採用計画とは? 立てるステップとポイントを解説

企業が事業を成功させるためには、優秀な人材の確保が欠かせません。
そのために重要なのが、経営方針や事業計画に基づいた採用計画の策定です。
本記事では、採用計画の意義やステップ、意識すべきポイントや新卒採用と中途採用の違いなどについて詳しく解説します。
採用計画とは
採用計画とは、企業の経営方針や事業計画を実現するために必要な人材を確保するための計画のことです。
「いつまでに」
「どの部署に」
「どのような人材を」
「何人」
「どのような方法で」
採用するかといった目標を設計します。
採用計画の目的は、自社の経営方針や事業計画を実現するために必要な人材を、適切に採用することです。
採用計画は単なる人材確保のためのプランではなく、会社の将来を見据えた戦略的な取り組みといえるでしょう。
採用計画を立てる前の準備
採用計画を立てる前に、自社の採用状況を把握し、課題を洗い出すことが重要です。採用計画を立てる前には、以下の準備をしましょう。
- 自社の採用データを収集・分析する
- 経営層・現場責任者にヒアリングする
- 人員計画・要員計画を策定する
- 採用市場と競合他社の動向を把握する
- 採用活動の分析・改善をする
ここでは、上記の準備について解説します。
自社の採用データを収集・分析する
まずは自社の過去の採用活動におけるデータを収集し、分析することが大切です。
応募者数、選考通過率、採用数、定着率など、各段階のデータを詳細に把握し、自社の採用における課題を洗い出します。
データ分析から見えてきた課題をもとに、採用計画における施策を検討していきましょう。
例えば応募者数が少ない場合は、求人広告の出稿方法や内容を見直すことが考えられます。一方、内定辞退率が高い場合は、選考プロセスや内定者フォローの改善が必要です。
経営層・現場責任者にヒアリングする
採用計画は経営戦略や事業計画に沿ったものでなければなりません。そのため経営層や現場責任者から意見を収集し、必要な人材像を明確にすることが重要です。
経営層からは、今後の経営方針や事業計画について聞き取りを行います。そこから事業拡大に必要な人材や、強化すべき部門などが見えてくるはずです。
現場責任者からは、日々の業務における課題や現場として求める人材像について情報を収集します。
これらの意見を採用計画に反映させることで、より実効性の高い計画を立てることができるのです。
人員計画・要員計画を策定する
採用計画を立てる前に、人員計画と要員計画を策定しておくことが重要です。人員計画では、各部署にどのような人材を配置するかを決定しましょう。
要員計画では、事業を遂行するために必要な人数を見積もります。現在の人数とのギャップから、採用数を算出してください。
これらの計画を策定することで「現在の社員の人数」と「理想とする社員の人数」の差が明確になります。
そこから「新たに採用すべき人数」が導き出せるため、採用計画の基礎となる重要なステップです。
採用市場と競合他社の動向を把握する
自社の採用状況を把握するだけでなく、採用市場全体の動向や競合他社の採用状況についても、情報収集することが大切です。
昨今の日本の採用市場は、労働人口の減少により売り手市場となっています。優秀な人材の獲得をめぐる競争は激化しているのが現状なのです。
競合他社の採用情報をリサーチして給与水準や待遇面での比較を行うことで、自社の強みを把握することができます。
その強みを採用計画に活かすことで他社との差別化を図り、優秀な人材の獲得につなげることができるでしょう。
採用活動の分析・改善をする
過去の採用活動を振り返り、成果と課題を分析することも重要です。
採用スケジュールや採用手法、コスト配分、内定辞退率など、各項目について詳細に振り返り、問題点を洗い出します。
そこから得られた改善点は、次回の採用計画に反映させていきましょう。PDCAサイクルを回して継続的に採用活動を改善することで、採用の精度を高められます。
採用計画の立て方のステップ
採用計画の準備ができたら、具体的に採用計画を立てていきましょう。採用計画は以下のステップを踏んで立てていきます。
- 採用ペルソナを設定する
- 採用人数を決める
- 雇用形態を検討する
- 最適な採用方法を選択する
- 採用スケジュールを策定する
ここからは、上記の各ステップについて解説します。
ステップ1:採用ペルソナを設定する
採用計画を立てる第一歩は採用ペルソナの設定です。採用ペルソナとは、自社が求める理想の人材像を具体的に定義したものです。
