ダイレクトソーシングとは? 従来の採用方法との違いやメリット・デメリットを紹介
近年の人材獲得競争の激化を踏まえ、企業は「攻め」の採用手法を取る必要があります。
そうした状況下で注目されているのが「ダイレクトソーシング」です。
企業自ら、採用候補者を見つけてアプローチする方法で、導入している企業は増えつつあります。
ダイレクトソーシングの特徴や導入するメリット、この方法での採用活動が適する企業について解説します。
ダイレクトソーシングとは
「ダイレクトソーシング」とは、企業が自ら自社に合う人材を見つけ、直接連絡を取って採用につなげる手法のことです。
自社が求める人材にピンポイントで接触できるほか、転職を検討していない潜在層にもアプローチできるため、導入する企業が増えつつあります。
ダイレクトソーシングが広まっている理由は、「人材不足」に尽きます。
労働人口が減少している今日、いわゆる受け身の採用では企業が求めている人材を採用することが、難しくなってきています。
そこで企業自ら、必要な人材に直接連絡を取り、早急な人材確保に努めているのです。
ダイレクトリクルーティングとの違い
ダイレクトソーシングとよく似た言葉に「ダイレクトリクルーティング」もあります。これら2つの言葉の意味は、ほとんど変わりません。
そもそも「ソーシング」は、「Sourcing(調達)」の一環であり、採用シーンでは「人材発掘」の段階を指すことが一般的です。
しかし、実際には「ダイレクトソーシング」と「ダイレクトリクルーティング」の違いは曖昧で、ほぼ同じ意味として使用されています。
一部、どちらの言葉を使用するかを明確に決めている企業もあります。
しかし、自社内の採用手法の1つとして考えるだけであれば、使い分けは特に意識しなくても良いでしょう。
従来の採用方法との違い
ダイレクトソーシングと、企業でよく使われている採用方法との違いをまとめると、以下のとおりです。
採用方法 |
ダイレクトソーシング |
求人広告サービス |
人材紹介サービス (エージェントサービス) |
使用する媒体の例 |
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必要なコストの目安 |
無料でも可能 |
数万円~数十万円 (採用形態や広告を出すエリアなどにより変動) |
数十万円~数百万円 |
募集・採用の特徴 |
手間はかかるが自社が求める人物像に近い人を採用しやすい |
一度に多数の人材にアプローチできるが、マッチ度の低い人材から応募がある可能性も |
ある程度希望に近い人材にアプローチできるが、エージェントが保有している人材バンクに依存しやすい |
求人広告サービスや、就職エージェントのような人材紹介サービスを使用して人材を探す場合、一度に多くの人にアプローチできる点は魅力的です。
しかし、掲載先のフォーマットや規約、掲載期間の定めなどに従う必要があるため、自社で主導権を握っての採用活動は、なかなかできないかもしれません。
一方、ダイレクトソーシングはSNSの利用を中心とし、自社で人材を見つけて直接アプローチするものです。
連絡を取る人材のリサーチには時間がかかる場合もありますが、自社の都合に合わせたスケジュールや、自社ならではの方法も採りやすいため、負担なく取り組めるでしょう。
ダイレクトソーシングを導入するメリット
ダイレクトソーシングを導入すると、以下のようなメリットに期待できます。
- 採用候補者の入社意欲が高まりやすい
- 採用コストを削減できる
- 急な募集にも対応できる
- 自社の採用力がアップする
それぞれについて、詳しく解説します。
採用候補者の入社意欲が高まりやすい
企業自ら採用候補者にアプローチすることで、その候補者の入社意欲も高まります。
ダイレクトソーシングはいわば、企業が採用候補者をスカウトすることと同義です。
「どういった点を魅力に感じたか」「なぜ自社で活躍できると思ったか」などを個別に伝えられるため、入社を前向きに考えてもらいやすくなるのです。
転職希望者に効果的であるのはもちろん、特に転職を考えていなかった層にも入社意欲が芽生えるかもしれません。
採用コストを削減できる
人材採用にかかる費用を大幅に削減できる点も、魅力的です。
求人広告を出す場合は、目安として掲載1回につき数万円~数十万円が必要です。
求人紹介サービスを使って募集する場合、求人の掲載は無料でできることもありますが、実際に採用が決定したのちは数十万~数百万円の手数料を支払わなくてはなりません。
しかしダイレクトソーシングであれば、費用をかけずに実施可能です。
ダイレクトソーシング専門の媒体に掲載する場合は費用がかかるケースもありますが「初期費用無料」としているところを選べば、比較的安価で利用できるでしょう。
急な募集にも対応できる
急な人材確保が必要になった場合でも、スピーディーに募集できる点も見逃せません。
求人広告サービスや求人紹介サービスに掲載しようと思うと、掲載内容の作成・確認を経て掲載されるまでには、時間がかかります。
しかし、ダイレクトソーシングであれば自社のタイミングで行動を開始できるため、人材補充が必要になった場合も、即座に募集できます。
自社の採用力がアップする
ダイレクトソーシングの導入により、自社の採用率も培われるでしょう。
ダイレクトソーシングで採用を成功させるためには、以下を始めとしたさまざまな工程を経る必要があります。
- 採用候補者となる人材のリサーチ
- 採用候補者の入社意欲を高めるメッセージ作成
- 短期間での採用活動の実施
どの工程にも、何かしらの工夫が求められます。試行錯誤するうちに、自然と採用担当者の能力もアップし、企業全体の採用力も高まるでしょう。
