スキルベース採用とは？ 現代の採用手法を専門家が徹底解説

スキルベース採用とは

スキルベース採用とは、候補者のスキルを重視して人材を実力ベースで採用する手法です。学歴や経験が浅くても、必要なスキルを備えていれば採用の対象となります。

育児・介護でキャリアを断念した人や、全く別の業界から新たな業界に挑戦したい人など、多様な事情を持つ人材にも開かれた採用方法なのです。

また、スキルテストや適性検査などによって応募者のスキルレベルを客観的に測定・評価して、適材適所の配置もできます。

そのため採用後に即戦力としての活躍が期待でき、入社後すぐに企業の成長に貢献してくれる人材となるでしょう。

スキルベース採用の目的

スキルベース採用の目的は、即戦力となる優秀な人材を獲得することです。スキルを重視することで、入社後すぐに高いパフォーマンスを発揮できる人材を見つけられます。

長期の研修やトレーニング期間が必要なく即戦力になる人材は、企業の生産性向上や競争力強化に早くから貢献してくれるのです。

スキルベース採用とジョブ型採用の違い

スキルベース採用は応募者のスキルを重視するため職務内容は固定されず、応募者のスキルを最大限に活用できるようポジションが柔軟に変更されます。

またスキルベース採用では、応募者の成長可能性や将来性も重要な評価ポイントとなるため、見落とさないようにしなければなりません。

一方ジョブ型採用は、予め定められた職務内容に適合する人材を採用し、即戦力となる人材を獲得することが主な目的です。

そのため、ジョブ型採用ではその職務に必要なスキルや経験を有しているかが主に評価されます。

スキルベース採用が注目される背景

スキルベース採用が注目される背景には、以下のようなものがあります。

ここでは、それぞれの背景について詳しく見ていきましょう。

深刻化する人材不足に立ち向かう

深刻化する人材不足に対応するため、スキルベース採用が注目されています。

従来の学歴や経験を重視した採用手法では優秀な人材の確保が難しくなってきており、新しい採用の切り口が求められているのです。

スキルベース採用はスキルや能力に重きを置いているため、対象となる人材の幅が広がり、人材不足の解消に有効だと考えられています。

変化の激しい時代に適応できる人材が必要だ

変化の激しい現代の企業環境では、適応力の高い人材が求められています。

スキルベース採用では、新しい環境や状況の変化に対応できるスキルを持つ人材を見極めることが可能です。

適応力の高い人材の確保は、変化の激しい時代を乗り切る企業の力となるでしょう。

多様な人材を活用して競争力を高める

多様な人材を活用することで、企業の競争力を高めることができます。

スキルベース採用は、学歴や経験、国籍、バックグラウンドなど、一人ひとりによって持っている性質が全く異なる、多様な人材の獲得にも効果的です。

多様性のある組織は様々な視点からアイデアが出てくるため、イノベーションを生み出しやすく、競争優位性も確保できます。多様性を尊重した経営の推進にも寄与する採用手法と言えるでしょう。

スキルベース採用を導入するメリット

スキルベース採用の導入には、以下のようなメリットがあります。

ここでは、それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。

優秀な人材を獲得できる

スキルベース採用では、優秀な人材を見つけ出して獲得することができます。従来の学歴・経歴などに着目した採用手法では見落とされがちな、高いスキルを持つ人材を発掘できるのです。

また、スキルテストや適性検査によりミスマッチを防げるため、自社が求めている優秀な人材の確保ができる採用手段と言えます。

即戦力人材が生産性向上をもたらす

即戦力人材の獲得により、業務効率化と生産性向上を実現できます。スキルを備えた人材は入社後すぐに高いパフォーマンスを発揮し、業務を円滑に進めることが可能です。

そのため、即戦力人材は早期から企業全体の生産性を押し上げ、業績向上に貢献します。

採用後すぐに活躍できるスキルベース採用の人材は、企業の生産性向上に役立つでしょう。

ダイバーシティが進み、組織が活性化する

スキルベース採用によってダイバーシティが進み、組織が活性化します。多様な人材が集まることで新しいアイデアや視点が生まれやすくなり、イノベーションが促進されるでしょう。

多様性のある組織は、従業員の仕事に対する意欲も高まり、活力に満ちた職場となります。

採用コストと教育コストを削減できる

即戦力人材の獲得により、採用コストと教育コストの削減が可能です。スキルを備えた人材は、入社後の教育や研修に必要な時間や費用を最小限に抑えられます。

またスキル重視の採用によって、採用プロセスの効率化、研修担当者の早期の実務復帰ができるのです。このような採用と教育にかかるコストの削減は、企業の経営効率化に寄与します。