年齢、性別、職業、家族構成、年収、居住エリア、ライフスタイルなど、詳細な属性を設定しましょう。
採用ペルソナを明確にすることで、求人広告の作成や選考基準の設定がスムーズになります。採用担当者間で求める人材像を共有でき、一貫性のある採用活動が可能になるでしょう。
ステップ2:採用人数を決める
次に採用人数を決定します。この際、現在の人員数と事業計画から算出される必要人数とのギャップを把握することが重要です。
そのギャップが採用すべき人数となります。ただし採用人数を決める際は、同時に人件費予算も考慮しなければいけません。
事業計画上必要な人数であっても、予算の制約により採用できない場合もあるでしょう。予算と採用人数のバランスを取りながら、現実的な数字を設定することが大切です。
ステップ3:雇用形態を検討する
採用人数が決まったら、次は雇用形態を検討しましょう。正社員、契約社員、派遣社員、アルバイトなど、多様な雇用形態があります。
それぞれの特徴を理解し、自社の経営戦略や事業計画に合った形態を選ぶことが重要です。例えば、長期的な人材育成を目的とする場合は正社員採用が適しているでしょう。
一方、繁忙期の一時的な人材不足を補うには、アルバイトや派遣社員の採用が効果的です。雇用形態によって、採用コストや人材の定着率が異なるため、慎重に検討する必要があります。
ステップ4:最適な採用方法を選択する
採用ペルソナと雇用形態が決まったら、次は採用方法を選択しましょう。求人広告、人材紹介、リファラル採用、ダイレクトリクルーティングなど、多様な採用手法があります。
それぞれの特徴を理解し、自社の採用ペルソナやスケジュールに合った手法を組み合わせることが重要です。
採用手法によって、コストや採用スピード、ミスマッチのリスクが異なるため、最適な手法を選択しましょう。自社の予算や採用目的に合わせて、最適な手法を選択しましょう。
ステップ5:採用スケジュールを策定する
採用スケジュールは、採用活動の開始から内定出しまでの一連の流れを可視化したものです。
いつまでに何人採用するかという目標を立て、そこから逆算して採用活動の日程を決めていきます。その際に採用市場の動向を考慮することが大切です。
採用市場の動向や自社の採用体制を考慮し、現実的なスケジュールを立てましょう。
採用計画を効果的に立てるためのポイント
ここまで、採用計画の大まかな立て方について解説してきました。効果的に採用計画を立てるためには、以下のポイントを意識してみましょう。
- 採用業務を効率化する
- 優先順位を設定する
- 定期的にアップデートする
ここからは、採用計画を効果的に立てるためのポイントについて解説します。
採用業務の効率化や優先順位の設定など、採用計画の精度を高めるためのヒントを紹介します。
採用業務を効率化する
採用業務は、求人広告の作成から選考、内定者フォローまで、多岐にわたります。そのため業務の効率化を図ることが重要です。特にITツールの活用は採用業務の効率化に大きく寄与するでしょう。
採用業務の自動化を進めることで、採用担当者の負担を軽減し、人材の見極めなどの重要業務に注力することができるのです。
優先順位を設定する
採用計画の策定において、全ての項目に同じ比重を置くのは非効率です。優先順位を設定し、重要な項目からスピード感を持って着手していきましょう。
優先順位を明確にすることで限られた時間とリソースを有効活用し、採用目標の達成につなげることができます。
定期的にアップデートする
採用計画は、一度策定したら終わりではありません。採用活動の結果を分析し、定期的に見直すことが重要です。
採用市場の変化や自社の事業戦略の変更など、環境の変化に合わせて採用計画を常にアップデートしていきましょう。
PDCAサイクルを回して継続的に採用計画を改善することで、採用の精度を高めることができます。
採用計画策定後の取り組み
採用計画の策定は、採用活動の第一歩に過ぎません。採用計画の策定と同様に、その後の取り組み方も重要になります。
採用計画策定後の主な取り組みは、以下の通りです。
- 全社的な協力体制を構築する
- 採用サイト・SNSを見直し・活用する
- 決定した採用手法を実行する
- 採用面接を実施する
- 内定者フォローを行う
ここからは、上記の取り組みについて解説します。
全社的な協力体制を構築する
採用活動は人事部門だけの取り組みではありません。全社的な協力体制を構築することが重要です。
