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ダイバーシティ&インクルージョンとは? 推進すべき理由や導入事例を解説!

監修者: 2級キャリア・コンサルティング技能士(国家資格) キャリアコンサルタント(国家資格)CDA(career development adviser) ハラスメント対策認定アドバイザー  五十嵐 美貴

ダイバーシティ&インクルージョンとは? 推進すべき理由や導入事例を解説!

近年、自社の経営に「ダイバーシティ&インクルージョン」を取り入れる企業が増えています。

従業員一人ひとりの性別・年齢や、知識、働き方を尊重し、誰もが活躍できるような環境を整えるもので、特に人材の確保や市場優位性を高めるために効果的です。

しかし、自社に導入し、かつ良い成果につなげるためには、様々な工夫や配慮も必要です。

この記事では、ダイバーシティ&インクルージョンの導入手順や事例を解説します。


ダイバーシティ&インクルージョンとは

「ダイバーシティ&インクルージョン」とは、人材の多様性(ダイバーシティ)を受け入れ、各自が活躍できるような環境を整えること(インクルージョン)です。

この「多様性」は、一例として以下の点が含まれます。

  • 性別
  • 国籍
  • 年齢
  • 知識や経験
  • 働き方・時間的制約

性別のように目に見える多様性だけではなく、知識や経験、時間的制約といった、目に見えない多様性も含まれる点が特徴です。

なお、ダイバーシティ&インクルージョンは「ダイバーシティマネジメント」と呼ばれることもあります。

参考:「ダイバーシティ&インクルージョンの基本概念・歴史的変遷および意義」(中村 豊)


