同社は1997年に創業し、以来右肩上がりの成長をしていたものの、リーマンショックで経常利益4割減。
全社員が団結し、苦境を乗り越える必要があると考えた社長は、経営計画書を手帳型にし、全社員および取引先の金融機関に配布しました。
同計画書には貸借対照表や損益計算書、投資計画、営業指針などあらゆる資料が入っています。
この計画書の作成には、現場の部門責任者も大いに関与しました。
トップダウンとボトムアップで作り上げた計画書は、現場の業務における判断の基準となり、業務効率も向上。
「これがあったほうが働きやすい」と、退職した社員が戻ってきたこともありました。
配布は2010年に開始し、2021年には売上が当時の2倍になっています。
ロイヤリティについてのまとめ
ロイヤリティはさまざまな意味合いを持つ言葉ですが、人事領域で使う場合は「従業員ロイヤリティ」を指すことがほとんどです。
そして、従業員ロイヤリティを高めることにより、自社の組織強化につながります。
従業員ロイヤリティは一朝一夕で高められるものではありません。
しかし、社員の世代や性別なども踏まえた適切な施策を長期的に行えば、高い効果が見込めます。まずは自社にどんな施策が必要かを考え、実践してみてください。
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