スキルベース採用で重要なポイント

スキルベース採用を効果的に実践するには、以下の重要なポイントがあります。

ここでは、それぞれのポイントについて詳しく見ていきましょう。

スキル評価の客観性と公平性を担保する

スキル評価の客観性と、公平性を担保するための取り組みが不可欠です。

スキル評価の基準を数値や言葉で明確に定義し、評価者の主観を排除することが求められます。

また、評価基準や評価プロセスをスキルテスト前に開示するなど評価の透明性を確保し、応募者に対して公平な選考を行いましょう。

社内の受け入れ体制を整える

スキルベース採用を成功させるには、組織風土との整合性と受け入れ体制の整備が重要です。

スキル重視の考え方を組織全体に浸透させ、スキルベース採用を受け入れる土壌を作ることが欠かせません。また、スキルベース採用で入社した人材が活躍できる環境の整備も忘れないようにしましょう。

スキルの定義を明確にして評価手法を確立する

スキルの定義を明確にし、適切な評価手法を確立すべきです。

採用したいスキルを具体的に定義し、それを評価するためのスキルテストを開発しましょう。スキル評価の精度を高め、採用の質を向上させることが大切です。

スキルの定義と評価手法の確立は、スキルベース採用の成功の鍵を握ると言えるでしょう。

スキルベース採用の問題点とデメリット

スキルベース採用には様々なメリットがある一方で、以下のような問題点やデメリットも指摘されています。

ここでは、それぞれの問題点とデメリットについて詳しく見ていきましょう。

スキルの判断基準があいまいになりがち

スキルの判断基準はあいまいになりがちで、評価の一貫性を保つのが難しいことが問題点です。

スキルの定義があいまいだと、評価者によって判断が異なって選考の公平性が損なわれる恐れがあります。

対策として、スキルの判断基準を明確にし、評価者間の認識を統一することで公平な選考を心がけましょう。

長期的な人材育成がおろそかになる

短期的な即戦力重視になると、長期的な人材育成がおろそかになる危険性もあります。即戦力の人材ばかりを採用すると、将来のリーダー候補が育成されにくい状況に陥りやすいです。

対策として、短期的な即戦力と長期的な人材育成のバランスを取ることを心がけましょう。

組織への適合性が低い人材が増える可能性がある

スキルが高くても、組織への適合性が低い人材が増加しやすいというデメリットもあります。

スキルのみを重視すると、組織文化やチームワークになじめない人材が入社する点がリスクです。

組織への適合性が低い人材を多く採用してしまうことにより、職場の生産性や一体感を損ないやすくなります。

そのためスキルのみを評価するのではなく、組織文化への適合性とのバランスを考慮した採用を行うことが望ましいです。

人間性や協調性などが評価されにくくなる

スキルに偏った採用を行うと、人間性や協調性など、スキル以外の重要な要素が評価されにくくなるというデメリットもあります。組織の長期的な発展を抑える要因の1つになり得るのです。

スキルだけでなく、コミュニケーション能力や倫理観、チームワークなども評価の対象とすべきです。スキルと人間性の釣り合いが取れた採用を行うことが、組織の健全性につながります。

スキルベース採用の導入事例

スキルベース採用は、IT業界やグローバル企業を中心に、先進的な取り組みが進められています。ここでは、スキルベース採用の導入事例について詳しく見ていきましょう。

IT業界での成功事例

IT業界では、スキルベース採用の先進的な取り組みが進んでいます。技術の進歩が速いIT業界では、即戦力となるスキルを持つ人材の需要が高いです。

プログラミングスキルや最新技術の知識・経験を評価し、優秀な人材の獲得に努めています。

グローバル企業の成功事例

グローバル企業のスキルベース採用の成功事例としては、Google、Amazon、Microsoftなどの大手IT企業が挙げられます。

グローバル企業の事例を参考に、自社に適したスキルベース採用の仕組みを構築することがポイントです。

グローバル企業の成功事例は、スキルベース採用の効果を示す好例と言えるでしょう。

タレントマネジメントについて、以下の記事で詳しく紹介しています。

新しい時代の採用手法、スキルベース採用に注目しよう

スキルベース採用は人材不足に対応し、スキルを持った多様な人材を企業に取り入れるために注目されています。

導入により、即戦力人材による生産性向上が期待できます。しかしスキルの判断基準のあいまいさや、長期的な人材育成の課題があることも念頭に置きましょう。

成功のためには、客観性を持ったスキル評価や、組織文化への適合性も考慮し、メリット・デメリットを踏まえた上での導入検討が不可欠です。

この記事を参考に、新しい時代の採用手法であるスキルベース採用を自社に取り入れてみてはいかがでしょうか。