ダイレクトソーシングを導入するデメリット
ダイレクトソーシングは魅力の多い採用方法ですが、特有のデメリットもあります。
- リサーチから採用までに時間と手間がかかる
- 優秀な人材の争奪戦になりやすい
- 大量に採用したい場合は不向き
このような点があることも知ったうえで、導入の可否を検討してみてください。
リサーチから採用までに時間と手間がかかる
ダイレクトソーシングをするためには、採用候補者を見つけることが不可欠です。
しかし、募集する業種・職種やタイミングによっては、採用候補者がすぐに見つからないこともあるでしょう。
いざ見つかったとしても、実際にアプローチして採用につなげるためにはさまざまな工程を経なくてはなりません。
そのため、採用担当者には採用ノウハウが必須だといえます。
ただし、ダイレクトソーシングの準備が負担になったり、採用フローの変更が必要になったりすると、採用担当者のほかの業務を圧迫してしまいます。
社内体制の整備や、実施するフローの工夫も欠かせません。
優秀な人材の争奪戦になりやすい
自社が魅力的だと感じている人材は、他社にも魅力的に映っている可能性も高いものです。
せっかく良い採用候補者を見つけたとしても、他社と人材の取り合いになる可能性もあります。
他社より良い条件を提示できなければ、入社してもらうことは難しいでしょう。
大量に採用したい場合は不向き
ダイレクトソーシングは、一度に大量の人材を採用したい場合には、効率が悪い方法です。
少人数の募集時は効果的ですが、そうでない場合は別の採用方法を検討しましょう。
ダイレクトソーシングの導入に適した企業
ダイレクトソーシングは、企業によって向き・不向きもあります。
もし、自社に以下の特徴が見られる場合は、ダイレクトソーシングの導入を検討しても良いかもしれません。
業種・業務の専門性が高い
ダイレクトソーシングは比較的、業種を問わず効果が出やすい採用方法です。
特に、自社の業種または募集する業務の専門性が高い場合は、効果がアップするでしょう。
たとえば以下のような業界・職種で有効です。
- IT業界
- 保険業界
- 研究開発系の職種
ダイレクトソーシングは、個人単位で活動することが多い業種や、新製品・サービスの開発をする職種に向いているといえます。
採用活動が停滞している
求人広告サービスや求人紹介サービスを使用しているにも関わらず、思うように人材採用ができていない企業にも、導入の価値があります。
従来の採用方法で欲しい人材が確保できていないのであれば、そのまま募集を続けても、良い人材の獲得には期待できないでしょう。
もちろん、募集条件がネックになっている可能性もありますが、採用方法から見直すことも検討してみてください。
起業して間もない中小企業やベンチャー企業
自社がまだ発展途上で、費用を抑えつつ、優秀な人材を採用したい場合も適しています。
求人広告サービスや、求人紹介サービスの利用には多額のコストがかかり、資金に余裕のない企業にとっては大きな負担になります。
「立ち上げ早々で時間はあるが予算がない」という企業は、ダイレクトソーシングが有力な選択肢になるでしょう。
ダイレクトソーシングを導入する際のポイント
ダイレクトソーシングを導入して有効活用するために、以下のポイントを意識しましょう。
- 結果の振り返りを随時行う
- 十分な人数の担当者を確保しておく
- 自社の発信にも力を入れる
こうした点がきちんと押さえられていれば、導入後もスムーズに実施できるはずです。
結果の振り返りを随時行う
採用の成功・不成功を問わず、一度ダイレクトソーシングを実施したら、その結果を振り返りましょう。
ダイレクトソーシングには、「ここで検索すれば良い人材が見つかる」「こう言っておけば採用できる」といった、明確なセオリーは存在しません。
そのため、一度実施するごとにそのフローや結果を振り返り、改善すべき点はどんどん改善していくことが重要です。
結果、自社ならではのダイレクトソーシングの方法も見つかりやすくなります。
十分な人数の担当者を確保しておく
ダイレクトソーシングを担当する従業員は、ある程度確保しましょう。
前述のとおり、ダイレクトソーシングの実施から採用までは、さまざまな工程があります。
採用ノウハウが求められるシーンや、実施結果を踏まえたPDCAサイクルを回す場面も多く、ほかの業務と並行しての実施は、採用担当者の負担となるでしょう。
ダイレクトソーシングは、ある程度時間がかかることを想定した採用方法です。
長期間の対応が必要になっても最後まで対応しきれる体制づくりは、必須だといえます。
自社の発信にも力を入れる
採用活動だけではなく、自社の宣伝や広報にも力を入れましょう。
たとえ採用候補者が見つかったとしても、自社のことを詳しく知り、応募する気持ちになってもらわなければ、採用には結び付きません。
以下のような方法での発信に取り組み、具体的な事業内容をさまざまな角度から伝えられるよう努めてください。
- SNSでの発信
- 自社のWebサイト内のブログやコラムの執筆
- 企業紹介動画の制作
多少の手間はかかりますが、ここに注力しておくことで採用人数を増やせる可能性もあります。
ダイレクトソーシングについてのまとめ
ダイレクトソーシングは潜在人材にもアプローチでき、企業に適した人材を獲得できるチャンスを増やせます。
手間や時間はかかりますが、自社に向いていそうであれば積極的に導入を検討しましょう。
もし採用ノウハウが不足していると感じるなら、外部サービスも活用するのがおすすめです。効果的なダイレクトソーシングを実践し、優秀な人材を確保しましょう。