有期雇用契約とは? そのルールや企業が対応する際のポイント・注意点を紹介
有期雇用契約を導入する際の重要なポイントは、有期契約を結ぶ労働者側の権利を守るために、企業がそれを遵守することです。
近年、有期契約労働者の解雇や、雇止めが社会的な問題となっているためです。
会社には万全の制度設計が不可欠という理解が、経営層や労働契約の担当者に求められています。
この記事では、有期雇用契約の概要やルール、契約締結時のポイントを解説します。
また、記事の後半部分では、有期雇用契約の注意点もまとめたので、ぜひ最後までご覧ください。
有期雇用契約とは
有期雇用契約とは、特定の期間で会社とその労働者が、労働契約を締結することです。
契約期間は最長3年ですが、条件を満たせば5年間の契約を結べます。条件の一部を紹介します。
- 高度な専門知識や技術、特別な経験がある
- 60歳以上
有期雇用契約を一度結べば、原則として会社も労働者も、一方的に契約解除できません。
有期雇用契約の具体例や、正社員の試用期間との違いを見ていきましょう。
(出典:労働基準法 第14条)
有期雇用契約の具体例
有期雇用契約の労働者は、一般的に契約社員という名称で雇われます。
具体的には、定年後の再雇用者や特定のプロジェクトに従事する高度専門職、準社員、パートタイムやアルバイトなどが該当します。
ただし、会社によっては、次のような契約社員以外の名称を使用する場合もあります。
- パートやアルバイト
- 臨時社員
- 非常勤社員
- 嘱託社員(定年後に再雇用された労働者)
正社員の試用期間との違い
有期雇用契約と異なり、試用期間は無期雇用契約が前提であり、新規採用した労働者が適任であるかを、会社側が判断する期間です。
例えば、スキル面や既存社員との協調性、人間性などに問題がなければ、そのまま継続して勤務することになります。
試用期間は通常1〜6ヵ月で、新卒者や中途採用者にかかわらず、就業規則や労働契約書で定めれば適用されます。
もし試用期間中にスキル不足や、勤務態度などの問題により「客観的に合理的な理由があり社会通念上相当」と認められれば、解雇可能です。
また、試用期間開始から14日経過した日より後に解雇する場合は、事前に解雇予告か解雇予告手当の支払いが必要です。
有期雇用契約のルール
有期雇用契約のルールをまとめました。ぜひ参考にしてください。
有期雇用の無期転換化
有期雇用契約の無期転換とは、一定の条件を満たせば、有期雇用契約を無期雇用契約にできることです。
その際の条件は、次の通りです。
- 有期雇用契約の通算契約期間が5年以上
- 労働者側から無期雇用契約を結びたいという申請があった
条件を満たせば、使用者側は無期転換しなければなりません。
有期雇用の無期転換が法制化される前は、労働者と使用者の話し合いで無期転換できるかどうかが、決められていました。
条件を満たせば無期転換できるため、労働者の労働意欲向上などのメリットがあります。
(出典:労働契約法 第18条)
雇止め法理の法定化
雇止め法理は、合理的な理由のない雇い止めを防ぐために法定化されました。
雇い止めとは、有期雇用契約の期間が終わる労働者に対して、契約更新せずに雇用を終了することです。
次のような状況下において、合理的な解雇理由がない場合、事業主は雇い止めできません。
- 複数回にわたって契約更新し、実質的な無期雇用契約だと判断できる状態
- 有期雇用労働者に雇用継続する上でのマイナス点がなく、労働者が無事に契約更新できると考える理由がある場合
更新できると考える理由には、上司からの雇用継続を期待させるような言動や、多くの労働者が同じような条件で、過去に契約更新した事実があった場合などが該当します。
雇い止め法理によって有期雇用契約を更新する場合、前回締結した有期雇用契約と同じ労働条件が、最低限として保障されます。
(出典:厚生労働省 「雇止め法理」の法定化)
(出典:厚生労働省 有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準について)
不合理な労働条件の禁止
不合理な労働条件の禁止とは、有期雇用契約における労働条件や、待遇について正社員などとの不合理な格差を防ぐことです。
例えば、次のような内容は、正社員と非正規雇用者の間で不合理な差を設けることを禁じています。
- 仕事内容
- 仕事で応じる責任の範囲
- 職務の性質や配置転換
- 労働時間や給与
- 福利厚生
- 各種手当