まずは経営層や現場の巻き込みを図ることが大切です。採用の重要性を全社で共有し、協力を仰ぐことが必要になります。
選考や内定者フォローなどの場面では現場の協力が欠かせません。円滑な採用活動のためにも、全社的な協力体制の構築に努めましょう。
採用サイト・SNSを見直し・活用する
採用活動においては自社の魅力を的確に伝えるために欠かせないのが、採用サイトやSNSの活用です。
採用サイトは求職者との重要な接点なので、会社の魅力を十分に伝えられるようコンテンツの充実を図ることが大切です。
またSNSは求職者とのコミュニケーションツールとして有効活用できます。自社の日常的な姿を発信することで、求職者の共感を得ることができるでしょう。
自社の採用ブランディングを向上させるために、採用サイトやSNSを戦略的に活用することが大切です。
決定した採用手法を実行する
採用計画で決定した採用手法を着実に実行することが重要です。
求人広告の掲載やダイレクトリクルーティングの実施など、それぞれの手法について、スケジュールや予算、担当者を明確にしておきましょう。
また実行結果を随時分析し、効果的な手法を見極めることが大切です。うまくいった手法は継続し、改善が必要な手法は見直しを行いましょう。
採用面接を実施する
採用計画の策定後は、もちろん採用計画に基づいて集まった応募者に対し、選考・面談を実施します。
その際、事前に設定した選考基準や人材要件に沿ってスピーディーかつ的確に進めることが重要です。
選考では応募者の経験やスキル、人物像を多角的に評価します。加えて自社の価値観や風土との適合性についても見極めが必要でしょう。
面談においては、応募者との双方向のコミュニケーションを大切にしてください。採用側と応募者の相互理解を深めることで、ミスマッチのない採用を実現することができるでしょう。
内定者フォローを行う
内定を出した後も、入社までの期間は内定者との関係構築が欠かせません。内定辞退を防いで入社意欲を高めるためには、手厚いフォローが必要不可欠です。
具体的には内定者との定期的な面談、配属予定部署とのマッチング、懇親会や説明会を開催し、社員との交流の場を設けるのもよい方法です。
丁寧な内定者フォローは、内定辞退の防止だけでなく、入社後の定着率向上にもつながります。内定者の入社意欲を高め、スムーズな入社と活躍を支援する体制を整えましょう。
新卒採用と中途採用の採用計画の立て方の違い
新卒採用と中途採用では、採用対象者や採用基準、採用時期など、採用計画の立て方に違いがあります。
両者の違いを踏まえた採用計画の立案ポイントなどを下表にまとめました。
項目 |
新卒採用 |
中途採用 |
---|---|---|
採用対象者 |
社会人未経験者(主に大学卒業予定者) |
社会人経験者 |
採用基準 |
ポテンシャル重視(学力、性格、適性など) |
スキル・経験重視(職務経験、実績など) |
採用時期 |
一括採用(毎年決まった時期) |
通年採用(随時) |
採用計画の特徴 |
学生の就職活動スケジュールに合わせた採用計画 |
転職市場の動向を踏まえた柔軟な採用計画 |
以下で詳しくみていきましょう。
採用基準の違い
新卒採用と中途採用では、求める人材像が大きく異なります。新卒採用では、社会人経験のない学生を対象とするため、ポテンシャルを重視する傾向にあります。
中途採用では即戦力となる人材を求めるケースが多いです。応募者のこれまでの職務経験やスキル、実績を精査し、即座に戦力として活躍できるかどうかを判断します。
経験やスキルが不足している場合でも、自社での教育・育成により早期戦力化が見込める人材も対象となるでしょう。
採用時期の違い
新卒採用は基本的に卒業・修了予定の一定時期に一括で行われます。企業は学生の就職活動スケジュールに合わせて、採用計画を立てなければいけません。
中途採用は通年採用が一般的です。欠員補充や増員など、必要に応じてタイムリーに採用活動を実施します。
採用計画で優秀な人材を獲得するために
採用計画は会社の将来を見据えつつ、経営方針や事業計画などに必要な人材を確保するための計画です。
採用計画の立案と実行により、効率的かつ効果的な採用活動を行い、優秀な人材の獲得につなげることができます。
採用計画の策定には、入念な事前準備と段階的なステップを踏まなくてはなりません。自社の実情に合わせたカスタマイズが必要です。
策定した採用計画の定期的な見直しと改善を行うことで、継続的な採用成果の向上を目指しましょう。