試用期間とは? 給料や待遇の差・退職や解雇の扱いについて
試用期間とは入社した社員のスキルや適性を図る期間のことで、本採用の前に導入する企業が多いでしょう。試用期間は会社と労働者のミスマッチを防ぐのに、重要な役割があります。
この記事では、企業の人事部や法務部に向けて、試用期間の特徴や待遇、雇用形態などをまとめました。また、本記事の後半部分では、試用期間延長の要件と試用期間中に解雇する場合の条件を解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。
試用期間とは
試用期間とは、入社した社員のスキルや適性、職場との相性などを企業が判断する期間のことです。
新入社員側からすると、仕事内容や社風が自分の価値観に合っており、長期的に働けるか否かを判断できるでしょう。試用期間の終了後、企業と労働者の双方が問題なく勤務できると判断すれば、新入社員は本採用になります。
詳しい期間や待遇、雇用形態を見ていきましょう。
(出典:e-Gov 労働契約法第17条)
期間
試用期間の期間は3か月が一般的ですが、1ヵ月〜6ヵ月の間で決められるケースが多いでしょう。それぞれの会社の判断によって、具体的な試用期間が決められます。
給料・待遇
試用期間中の給与は本採用時より低い場合がありますが、法律で定められた最低賃金を下回らなければ問題ありません。ただし、試用期間を設ける際に企業側は詳しい条件を、労働条件通知書や就業規則などに明記し、労働者に合意してもらう必要があります。
(出典:e-Gov 労働基準法第15条)
一方「企業が労働局長の許可を得ている場合に限り、時給換算した試用期間中の給与が、各都道府県の最低賃金よりも低いことがあります」は通常の採用で適用されるケースはほぼありません。
(出典:e-Gov 最低賃金法第7条)
障害者採用や職業訓練的な雇用、簡易な作業など、最適賃金に見合う仕事を期待できない場合が対象のためです。また、試用期間中かどうかにかかわらず、労働保険や社会保険などの保険の加入、残業代の支払いは入社時から適用されます。
雇用形態
試用期間中と試用期間満了後とで雇用形態は変化しません。ただし、労働期間を事前に取り決める一定期間有期雇用契約を取り交わし、その後に正社員雇用する場合は、雇用形態が切り替わる段階で雇用契約を結び直さなければなりません。
有期雇用契約を更新して試用期間の延長も可能ですが、試用期間を通算して1年以内程度に抑えるようにしましょう。なお、トラブル防止の観点から、試用期間が延長される可能性があることを新入社員の入社時に伝えておきましょう。
(出典:e-Gov 労働契約法17~19条)
試用期間が設定される目的
企業が試用期間を設定する目的は、社員のスキルや適性などを見極めたり、企業との相性を確かめたりするためです。面接だけでなく、実際に一緒に働いてみないと人間性や仕事に対する向き合い方がわからないでしょう。
また、企業にとって社員1人雇用するのは大きなコストがかかります。試用期間を経て本採用するかどうかを決める方が、採用後のミスマッチを防げるメリットがあります。社員側も企業を選別する機会が持てるため、試用期間後の定着率アップが期待できるでしょう。
試用期間と混同されやすい言葉との違い
試用期間と混同されやすい言葉とその違いを解説します。特に研修期間や仮採用と混同されるケースが多いため、詳しく見ていきましょう。
研修期間との違い
研修期間とは、入社後に1人前として仕事できる前に研修や訓練する期間です。例えば、飲食店の調理をする場合、いきなりお客様に提供する料理は作れないため、調理方法を学ぶ期間などが該当します。
一定規模の会社では、上司からの直接指導のみならず、配属前に新入社員の集合研修が行われるケースも多いでしょう。
仮採用との違い
仮採用とは、企業が採用を検討する人に対し一定期間の契約を結び、適性や相性のチェックをするための採用です。試用期間は正式採用後の最初の一定期間ですが、仮採用は正式採用するかどうかを判断します。
また、仮採用期間が終わると、雇用契約自体が終了する可能性もあるでしょう。
試用期間における解雇・延長の扱い
試用期間における解雇や延長の扱いをまとめました。
試用期間中の解雇
まずは、試用期間中の解雇の仕組みを解説します。試用期間中に労働者を解雇できますが、その際は厳しい制限が設けられています。
試用期間中に解雇できる要件
試用期間中に労働者を解雇できる要件は、解雇する理由が客観的に見て正当であるか否かです。しかし、労働者保護の観点から、客観的に見て解雇に相応する理由がなければなりません。具体的には、労働者の次のような行動が解雇理由に該当します。
- 非常識的な遅刻や欠勤を繰り返す
- 勤務態度に大きな問題がある
- 労働者が申告した情報に重大な虚偽があるなど
(出典:e-Gov 労働契約法16条)
試用期間中の解雇の手続き
試用期間開始から14日目を境に、解雇の手続きの内容が変わります。
14日目を経過した後に解雇する場合、通常の正社員解雇と同様の手続きをおこないましょう。具体的には、解雇日の最低30日前には従業員に対して解雇すると通知する解雇予告が必要です。解雇予告なくいきなり解雇する場合は、平均賃金の30日分を解雇予告手当として支払います。(出典:労働基準法第20条)
一方、試用期間開始から14日以内に解雇する際は、解雇予告や解雇予告手当の支払いは必要ありません。(出典:労働基準法第21条)
ただし、試用期間開始から14日目以内かそれ以降かに関わらず、客観的な解雇理由が必要です。
試用期間の延長
試用期間を延長できる条件は次の3つです。
- 就業規則に試用期間延長に関する規定の明記
- 従業員が期間延長に合意する場合
- 期間延長に客観的で正当な理由
労働条件通知書や就業規則に試用期間延長の内容が記載されており、労働者に期間延長の合意を得る必要があります。そのうえ、経歴詐称や無断欠勤が多いといった正当な理由がなければ、試用期間を延長できません。
また、業務上のミスが多いなどの理由では期間延長できないでしょう。仕事の習熟度の低さは試用期間のため当然と判断されるからです。
試用期間についてのまとめ
試用期間は、従業員の適性や企業との相性などを確認するための期間です。雇用契約を結ぶという点では正社員と同じですので、社会保険の加入や残業代の支払い、解雇などは原則正社員と同様のルールが適用されます。試用期間中の社員を解雇したい場合は、不当解雇にならぬよう決められたルールや手順を守りましょう。
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