ただし、学生のアルバイトと正社員など、最初の段階から仕事内容に違いがある場合、労働条件などに合理的な差を設けてもよいです。
また、非正規雇用者は使用者に対して、労働条件や待遇の差がある理由を聞くことが認められています。
(出典:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律第14条)
有期雇用契約を締結する際のポイント
有期雇用契約を結ぶときのポイントを、3つ紹介します。
- 契約期間・更新の有無を明確にする
- 労働条件の明示
- 雇用契約の遵守
ぜひ参考にしてください。
契約期間・更新の有無を明確にする
人材募集するときや労働契約を結ぶ場面では、契約期間を労働者に伝えなければなりません。
トラブルを未然に防ぐためにも、口頭だけではなく、労働条件通知書などの書面に残すのがポイントです。
その際、契約更新があるかどうかも、次のような形式で明示しましょう。
- 自動更新
- 更新する可能性もある
- 更新しない
更新の基準は、主に次のようなものがあります。
- 労働者の労働意欲や勤務態度
- 労働者のスキル
- 会社の経営状況
- 契約が終わったときに遂行した業務量
使用者と労働者の双方が合意したうえで、有期雇用契約を結ぶ必要があります。
(出典:労働基準法 第15条)
(出典:労働基準法施行規則 第5条)
労働条件の明示
会社と労働者でトラブルに発展しないためにも、雇用契約を締結するときは、労働時間や給与などの労働条件をはっきりと示しましょう。
労働基準法では、次の労働条件の明示が義務づけられています。
- 労働時間:1日の働く時間や始業、就業時間、残業の有無など
- 業務内容:労働者に任せる仕事内容
- 給与:基本給の計算、支払いの方法、締め日など
- 解雇や退職の規定など
雇用契約の遵守
使用者は有期雇用契約を締結した労働者を、契約期間中に解雇できません。
ただし、会社の倒産などの合理的な理由がある場合は、次の手順を踏めば解雇できます。
なお、次の手順はアルバイトや嘱託社員など、すべての雇用形態で必要です。
- 有期雇用契約を結ぶ際、退職に関する規定を書類で明記
- 解雇日の最低30日前には、解雇する旨を伝える
- 契約期間中の解雇は原則禁止
- 同じ職場で1年以上働けば退職可能
- 契約の自動更新はリスクがある
それぞれ解説します。
契約期間中の解雇は原則禁止
特別な理由を除き、有期雇用契約の期間中は原則、解雇できません。
特別な理由とは、会社の倒産や、事業が継続不可と判断できる自然災害に遭った場合などが当てはまります。
しかし、労働者に問題があり、指導や教育を重ねても改善が見られない場合、退職勧奨する方法もあります。
退職勧奨とは、労働者に退職してもらうように使用者が働きかけることです。応じるかどうかは労働者の任意なので、退職勧奨された労働者に退職義務はありません。
退職勧奨が難しい場合、解雇処分を検討しましょう。
合法的な理由があれば、解雇処分できる可能性があります。解雇処分する際は、次のうちいずれかが必要です。
- 労働者に対して、解雇予定日の30日以上前に解雇通告する
- 解雇予告手当(30日分)を先に支払い、即日解雇する
同じ職場で1年以上働けば退職可能
有期雇用契約を結んだ会社で1年以上働いていれば、その労働者は自由に退職できます。
最低でも退職日の2週間前には、会社へ退職の意思を伝えましょう。
また、働いた期間が1年未満の労働者は、次の条件に該当すれば自由に退職できます。
- 怪我や病気で働けない
- 会社との協議で退職が認められた場合
- 親族の介護
- ハラスメント など
特に会社側は、ハラスメントが起きないように気をつけましょう。
契約の自動更新はリスクがある
有期雇用契約の自動更新は、会社側に多くのデメリットがあります。
- 労働者とのトラブルになるリスクが高まる
- 実質的な無期雇用契約と同じ状況になる
- 勤務態度や能力に改善が見られない場合でも、雇止めしにくい
また、労働者にとっては、就労先選択の自由度が狭くなる可能性もあります。
有期雇用契約についてのまとめ
改正労働契約法による有期雇用契約の取り扱い変更により、企業側が自由に雇い止めすることが難しくなりました。
労働契約の担当者は、有期雇用契約の締結時のルールを理解し、有期雇用労働者の有効活用と適切な管理に注意しましょう。
また、改正労働契約法や有期雇用契約などの理解を深め、雇用にまつわるトラブルを未然に防ぐという意識が大切です。