障害者雇用に関する助成金まとめ|種類ごとの概要と利用時の注意点
障害者雇用助成金制度とは、企業が障害者を雇用すると助成金が受けられる制度です。しかし、障害者を雇用しようとしても、助成金にもさまざまな種類があるため不明な点が多くあるでしょう。
この記事では、障害者雇用助成金の種類や内容と受給条件を解説します。また、この記事の後半部分では、障害者雇用助成金を利用する際の注意点をまとめましたので、ぜひ最後までご覧ください。
障害者雇用の助成金とは
障害者雇用助成金とは、障害者を雇った企業が使える助成金で、障害者が働くのに必要な環境整備費などに活用できます。制度の目的や支給対象を見ていきましょう。
障害者雇用助成金制度の目的
障害者雇用助成金制度の目的は、企業が障害者を雇用しやすいよう、労働環境などを整備してもらうことです。具体的には、バリアフリー化や手すりの設置などが該当します。
障害者雇用促進法の制定により、障害者における法定雇用率の達成が義務化され、積極的に採用しなければなりません。障害者雇用助成金には障害の度合いなどにより、要件別で複数の助成金が用意されています。
障害者助成金の対象
障害者雇用促進法により、次の手帳を持つ障害者が条件です。
- 身体障害者手帳
- 療育手帳
- 精神障害者保健福祉手帳
しかし、次の病気であれば、障害者雇用助成制度が支給されます。
- 統合失調症
- そう鬱病
- てんかん
また、次のようなケースでも障害者雇用助成金を受け取れる条件を満たしています。
- 地域障害者職業センターやハローワーク:心身の障害で長期間、職業生活が不自由または、職業生活を営むことが著しく困難な方
- 身体・知的・精神などの65歳までの障害者:継続雇用ができます。ただし、障害者のサポートや正当な評価、適当な雇用の場、雇用管理を行うのが条件です。
障害者雇用助成金の種類とその内容
障害者雇用助成金の種類とその内容を詳しく見ていきましょう。
雇用した場合
一定の人数以上の従業員を使用している事業場は、障害者を1人以上雇用しなければなりません。障害者の雇用の促進等に関する法律により、定められているためです。
事業主が障害者を雇用した場合、利用できる障害者雇用助成金は主に2種類です。
特定求職者雇用開発助成金
特定求職者雇用開発助成金は、高齢者や障害者等の就職が特に困難な者を、ハローワークや民間の職業紹介事業者などの紹介によって、継続的に雇用する事業主を助成する制度です。
障害者の雇用に関する者としては「特定就職困難者コース」が該当し、最大で240万円を3年間受け取れます。期間ごとの支給額は、最大40万円×6期(6か月が1期)です。
(出典:厚生労働省 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース))
トライアル雇用助成金
トライアル雇用助成金は安定的な就職が困難な求職者を、ハローワークや民間の職業紹介事業者などの紹介により、一定期間試行雇用する事業主に助成する制度です。
具体的には、次のようなことが不足する求職者が該当します。
- 職業経験
- 技能
- 知識
障害者の雇用については、「障害者トライアルコース」と「障害者短時間トライアルコース」の2種類があります。これらのコースにおいては、それぞれ障害の状態や障害の種類によって対象となるコースが異なります。
また、支給額はいずれのコースにおいても共通で月額4万円が支給されます。一定の障害者には8万円が支給されます。
(出典:厚生労働省 トライアル雇用助成金(一般トライアルコース))
施設等の整備や適切な雇用管理の措置をした場合
設備の設置や整備を行う事業主や、障害者の雇用の促進・継続を図るために取り組む事業主が、雇用した障害者の障害の特性による、就労上の問題を解決するために利用できる助成金は主に3種類です。
障害者作業施設設置等助成金
障害者作業施設設置等助成金は、対象障害者の障害の特性による、就業上の課題を克服する作業施設費用を支給します。
支給内容は2種類です。
- 工事や購入で設置・整備:第1種作業作業施設設置等助成金
- 賃貸で設置・整備:第2種作業作業施設設置等助成金
いずれの場合も、支給対象となる設置・整備にかかる費用の3分の2が、助成金として支給されます。
(出典:厚生労働省 障害者作業施設設置等助成金)
障害者福祉施設設置等助成金
障害者福祉施設設置等助成金は、継続して雇用する障害者の福祉増進を図るための、福祉施設などの設置する費用を支給します。支給対象者は、整備する事業主または、当該事業主が加入している事業主団体です。
支給額は支給対象となる費用の3分の1が支給されます。
(出典:厚生労働省 障害者福祉施設設置等助成金)
障害者介助等助成金
障害者介助等助成金は、雇用されている障害者の障害特性に応じて、適切な雇用管理のために必要な介護者の配慮などの特別な措置を行う事業主に、支給されます。
具体的には、次の6種類に分かれています。
- 職場介助者の配置又は委嘱助成金
- 職場介助者の配置又は委嘱の継続措置に係る助成金
- 手話通訳・要約筆記等担当者の委嘱助成金