ダイバーシティ&インクルージョンを推進すべき理由

企業がダイバーシティ&インクルージョンを推進すべき理由は、大きく3つが挙げられます。

優秀な人材を確保できるから

現代では少子高齢化の進行、人々のライフスタイルや価値観の多様化が見られます。

こうした環境に適応し、幅広い人材を採用する土壌を作ることで、これまで確保できなかった人材を採用しやすくなるでしょう

また、企業のグローバル化が進む今日、国際的な競争力を高めるためにも有効です。

世界中の人々をターゲットとした製品づくりを考えるなら、国籍・人種の異なる人材や、多言語が話せる人材は頼れる存在でしょう。

離職率を下げやすくなるから

採用した人材が定着し、離職率低下を防ぐためにも効果的です

厚生労働省のデータによると、令和2年度における就職後3年以内の学歴別離職率は以下のとおりです。

  • 中卒:55.0%
  • 高卒:36.9%
  • 短大卒など:41.4%
  • 大卒:31.2%

事業所規模が小さいほど、離職率は高い傾向です。新卒就職者以外の離職者も含めると、より数値は高くなります。

もちろん業種によっても異なり、就職者自身に起因する問題もあります。

しかし従業員の定着率を上げるためには、魅力ある職場づくりは欠かせないでしょう。

参考:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況を公表します

自社の市場優位性を高められるから

多様な人材の意見を聞いて製品やサービスに反映することで、独自性の高いものを作りやすくなります

似た年齢やキャリア、ライフスタイルの従業員だけで製品開発に取り組んでいても、なかなか新しい発想は生まれにくいものです。

多様な人材が持つ意見やアイデアを取り入れることで、これまでになかった視点で製品開発ができるでしょう。その結果、市場優位性も高めやすくなるはずです。


ダイバーシティ&インクルージョンを実践するための行動ガイドライン

自社でダイバーシティ&インクルージョンを実践する場合の流れを解説します。

参考:経済産業省「ダイバーシティ 2.0 行動ガイドライン 実践のための7つのアクション

1.KPI・ロードマップを策定し、経営戦略へ組み込む

自社の現状を踏まえ、ダイバーシティ&インクルージョンに関する課題・問題点を洗い出します。

目的と目標を明確にしたうえで、中長期的視点から具体的な行動計画を立てましょう

なお、ダイバーシティ&インクルージョンに取り組み始めるタイミングに決まりはありません。

取り組むべきだと感じたら、早々に取り組みましょう。

2.推進体制を構築する

自社の方針が固まったら、取り組みを主導する体制を作りましょう。

経営者自らがダイバーシティ&インクルージョン推進部門のリーダーとなり、事業部門と密に関わって進める必要があります

取り組みの推進を監督する取締役会そのものも、多様な人材で構成するのがポイントです。

自社がグループ会社である場合は、親会社・子会社や、関係企業との連携・役割分担も行いましょう。

グループ一丸となって進行できるよう、協力するのがカギです。

3.新たな人事制度・労働環境の整備

多様性に考慮した人事制度を整備します。

必要に応じて既存の評価制度を見直し、性別や年齢などを問わず活躍できる仕組みを作りましょう

勤務体制や役割分担を見直し、労働環境を整備するのも良い方法です

テレワークの奨励や、育児・介護をしながらでも働きやすい制度を導入する企業もあります。

4.管理職・従業員の育成

現場での管理職や従業員の教育も重要です

管理職には多様性に関する研修を受けさせたり、ハンドブックを渡したりして理解を深めさせましょう。

人事評価の基準に、多様性に関する理解度を測る指標を作っても良いかもしれません。

一般社員には、多様性を生かして働いている社員をロールモデルとして紹介する方法もあります。

従業員向けのWebサイトがあれば、そこでさまざまな資料を共有することもできます。

もちろん、管理職同様に研修を受けさせるのも良いでしょう。

5.人材戦略について外部に積極的に発信する

ダイバーシティ&インクルージョンの取り組みを自社だけで完結させず、積極的に外部に発信しましょう

企業が使える発信方法としては、以下が挙げられます。

  • 自社のWebサイト・SNS・パンフレット
  • 株主に渡す資料類
  • 広告・プレスリリース
  • 就活・転職エージェント、自治体が開催する就職・転職フェア、インターンシップ
  • 「くるみんマーク」「えるぼし認定」の取得

