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第7回 ニューノーマル時代のリスク管理

第7回 ニューノーマル時代のリスク管理

この記事の著者
株式会社月刊総務 代表取締役社長   戦略総務研究所 所長 

一寸先は闇の時代を迎えて

「VUCA時代」という言葉をご存じだろうか? Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の4つの単語の頭文字をとった造語で、読み方は「ブーカ」となる。イギリスのEU離脱の決定、よもやのアメリカ・トランプ大統領の誕生。何が起こるか分からない時代を称して、このVUCA時代というのである。

もう一つ、Gゼロ時代という言葉。地政学的リスクコンサルティング会社、ユーラシア・グループの代表である国際政治学者、イアン・ブレマー氏の提唱した言葉だ。オバマ大統領時代に、アメリカが世界の警察官の立場から降り、トランプ大統領となり、アメリカ・ファースト、自国第一主義となった、主導国なき時代のことを指す。米中の対立構造も、まさにこのGゼロ時代の象徴的な事象である。

VUCA時代、Gゼロ時代、まさに一寸先は闇という時代。ここに降って湧いたように、新型コロナウイルス感染症の到来。多くの企業で強制的に在宅勤務を余儀なくされた。自然災害への対応、BCP対策は、東日本大震災以降、多くの自然災害に見舞われて、それなりに対処はできていた。

しかし、今回のパンデミックは、我が国おいては、いまだかつて、ここまでインパクトのある状態で見舞われたことがなく、結果、経済活動に甚大なダメージを受けることとなった。今回の新型コロナウイルス感染症がもたらしたBCPへの教訓とは何なのか。

新型コロナウイルス感染症でBCPはどう変わる?

月刊総務』では、2020年七月に新型コロナウイルス感染症を受けてのBCP対策について緊急のアンケートを行い、216名の総務のご担当者より回答を頂いた。新型コロナウイルス感染症を経験して、BCPに対する意識はどう変わっていったのか?

BCP策定済み企業おいて、新型コロナウイルス感染症拡大を通じて、自社のBCP対策をどう評価するか尋ねたところ、「見直す必要性を感じた」が91.7%と、ほとんどの企業が自社のBCP対策について改善点を見出していることが表れている。

先に触れたように、今までこのような大きな被害を招いたパンデミックを経験していないので、想定の中で策定したBCPにほころびがあり、改善の必要性を痛感した結果となった。

一方で、BCPを策定してないかった企業においては、新型コロナウイルス感染症拡大をうけ、BCPを策定しておけばよかったと感じたか尋ねたところ、「とてもそう思う」「まあまあそう思う」が82.6%と、BCP未策定企業のほとんどが新型コロナでBCP対策の必要性を感じたようだ。

今後、どんなリスクに対してBCP対策が必要だと思うか尋ねたところ、「パンデミック(インフルエンザ、新型ウイルス等)」が87.0%で最多、「自然災害(地震、水害等)」が86.6%と続いた。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、パンデミックに対する危機意識が高まっていると考えられる。

専門家の中には、このような感染症は五年おきに発生すると指摘している方もいる。ある意味、感染症がニューノーマルとなる時代でもあるのだ。この感染症の怖い所は、見えない、じわじわと進行する、場所を選ばす浸食していくことである。

自然災害であると、場所が限定的で、時間的にも終わりが見える(復旧には多大な時間がかかるが)、なにより、被害状況が目の前に現れる。見えないことの恐怖とやっかいな部分がパンデミックの最大の特徴である。

ニューノーマルのリスク管理とは

今回の新型コロナウイルス感染症、感染症では、古くはペスト、スペイン風邪、鳥インフルエンザから、SARS、MERSといろいろ現出はしてきた。ただ、我が国への影響が近年は限定的だったこともあり、その対応に手間取った。

リスク管理の要諦は、「最悪の事態を想定し、楽観的に対処する」と言われる。なので、過去に世界で起こったリスクを、当事者意識をもって、どこまで最悪の事態として想定できるかが、企業のリスク管理として問われることになってきた。いわゆる、想定外というものをどこまで無くせるかである。

それと同時に、情報収集力の強化、さらには分析力の向上も必要となる。今回、あるIT系企業が早々に在宅勤務を決断したことは有名である。早期に情報を掴み、そして分析して決断した結果である。今は、SNSはじめ多くの情報源がある。ただ、情報が多すぎて、的確な判断に迷うこともある。

情報源の多様化は良いのだが、その情報からの分析がなによりも大事となり、そこは、専門家と連携が重要となる。「Know How」から「Know Who」と言われることが多くなった。Know How、ノウハウは過去の経験から得たナレッジ。しかし、未経験のものに対しては対処しようがない。

そこで、知っている人を知っているという、Know Who、つまりは専門家との連携が必要となってくるのだ。確かに優秀な総務担当者は外に出ることが多い。展示会や講演、他社の総務の方との接点を通じて、その分野に強い人脈を形成していく。

自然とKnow Who活動を推進しているのだ。つまり、今回の新型コロナウイルス感染症はじめ、実際に目に見えない事態に備えるために、あるいは、経験したことのない事態に備えるために、そのこと自体に精通している専門家とのタッグにより対処していく、それが、ニューノーマル時代のリスク管理の大事な点であるのだ。

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著者プロフィール

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豊田 健一

株式会社月刊総務 代表取締役社長 戦略総務研究所 所長

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルートで経理、営業、総務、株式会社魚力で総務課長を経験。日本で唯一の総務部門向け専門誌『月刊総務』前編集長。現在は、戦略総務研究所所長、(一社)ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアム(FOSC)の副代表理事として、講演・執筆活動、コンサルティングを行う。

毎日投稿 総務のつぶやき 

毎週投稿 ラジオ形式 総務よもやま話

毎月登場 月刊総務ウェビナー

著作

マンガでやさしくわかる総務の仕事』(日本能率協会マネジメントセンター) 

経営を強くする戦略総務』(日本能率協会マネジメントセンター) 

リモートワークありきの世界で経営の軸を作る 戦略総務 実践ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター)

講演テーマ:総務分野

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