- 障害者相談窓口担当者の配置助成金
- 職場支援員の配置又は委嘱助成金
- 職場復帰支援助成金
助成額は該当する助成金によって支出した費用の3分の1や3分の2など、金額が異なります。
(出典:厚生労働省 障害者介助等助成金)
(出典:厚生労働省 令和5年度雇用・労働分野の助成金のご案内)
職業能力開発をした場合
障害のある労働者の職業能力開発を促進することで、職務に関連した専門的な知識と技能を習得させたるための職業訓練などを計画に沿って実施した場合において、その訓練に要した経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度があります。
- 人材開発支援助成金
人材開発支援助成金は、職務に関連した専門的な知識と技能を習得させるため、計画に沿った職業訓練を行う際に発生した費用などを助成する制度です。労働者の職業生活設計の全期間を通じて段階的・体系的な職業能力の開発を促進させ、事業主の負担軽減が目的です。
大きく7つのコースに分かれており、それぞれのコースごとに発生した費用の一部や、訓練期間中の賃金の一部の助成が行われます。
- 人材育成支援コース
- 教育訓練休暇等付与コース
- 人への投資促進コース
- 事業展開等リスキリング支援コース
- 建設労働者認定訓練コース
- 建設労働者技能実習コース
- 障害者職業能力開発コース
- 重度障害者等通勤対策助成金
重度障害者等通勤対策助成金は、重度の障碍者の住宅を賃貸したり、指導員の配置、通勤のためのバスを購入したりする費用の助成等を行う制度で8種類に分かれます。
支給額は、それぞれの支給対象費用につき4分の3を乗じた金額です。
- 重度障害者等用住宅の賃借助成金
- 指導員の配置助成金
- 住宅手当の支払助成金
- 通勤用バスの購入助成金
- 通勤用バス運転従事者の委嘱助成金
- 通勤援助者の委嘱助成金
- 駐車場の賃借助成金
- 通勤用自動車の購入助成金
(出典:厚生労働省 重度障害者等通勤対策助成金)
職場定着のための措置をした場合
有期雇用労働者や短時間労働者、派遣労働者など、非正規雇用労働者の障害者が企業内におけるキャリアアップをするため、それを促進する取り組みを行った事業主に助成金が支給される制度があります。
キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)
キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)は、障害のある有期雇用労働者などを正規社員へ転換した際に利用できます。
より安定度の高い雇用形態に転換等をすることで、障害者の職場定着を図った事業主が支給対象です。支給金額は障害の程度などにより異なりますが、最大で120万円が2期に分けて支給されます。
(出典:厚生労働省 キャリアアップ助成金のご案内)
障害者雇用の助成金を利用する際の注意点
障害者雇用の助成金を利用する際の注意点を3つまとめました。
障害者に合わせた労働環境
雇用した障害者に可能な限り合わせた労働環境を提供すると、障害者の従業員がより長く働けるでしょう。障害の度合いや症状を考慮しながら、声を掛けたり気を配ったりするとよいです。
1人1人が意識すると職場全体の雰囲気がよりよくなるはずです。
実雇用率が変動制
実雇用率とは企業が雇用する障害者の割合で、43.5人以上の従業員がいる事業主には、障害者の法定雇用率を満たすよう義務付けられています。実雇用率と法定雇用率を割り出す際は次の計算式を用います。
- 実雇用率 = 障害者の労働者数 + 障害者の短時間労働者数 × 0.5 / 労働者数 + 短時間労働者数 × 0.5
- 法定雇用障害者数(障害者の雇用義務数) = (常用労働者数 + 短時間労働者数 × 0.5) × 障害者雇用率(2.3%)
まず、所定労働時間が週30時間以上における常時雇用労働者は1人で、週20時間以上30時間未満の労働者(短時間労働者)は0.5人に扱われます。障害者の労働者数のカウント方法は次の通りです。
- 重度の身体的障害者と知的障害者:2人
- 身体的障害者、知的障害者、精神的障害者:1人
申請の手続きが複雑
障害者雇用助成金にはさまざまな種類に分かれていますので、用途によって支給される条件が複雑になっているでしょう。
具体的には、必要な書類や申請方法などに違いがありますので、手続きが複雑になりがちです。手続きが正しく行われないと、支給開始日が遠のいたり、多くの手間がかかったりしますので、注意しましょう。
障害者雇用助成金についてのまとめ
障害者雇用の助成金には、雇用自体に対するものや設備設置や職業訓練などに関するものなどさまざまな種類があります。企業が障害者を雇用する際は配慮を忘れず、他の従業員にとっても働きやすい職場作りが必要です。
この記事を参考にしながら、各種の助成金を積極的に活用し、障害者の雇用拡大に努めていきましょう。
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