一言で「発信」と言っても、さまざまな方法があります。

新卒就職者以外の世代まで対象にしたインターンシップや、職場見学を実施するのも良いでしょう。

株主総会での説明も効果的です。

また、「くるみんマーク」「えるぼし認定」といった、厚生労働省の認定を取得する手もあります。

資料・パンフレットなどに掲載できるほか、厚生労働省のWebサイトで認定企業として公表もされるためです。


ダイバーシティ&インクルージョンを推進する際に注意すべき点

ダイバーシティ&インクルージョンを進める際、注意すべき点もあります。

自社の従業員や現場に即した施策を進める

形式的な施策ではなく、自社の実情に沿った施策にしましょう

後述しますが、ダイバーシティ&インクルージョンを経営に取り入れて、大きな成果につながった企業は多数存在します。

しかし、当然ながら企業の規模や事業内容、従業員の内訳など、自社と同じところは1つとしてありません。

成果が出た企業の事例を分析したうえで、自社にどう取り入れるべきか考えてみてください。

関連する法律・制度を深く理解する

多様な人材を受け入れるためには、関連する法律や制度についても知っておく必要があります

一例として、以下の内容は知っておきましょう。

  • 女性活躍推進法
  • 高年齢者雇用安定法
  • 障害者雇用促進法
  • 次世代育成支援対策推進法

このほか自社に必要だと感じるものがあれば、積極的に調べておくことをおすすめします。

すぐに結果を出そうとしない

ダイバーシティ&インクルージョンの導入は、時間をかけて行いましょう

制度を整備したところで、すぐに結果が出るわけではありません。

確かにうまく経営に取り入れ、成果を出している企業は多数あります。しかし、どこも数年~10年ほどかけて取り組み、徐々に成果を出しています。

定期的な進捗確認や効果測定も行いながら、丁寧に進めていきましょう。

コミュニケーションや相互理解を進める施策も必要

従業員の理解を得られるよう、丁寧なコミュニケーションを心がけてください

ダイバーシティ&インクルージョンを経営に取り入れることは、これまでの社内体制・評価制度などを変えることにもなります。

一時的にチームワークが低下したり、評価が変わることで不平不満を持つ従業員が増える可能性もあります。

かえって差別・排他意識が助長される、社内の混乱やハラスメントのリスクが生じるおそれもあるでしょう。

なぜ、自社にダイバーシティ&インクルージョンが必要なのかを説明し、納得してもらえるよう努めましょう。


ダイバーシティ&インクルージョンの導入事例

最後に、ダイバーシティ&インクルージョンを経営に導入し、大きな成果を上げた企業の事例を3つ紹介します。

参考:経済産業省「令和2年度 新・ダイバーシティ経営企業100 選

株式会社熊谷組|男性中心の体制を見直し、純利益130%に

土木・高層建築の分野で知られる株式会社熊谷組は、ダイバーシティ&インクルージョンの導入により、時間外労働の短縮を始め多数の成果が出ています。

業界の特性もあり、同社の社内体制は男性が中心。長時間労働も常態化していました。

そうした点から建設業界を敬遠する学生は多く、少子高齢化も迎えていることから、人材確保のためには体質改善が必須と考えたのです。

2015年よりダイバーシティ推進に取り組み、ダイバーシティ推進専任部署も設置。

短時間勤務ができる期間の延長、子供が生まれた男性社員およびその上司に対する育休取得の案内や、多様性理解を深めるeラーニングなどを実施しました。

その結果、2021年度の月平均時間外労働時間は、2015年度に比べて1人あたり24.2時間減少、当期純利益は130%になっています。

株式会社足立商事|自由度の高い勤務形態を導入、売上約10倍に

大阪府で雑貨の卸売や加工業務を受託する株式会社足立商事は、独自の勤務形態により売上が4年間で約10倍になっています。

同社の所在地は過疎化の進む地域で、企業は人材確保が、フルタイム勤務の難しい主婦や高齢者は就職が難しい状況でした。

そこで2018年に、1日1時間・週5時間からの勤務ができ、遅刻・早退・欠勤も全て認める完全フリー・フレックス制を導入。

全業務のマニュアル化、従業員の適性を踏まえた業務の割り振りも行いました。

2016年に約20名だった社員は、2020年時点で47名に。売上は完全フリー・フレックス制導入から4年後に、約11億円に達しました。

創業時の約10倍になった計算です。短時間勤務の積み重ねで成果を出した姿勢が評価され、他社から事業引き継ぎの打診も来ています。

株式会社ズコーシャ|働きやすい環境の整備で生産性も受注数もアップ

北海道で総合コンサルタント業を営む株式会社ズコーシャは、勤続しやすい環境を整備して新規技術・事業の開発に成功しています。

同社は1990年代後半から赤字に悩まされており、事業内容のブラッシュアップを試みました。

そのためには性別や年齢を問わず多様な人材が必要だと考え、まずは従業員が勤続しやすい環境を整えるところから着手したのです。

フレックスタイム制や年次有給休暇の時間単位取得を導入したほか、介護休暇・看護休暇を有給化する、育休中の社員を訪問する、民間の託児所との連携といった取り組みを実施。

どのようなライフステージであっても働きやすい体制を作ったのです。

その他の様々な施策も相まって、全社員の生産性が向上。新たな技術・事業も創出でき、受注件数も増加しています。


まとめ

ダイバーシティ&インクルージョンの推進は、企業がこれからの時代を生き抜くために欠かせないものです。

自社に取り入れることで、利益増や人材の確保に成功した企業もあります。

しかし、成功事例をただ真似れば良い訳でもありません。形式的な施策だけでは、かえって従業員のモチベーション低下を招く可能性もあります。

何から着手すべきか分からない場合は、ダイバーシティ&インクルージョンの必要性を調べてみましょう。

自社の業務内容や従業員の内訳などとともに、どういった取り組みができるか考えてみてください。


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監修者プロフィール

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五十嵐 美貴

2級キャリア・コンサルティング技能士(国家資格) キャリアコンサルタント(国家資格)CDA(career development adviser) ハラスメント対策認定アドバイザー

フリーランスのキャリアコンサルタントとして、高校生から中高年までの幅広い年齢層の就職・転職支援、相談業務に従事。

高校や大学での面接指導、職業訓練校や就労移行支援事業所での講師兼キャリアコンサルタント、就職・転職フェアでの相談コーナーにて、求職者を支援。新卒・中途採用、次世代リーダー選別のアセスメント業務歴25年。適性診断テスト(文章完成法テスト)を用いての人物像把握など、これまで10数社の判定に携わる。

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